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トーベ・ヤンソンの「陽」がムーミンシリーズだとすれば、「陰」がこちらの大人向けの短編集ということらしい。(と、いいきれるほど『ムーミン』も手放しで「陽」なわけじゃないとは思うけれども)
フィリフヨンカたちの物語だな、という印象。大災厄にひたすら怯えて怯えて、やがてほんとうに大災厄に襲われた後、とてつもない開放感に踊りだした彼女の影がそこ、ここにあるようでした。(まあ、それだけでくくれるほど簡単な物語ではないですけどね)
仄暗いイメージなのに、読後感が悪くないのが不思議だなと、余韻に浸ってるところです。
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トーベ・ヤンソンの大きな魅力の一つは、描かれる登場人物たちの人間味だと思います。読者に好印象を与える人物も、いけ好かないと思わせる人物も登場しますが、誰もがどこかしらに簡単には割り切れないような人間臭さを持っているのです。同じように、ヤンソンが描く自然も、人間とセットで描かれているからこそ魅力的です。
短編だと、物語や描写が必要最小限まで削ぎ落されるので、その人間味がより分かりやすくなるのかもしれません。
この本全体を言葉で表すのは難しいですが、ヤンソン独特の緩やかさの中に、ある種の緊張感を持った作品が多く、とてもおもしろい短編集でした。
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ムーミンの小説しか読んだことなかった。私はムーミンがすきなんじゃなくて、トーベ・ヤンソンの感受性とその表現に魅入られていたのだと実感しました。非常に煩雑で見えにくくて途方もない個人の意味世界を、難解にすることなく、言葉で丸め込むこともしない。成り立っていること自体が不思議な短編たちの、ささやかな一冊。
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「さまざまに多義的な連想をさそう表象が、ときに本筋からゆるやかに脱線しつつ、なぜかうまいぐあいに絡み合い、最後にはそれなりにオチがつく。」(P271解説より)という、ヤンソンの「ディープ系」と称される短編集。
・ハワイ、ヒロからの物語
・夏の子ども
・ルゥベルト
・連載漫画家
あたりがスキでした。
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童話や寓話的作品を書く人の後ろには、深くて広い自分の世界が広がっているように思います。決して一色では表現できない彼や彼女だけ世界。これを読んでからムーミンを改めて読むと、また感じるものが違ってくるかも。
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ムーミンもそれなりに「・・・????????」なところあるけども、それはここでも健在
っていうかむしろそういうのの方が根深い人なんかなトーベ・ヤンソン
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トーベ・ヤンソンの描く、人間関係の奇妙さや逃れたくなる面倒くささや、誰かと一緒にいても結局はひとりきりだというどうしようもない孤独や、それらをひっくるめての人が生きることへの愛おしさがとても好きだ。
「記憶を借りる女」がわけわかんなくてすごく怖かった。ああいうホラーも書くのね。ホラーのつもりで書いたのかは不明だけど。
この短編集に収録されている話は、「記憶を借りる女」以外はみんな好き。
「クララからの手紙」は、別の出版社(たぶん)が出したトーベ・ヤンソン短編集だともっと長かった気がしたけど、別の短編と記憶の中で混同してるのかな。そっちもまた読み直したい。