紙の本
これを読まずして、原発の再起動の決定はりえない
2012/04/17 23:07
12人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
あっぱれ、大鹿記者。そう、唸ならざるを得なかった。筋金入りのジャーナリストではないだろうか。福島第一原発事故発生から、2011年8月30日の菅内閣総辞職までを徹底的に追求している。引き込まれるようにして読み進めた。
原発事故をめぐる不明な点の数々が、次々に明らかになっていく。その迫り方に興奮を抑えきれなかった。朝日新聞の記者だが、今はAERAに出向している。それがいっそうの取材の自由度と、思い切りのいい書きぶりを可能にしているのだろう。朝日新聞に在籍していては、ここまで書けなかったのではないか。
それにしても、東京電力はひどい企業である。その存在が許されてもいいのだろうか、とすら思えてくる。代替電力が開発され、その安定供給が確保されれば、今の東電の救済策など破棄して東電を法的整理をしていいくらいのひどさだ。
まるで人ごとのような態度をとり、記者会見には中間管理職ばかり立たせる。会長・社長・副社長といった幹部は本店にこもりきり、批判から逃げてばかり。それが東電の体質なのだ。これを許してきた行政と法律の仕組みにも問題があるが、あらゆる姑息な手段を講じて生き延びようとするさまは、おそろしく見苦しい。
東電の資産は可能な限り売却して賠償に回し、いつかは解体してしまってもよいという気持ちになる。体調不良を理由に入院していた清水社長が、その入院先から、自らパソコンを操作して、住宅ローンを一括返済している事実など、被災者の逆上を買わないはずがない。
また、経産省も実にひどい。こちらも原子力発電の温存のために暗躍する。彼らもまた、見えないところで、あらゆる手を回し、原子力政策を維持しようとする。
経産省は原子力政策を推進してきた責任の重い官庁だが、ただの一人も責任をとらないで済ませている。更迭されたかに見せかけて、事務次官以下3人の幹部は割り増し分を含めて退職金を6000〜7500万円も受け取っている。著者が、せめて割増分くらい返上してはどうかと問うても、「制度がそうなっていますから」と答えて、受け取っている。
繰り返しになるが、経産省は無傷のままである。これでは、この先、いくらでも巻き返す力を蓄えていると警戒すべきである。
おおよそ肯定しているのは菅政権の対応だ。事故直後の初動に依然不明な点があるとしながらも、要所で、東電や経産省のむしのいい動きを牽制し、押さえ込もうとした。一部の民主党政権に批判的なメディアのために、菅政権の失態であるかのように報道された件も、間違った対応ではなかったことが分かる。むしろ、そうそいた批判は菅政権を陥れる謀略だったりしたのだ。
菅首相は、唐突に脱原発を言い出したり、再生可能エネルギーを後押ししたりしたのか? そうではない。浜岡原発の停止も、突然言い出したかのように一部報道されたが、どれも伏線があったり、経産省の策略にあらがって打ち出したものだったりして、なかなか機転が利いている。
本書によれば、どうやら菅首相が起用したブレーンの知恵が働いているようだ。なかには粗製濫造になった内閣参与もいるが、有能なブレーンは、ここぞという場面で、知恵を貸し、難局を乗り切っている。
セカンドオピニオンやサードオピニオンを活用した菅首相の姿が垣間見える。もし、ほかの人が首相の地位にいたら、いまごろ全国各地の原発は再稼働されて、事故前とたいしてかわらない状況になっていたおそれがある。再稼働のハードルをあげるのに菅首相は一役買っている。
ただ、著者は菅首相を一方的に持ち上げるばかりではない。本書の終わりで、経産省に立ち向かうには、菅政権は力不足であったとしているのだ。郵政改革に反対する官僚を更迭した小泉首相のような果敢さが足りなかったと。ただ、これができなかった点は、著者の取材でも不明である。著者は、こうした不明な点がありながらも、できるだけ多くのことを記録しておくべきとして本書を書いた。
そのジャーナリストとしての志やあっぱれである。原発事故関連の本の中では、抜きんでた価値があると言ってよいだろう。保身と責任転嫁に逃れてしまう人間の悲しさも、本書にはしっかり描かれている。自分自身にもそんなところはないかと、結構考えさせてくれる本でもある。
一読する価値あり。いや、再読する価値がありの一冊。お勧めである。
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あの原発事故とその対応に関して改めて見直すものとして出版されたもの。著者は朝日新聞記者で現在はアエラ出向中、と云う事で基本的には震災後の典型的新聞報道=東電発表・政府発表垂れ流しかと、余り期待せずに読んだのだがいい意味で期待を裏切るドキュメントに仕上がっている。
特に管・枝野を始めとして各大臣・補佐官・各省官僚らにも広範に取材して、原発事故発生当時の政府関係者・東電・保安院・原子力安全委員会の対応について詳細に再構築している。全体としても、事故後暫くして出てきた「真実」の報道などから判断するにかなり真実に近いものであろうと思われる。管降ろしの話から一事は全ての事故対応の遅れは「管の所為だ」とキャンペーンを張っていた感のあるマスコミだが、其れへの反証とての読み方も可能だろう。
本書のなかで特に驚いたのは、事故から暫く経ってから管首相の脱原発に舵を切る姿勢を見せた超法規的な「浜岡原発の停止要請」は個人的信条から唐突に出てきたという理解であったが、あれは実はエネルギー担当の通産官僚が「浜岡を”いきにえ”にして他の原発を稼動させる」ために管に対して具申してきたものだというのだ。それを管は逆手に取り、自らの手柄として記者会見で明らかにして通産の描く「他の原発は再稼動」への道筋に更に厳しいタガを嵌めたのだから通産官僚の思い描いた結果ではなかったようだ。通産官僚の描く絵に乗った海江田の失敗が例の「はしごを外された」涙の会見やらの遠因にもなっているのだろう。
本書はこうした事故直後の対応とともに東電救済スキームの裏の動きや新エネルギー政策をめぐる管の意図と其れに対抗する官僚及び財界の姿も描いて、管政権降ろしの背景理解には興味深いものだ。基本的には現状を維持しようとする勢力である東電や通産官僚が「悪」として描かれているのだが、それは間違いではないにしろ、恐らく取材時間の長さや協力姿勢から意識せずにも管政権及び政治家に親近感を感じているのだろうから多少は割り引いて読む必要はあろう。
蛇足だが朝日新聞の朝刊に「プロメテウスの罠」というコラムが連載されている。これも原発事故直後からの政権の動き、取分け原発関連の官僚の国民のを見ずに自らの保身を図る姿が描かれている。新聞の記事は当てにはならないというのも事実ではあるが、一方ではこうした事故当時には記事にならなかった記録を淡々と記録していくのは今後のために重要なのだろう。
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ライブドア事件のルポルタージュの1つであった
大鹿さんの著書『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』が
とても素晴らしい良著だったので、今回も期待して読みましたが、
本書も、とても素晴らしい良著に仕上がっていました。
地震発生から1週間の原発事故対応の様子をルポした第1部、
東電救済スキームが取りまとめられる様子をルポした第2部、
菅内閣の総辞職までの様子をルポした第3部、の3部構成で、
地震発生から半年間の出来事が、順を追ってまとめられています。
第1部は、危機管理について、
第2部は、企業再生について、
第3部は、エネルギー行政について、
それぞれに関わる方々には、よいケーススタディだと思います。
もちろん、それぞれに直接関わることのできない
最大のステークホルダーである国民にとっても、必読の書でしょう。
原発の知識がなくても、金融の知識がなくても、斜め読みでもいいので、
ゴシップ紛いの脱原発便乗本よりかは、断然、本書をお薦めします。
なんか、本書を読んでいると、
菅さんを、寄って集って総理大臣から引きずり降ろしたのは、
誤りだったんじゃないかって、思ってしまう…。
そもそも、裏を取らずに誤った情報を報道したマスコミによるミスリードが、
震災パニックや景気後退の遠因なんじゃないかって、思ってしまう…。
★5つでもいいぐらいですが、小説じゃないので…。
やっぱり、事実は小説よりも奇なりってことですかな…。
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第一部が福島原子力発電所の事故について、そして第二部は、原子力発電所や東京電力をめぐる政治と官僚のせめぎあいを、著者のインタビューと記録に基づいて記載している。
原子力発電所の事故については、当事者の発言も多いため、臨場感ある内容で、新聞やテレビでは伝えきれていなかった緊迫したやりとりがよくわかった。しかし、種々の記録を基にしているためか原発内部の様子が専門用語の羅列で解説や図もないため、わかりにくい面があったが、それは本題ではなく、1時間、1分の勝負に挑む関係者の思い、判断を知るには充分なのだと思う。菅首相をはじめとした政治家も主役として登場するが、政治家叩きの内容はなく、事実を時をおって記載しており彼らの頑張りに敬意を示したいと思わせてくれた。
第二部以降は、原発をめぐる政治家・官僚の綱引きの記録である。ここには全く震災・原発被害者のためという思想はなく、各々の既得権益を守ろうとする政治・行政のみにくさのみが延々と綴られている。
ここには、国民のための政治なんてどこにも存在しないのだと、改めて感じさえられてしまう。
記録として非常に有益だと思うが、一方でこの著者の「ヒルズ黙示録」というライブドア事件の本も読んだことがあるが、文章のトーンが一方に偏りすぎる面もあり、すべてを鵜呑みにしてはいけないと思っている。
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福島第一原発事故の状況を、現場、政府、東電の動き、考えをばらんすよく記した本。ただちょっと当時の官邸によりすぎな印象。
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原発事故発生からの調査報道ノンフィクション。
多くの関係者へのインタビューから、そのときそこで何が起こっていたのかを浮かび上がらせている。
前半は原発事故とその裏での危機的なやりとりについて。既に多くの報道で知っている事実を、時系列に分かりやすく並べてある。本当に日本という国が危機であったことを思い知らされ恐怖を感じる。
そして後半には東電や経産省を巡る問題。長年の構造的欠陥や馴れ合いの体質について、分かりやすく迫っている。
タイトルの「メルトダウン」から、事故の詳細を述べた本であると思っていたが、最後まで読んでそうではないことがよく分かった。今の日本というシステムが既にメルトダウンしているという筆者の言葉に重いものを感じた。
今回の事故でタラレバの話をしてもしょうがないのかもしれないが、どうしてもそれを思ってしまう。この地震が自民党政権時代に起きたらどうだったのか。お互い分かっているところで「うまいこと」出来たのかもしれない。民主党政権だったか、対策が後手に回ったのか。自民党なら迅速に動けたのか。誰にもそれは分からないが、少なくとも思ったことは、民主党政権であったからこそ浮き彫りになった問題点も多いのではないか。自民党政権ではきっとうやみやに、そしてかき消された問題も、民主党政権であったから、菅首相であったからあらわになってしまった問題もあるのではないか。そう思ってならない。そしてこれだけの事がおきながらも、結局は何かうやむやになってしまっていることが多くあるような気がしてならない。『震度0 』という横山秀夫さんの小説があったが、本書の最後がまさにその通りに思えた。これだけのことがあったにも関わらず、何も変わらない。
では、どうすればいいのか。それを深く考えてしまう。『日本中枢の崩壊』よりも読みやすく、多くの人に是非読んでもらいたいと思った作品だった。
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福島第一原発事故を巡るドキュメント。
若干脱原発バイアスがかかっているきらいはあるが、基本的には極めて客観的なドキュメント。
事故を巡る記述で印象的なのは、やはり菅首相が福島第一原発にいきなり乗り込んでベントを遅らせてしまったことと海水注入を一旦止めろと支持されながら注入を続けた吉田所長の判断の場面だ。
首相退陣を巡る場面では、経産省の言うことに踊らされ「1000万戸の家庭に太陽光発電」とかG8で口走ってしまう首相のいい加減さが腹立たしい。この首相はほとんど何も考えてなかったのではないか。
浜岡原発停止に関しても迷走したおかげで現時点でも原発再稼動のメドはついていない。
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著者独自のインタビューに、各種媒体からの引用し
事故の経過を分かりやすく追う事が出来る。
事故のきっかけは地震による津波であったが、
原因を辿って行くと人災で、それもかなりひどいものである事が
読んで行くうちに明らかとなり、暗澹たる気持ちになる。
事故の裏で既得権益を死守するために奮闘する
官僚達や東電幹部の姿は情けない。
事故そのものだけでなく、こういう者達を相手にしなければ
ならなかった菅さんには同情してしまう。
この本には、菅さん自身の責任にまでは踏み込んでいないが…。
しかし、日本は子供の国なんだろうなと強く意識させられる。
様々な分野で、同じ事が行われていると思うと…。
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著者の経歴から警戒心を持ちながら読んだが、よく取材して書いた本だと思う。
メルトダウン前後のできごとを教えてくれるが、この本の主眼は、経産省による支配構造を明らかにすることにある。
東電の体質もよく伝えられ、政治家にせよ官僚にせよ、軒並み籠絡されてしまうところに、恐ろしさを感じる。
菅が、震災直後にはよい判断をしていたのを知った。東電が情報を隠蔽していた条件下で、よくやったと思う。菅の目指すところが経産省と異なったために、情報操作によって世論をコントロールされ、辞任に追い込まれた経緯がよくわかった。
もちろん、このテーマだから原発を管轄する経産省の実態が明らかにされただけであり、この体質は他省庁にも共通だろうと思う。
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ライブドア事件やJAL倒産までの記録を綴ったノンフィクション作家であり記者でおなじみの大鹿靖明の最新作。125人にのぼるインタビューからなる本書はまさに力作。政府、経産省、東電、その他利害関係者の責任のなすりつけ合いには思わず笑ってしまうほどだった。
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尾鷲さんお勧め図書
メルトダウンしていたのは、原発の炉心だけではなかった。東電の経営陣、監督官庁の経産省の官僚たち、原子力委員会や保安院の原発専門家たち、政治家、金融機関・・・。3月以降12月までの9カ月間に100人以上にインタビューを重ねた迫真のドキュメンタリーです。今年読んだ29冊の中では、今のところ本書がナンバーワンです。
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原発事故以降の、事故対応、東電救済、国家のエネルギー計画を巡る綱引きをまとめた本。
現時点におけるフクシマ関連本の最高傑作にして、近年出版された各種ノンフィクションの中でも出色の出来。出来ることなら☆6つあげたい。
原発事故対応、救済スキーム策定、原発を巡る国家的論争において、一般的認識とは異なる事実が大量に提示されている。
例として、下記の事柄に疑問を持っていない人は、本書を読むべき:
・事故発生直後に菅が現地視察したのは、現場の担当者や日本国民全体の心情に影響を与えることを目的としたパフォーマンス
・東電の清算を回避した東電救済スキームは、官邸が安易に東電になびいた結果
・浜岡原発停止要請や太陽パネル1000万戸構想は菅の思いつき
また特に、『官邸、東電、経済産業省の担当者達は無能の極みにあり、自分が彼らの立場にあったら遥かに巧く事故処理やその後の政策立案にあたれた』と言わんばかりの言説を繰り返してきた人間(少なくともマスコミやネットの議論は読む限り、そういう人間はたくさんいるようだ)も、本書を読み、その上でもう一度、『自分なら本当に彼らよりも巧く事にあたれたか?』と自問してほしい。
本書を読む限り、原発事故に端を発する電力問題は、現行の国家運営システムにおけるインセンティブの不一致と情報の非対称性から必然的に生み出されたものであり、特定個人・特定組織の良し悪しといったレベルにはない。国家運営の構造自体を設計し直さない限り、こうした問題は今後も発生するだろう。
尚、上記のようなノンフィクション的側面に加えて、一つの物語として見た場合においても、これまで観てきた大抵のフィクションよりも遥かに(これらが全て事実であったという笑えない点を除き)面白い。
万人に激しく勧めたい。
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昨年3月11日の原発事故から,半年弱のドキュメント。メリハリのある三部構成で,原子炉への初期の対応,東京電力の救済スキームの構築,浜岡原発停止要請から管政権の終焉までを扱う。
去年ニュース等で,リアルタイムで散発的に聞いた話がまとめて読めたのはなかなか有意義だった。著者はあとがきで,メルトダウンしていたのは炉心だけでなく,東電,経産省官僚,原発専門家,銀行,政治家,いずれもメルトダウンしていたと書いていて(p.349),そこを出発点に執筆したそうだ。
なので筆致はすごく批判的。だけど,関係者がみんな無能で保身しか考えてない最悪の人々だ,という単純な構造では全然ないと思う。原発に限らず,今まで多くの問題で政府や大企業が批判されて来たけれど,そういう単純な批判を繰り返すだけでは何にもならない。陰謀論を助長するだけ。
批判って後付けの部分が大きい。もちろん,全電源喪失の可能性を共産党が議会で指摘してたというのもあって,それにもかかわらず対応しなかったと言われるけど,たぶん他にもいろんな可能性が指摘されていて,そのすべてに対応しておくべきだったかはそれだけでは何とも言えない。
もちろん危険を伴う事業なんだから,緊張感をもって,適切にやってかなくてはいけないけど,志気の問題もある。あまり批判ばかりされすぎるとかえって逆効果かも。責任追及でなく,問題の把握とその解決が重要なのだから,もっと冷静に議論していく必要がある。時間がかかるかもしれないけど。
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~メルトダウンしていたのは、原発の炉心だけではないのだ。原因企業である東電の経営陣たち。責任官庁である……~
と伝う本著。
想定外の震災、とりわけ津波。「想定外」で済ませられる問題ではない。
・原発自体の耐用年数だけでなく、建物や施設全体の老朽化対策
・1号機の運転操作をする当直には、誰一人として非常用腹水器を実際に作動させた経験のある者がいなかった。
……etc
間違いなく言えることは チェルノブイリと並ぶ人類史上最悪の災厄、福島第一原発事故、同じ過ちを犯してしまった事実。
責任をとらされた者は誰もいない。
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福島第一原発事故からわずか1年で、これだけの緻密なドキュメントが書かれたことは驚き。3部構成で、1章は事故直後の東電・官邸の情報錯綜や、相互不信が生々しく描かれる。事故直後のドキュメントとしても面白いが、「想定外の事象に、対しいかにリーダーシップをとって対処すべきか?」という観点でみると、とても示唆に富む。
2章は東電の賠償責任をめぐる議論、3章は原発停止やその後のエネルギー政策の議論の行方をを扱っている。すなわち、タイトルにある「メルトダウン」当時の様子を扱っているのは全体の3分の1ほどで、その後の原子力政策をめぐる政治・官庁・東電の駆け引きに多くを割いている。
読み始めた時にはその構成に違和感を感じたが、「事故後」の課題を多く扱うことにこの事件を旧聞にせず読者に受け止めてほしい、という著者の意思を感じた。