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紙の本
本書で、何といっても興味深いのは、抜群の数学力(東大に合格する大秀才にとって、数学力は標準装備!)が評価されてスターダムに駆け上がる前半部分である。
2012/03/06 11:00
15人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
北海道の公立高校(札幌ではなく道東)から日本最難関の東大理3に現役で合格した石井さんが、ひょんなことから医学研究の道を放棄して外資系企業、しかも全く予備知識の無い金融機関に飛び込んで、トントン拍子に出世して32歳で「ぜいたくしなければ一生食うに困らないだけの財産を築いて」退職するまでの話と、退職後、様々なことをしながら、自分の子供の「お受験」を境に「お受験=国立私立小学校受験」産業が、実に隙だらけの発展途上にあることを見抜き、自らお受験専門塾「アンテナ・プレスクール」を立ち上げ、この業界に殴り込みをかけるまでをつづった半生記である。
石井さんの名前を最初に知ったのはNHKスペシャル「マネー」に石井さんが、当時はやりのデリバティブの専門家として登場した時だ。その時以来、私はこの石井至という人物にずっと注目してきた。「外資系金融機関でハーバードビジネススクール卒の連中とも随分付き合ったが、特に頭が良いと思わせる人はいなかった」と言い切る石井さん。この言い切りの清々しさが私が石井さんに惹き付けられた出発点だ。日本には無暗に外国人を崇拝する人がいるが、私はそうは思わない。日本には無暗に日本の受験制度をくさす人がいるが、私はそうは思わない。日本の受験システムを勝ち抜き選抜された人材は、世界でも指折りの大秀才であることを石井さんは教えてくれる。
石井さんは最初に就職した米国の銀行バンカーズトラストで「透明人間」扱いを受けていたという。誰も声をかけないし、誰も仕事を回さない。そこに石井さんがいても、誰も気にも留めない。言葉をかけられる唯一の機会は「じゃまだ。どけ!」と怒鳴られる時。英語もろくにしゃべれないジャップが、どうして同じ職場にいるのか理解できないというのが周囲のギャージンの共通の理解だったという。そんな石井さんの人生を、ある事件が一変させる。きっかけは数学力だった。デリバティブという金融商品を新しく開発する時は数学的知識が必要になる。ある日、英国から来た上司がデリバティブ商品を開発しようと数式を解いている。ところがそれが解けずにうんうん唸っている。何を唸っているのだと見ると、それは物理の熱伝導式でおなじみの偏微分方程式で、しかもこの上司は、式の変形の途中で間違いを犯していことに石井さんは気がつく。数学に言葉はいらない。うんうん唸り続ける上司の肩をトントンと叩き、すらすらと偏微分方程式を石井さんは解いて見せたのだ。この効果は劇的だった。正に一瞬にして石井さんを透明人間から金融界のスターに押し上げたのだ。上司は叫んだ。「こいつはバカじゃない!」。周囲の石井さんをみる目は劇的に変わる。
アングロサクソン含む白人の世界では、数学が出来る人間は往々にして神様扱いだ。九九を8歳でほぼ全国民がマスターする奇跡の国日本と違い、ギャージンは九九のマスターに多大なエネルギーを費やし、その多くは挫折する。だから平均してギャージンの数学進度は日本人より3年から5年は遅れている。暗算が出来ないから、分数の通分だって簡単には出来ないのだ。
こうして透明人間から数学の神さまに変身した石井さんの下にはデリバティブ商品開発の仕事が殺到するようになる。商品開発は富の源泉であり、当時、調子こいていた日本の金融機関は外資系金融機関にいいようにむしり取られ(何千億円も!)、その日本の金融機関をとことん絞り取った外資系金融機関の中核に石井さんがいたというわけだ。
天才石井至の大出世がはじまる。給与は2年目で5千万円を超え、ヘッドハンターからのスカウトがどんどんくる。スイス系金融機関を経て28歳でフランス系金融機関(インドスエズ銀行)に転職した時の肩書はマネージングディレクター。さすがである。東大理3の実力とは、諸君、こんなものなのである。
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