紙の本
ヴァレンヌ逃亡事件に迫った渾身作
2013/12/20 21:01
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投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ベルサイユのばら』になじみの方は御存じの、ヴァレンヌ逃亡事件。
一般的な知名度は高くないであろう事件の真相に迫った渾身の一作です。
国王ルイ16世の情勢を見る目の無さ。王族としての対面から衣装や財産への執着。嫉妬から?フェルゼン伯爵を計画から離脱させてしまった浅はかさ。パリから遠ざかったことの油断による頻繁な休憩。これでは失敗より他無いと思わせる要因が、様々炙り出されています。
ヴァレンヌは国境に近いがゆえに、幾度も外敵の侵入を受け、第一次大戦の激戦地にもなりました。逃亡事件についても、現在は石碑が残るのみ。
字体が大きく平易な文章で書かれているので、一気に読めます。逃亡劇がそのまま目に浮かぶようでした。王制廃止、共和制樹立を決定づけたといえる事件です。
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面白かった~!
ヴァレンヌまでの逃亡の様子が刻銘に綴られています。
どこからどこまでは史実で、どこからどこまでがフィクションなのか
わかりませんが、最後までドキドキし通しでした。
アントワネット本やフランス革命本が必ずページを割いているこの事件。
ヴァレンヌ逃亡のくだりはどれを読んでも、何度読んでも、
ものすごい緊張感を強いられるのですが、この本はその中でも最高にストレスフル!
終始、固唾を飲み続けることになります。
ベルばらに描かれるルイ16世は優柔不断だけどお人よしで優しい性格が
好印象なんだけど、この本読んだらルイ16世が嫌いになる。
そしてますますアントワネットが好きになります。
アメリカ独立戦争で共に戦った有能な二人の男性、ラ・ファイエットとフェルゼン。
逃げるフェルゼンに追うラ・ファイエット。
おそらくお互いにお互いの能力を承知しているはずだ。
この二人の才碗対決はフェルゼンが途中で逃亡メンバーからの離脱を
余儀なくされた時点でラ・ファイエットに軍配が上がったのですが、
フェルゼンが王家の先導役を最後まで果たしていたらどうなっていただろう?
「歴史に’もしも’はない」。
だけどついつい考えてしまう。そんな余韻も楽しめる一冊!
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[図書館]
読了:2012/2/27
フェルゼンがいたら…フェルゼンさえいてくれたら…
そういう書き方をしている。
守護神たるフェルゼンを退けたルイ16世が、逃亡にブレーキをかけ続ける。
実行しないと決めたら、実行しないための言い訳はいくらでも見つかる。
不決断の王は、最後まで不動だった。
寝る前に読むと、ルイ16世にイライラして眠れなくなってしまうw
根拠のない楽観で勝手な動きをし(逃亡中の人間が、馬車から下りて住民と会話ってあんた…)ながら、肝心な時には不動(ドルーエに見つかり、あとはわずかなチャンスにかけるしか逃げる道はないのに、あれやこれやと悲観的理由を並べて行動しない)。分刻みに決断を先送りにしているうちに、逃げ道は完全に閉ざされる。
ルイ16世の優柔不断について、エリザベス1世と比較して、エリザベスの場合は優柔不断と果てしない先延ばしなぜかうまくいったのだ、結局、時代の要請なのだ、と書かれているが、戦略として引き延ばしをするのと、恐ろしい本質から目をそむけるために先送りするのとではずいぶん違うのではないかと思った。
p.243 「人間の楽観というものがいかに致命的か、運命の歯車はどう狂い出すのか、計画の失敗はフランスにとって良かったのか…」
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フランス国王ルイ16世一家の亡命失敗。ベルばらではマリー・アントワネットの髪の毛が一夜にして白髪となり女官に「王妃様、お髪が…!」と驚かれてしまう、あの事件である。
事件の顛末は知っているのに、面白くて面白くて止まらなくなった。リズミカルな日本語を駆使した筆者独特の文章が冴えわたり、「中野さん、もしかしてその場にいたんですか」と聞きたくなってしまうほど。
ベルばらでは温厚な人のよいルイ16世だが、ここでは…!捕り物帳としても楽しめる傑作。
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破滅に向かって突き進んでいく一行が痛々しい。
失敗を約束された逃避行だった。見張りの衛兵たちも、宿駅に潜む危険も、明敏な敵方の将も脅威だったろう。が、そんなものとはくらべものにならないくらい重大な不安要因を、内部にはらんでいたのだ。
それは国王ルイその人。事態の認識が甘く、危機意識に乏しく、そのうえ優柔不断。しかし王であるがゆえに誰も口出しできない。よくできた計画が失敗に傾いていくターニングポイントは、ほぼすべてがルイ絡みだ。後半は「ここで決断していたら」という場面のオンパレード。
が、しかし、そこで決断できるようなら、そもそもこんな場面に立たされてはいないはず。「あの時こうしていれば」はあり得ない。すべては、なるべくしてなった展開なのだ。
ここまでくると、これはルイ個人の責任でもないような気がしてくる。ルイはもともとこういう人なのだから。子どもに大仕事(国連の運営とか軍隊の指揮とか)を仕切らせるようなもので、失敗の責任は当人より任命権者にあるだろう。ルイの人物を読みきれなかったフェルゼンの負けだ。
計画にルイを含んだ時点で――といって含まざるを得まいが――失敗だったと思う反面、似たようなことはいつでもどこかで起こっているとも思う。本書に既視感を覚えたのは、この事件の顛末が山岳遭難のドキュメンタリーに酷似しているからだ。
危険性を正しく認識しないまま出発。歯車が狂い始めても気にしない。やがてそれまでのツケが噴出、周囲が一気に牙をむく。正しい判断を下せず、最後のチャンスを取り逃がす。
昨夏、子供連れでビバーク寸前という事態に陥ったときのことを思い出す。まさにヴァレンヌ逃亡事件そのものだった…(ほかの人はあまりそう思わないかもしれないが)。私にはとても王を責めることはできない。
あのときのことはわが家にとって実に貴重な経験で、本当に勉強になった。(遭難関連の本も山ほど読んだし。)人は変われる。王一家にしても、ヴァレンヌ事件でさぞいろいろ学んだことと思う。それを生かす次のチャンスは、もうなかったが。
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この逃亡に密着取材してきたのか?と思うほど、おもしろい本。
ただでさえ目立つ大型馬車から気軽に降りてしまう国王の行動に、あーもうっ!って感じ。国王本人は今、自分は逃亡してるんだという認識が無かったんだなぁ・・・なんの為にあんたは従僕に変装したんかいってツッコミ入れたくなる。
むしろ、アントワネットの方が、慎重だった印象を感じたけど、フェルゼンの最初の計画どおりに、国王と王妃は別々に逃げれば良かったのになぁ。
アントワネットに関した本は、今まで他にも読んでるから、結末はわかっているんだけど、この逃亡の失敗の原因は、国王の政治向きではない優柔不断さと思慮の甘さとしか言いようがない。どうしてあの時・・・と一生後悔しつづけたフェルゼンの気持ちがわかる。目的地までフェルゼンを同行させるべきだったよ、陛下。
いっそのこと一家逃亡しないで、大人しくチュイルリー宮殿で暮らしていれば、例え運命は処刑だったとしても、もっと先の話だったかもしれないのかな?って思った。
国王の記したメモが歴史上の重要な記録になったっていうのが皮肉な結果。
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内容は、とても興味深かった。
マリー・アントワネットが、私の勝手な思い込みよりずっと王妃としての威厳ある方だったことは意外であり嬉しくもあった。
文章がもうすこしお上手なら、よりよかったなと。
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フランス革命の中の、ヴァレンヌ事件のみに焦点を当てた本。
子供の頃、池田理代子氏の漫画『ベルサイユのばら』の初めて読んだ時、最終回のラスト1ページで語られたフェルゼンの最期に、それが史実だけに、フィクションであるアンドレやオスカルの死よりも衝撃を受けたのだけど、第一章がそのフェルゼンの最期の日、“運命の六月二十日”。
中野氏の今までの著作を読んだ時もそうだったけれど、中野氏の想像する登場人物たちの気持ちが、私にも「きっとそうだったのだろうな」と思える。
それも、メインに据えた人物だけでなく、その周りの人物、敵対する人物も全て、それぞれの立場から“解る”気持ちにさせてくれるから面白い。
それにしても、ラファイエットがアメリカ独立戦争に参加していたのは知っていたけど、インディアナ州で市の名前に冠されていたり、名誉市民に選ばれる程(しかも2002なんていうつい最近)アメリカで人気だとか、ブイエ将軍が、後に国歌となった『ラ・マルセイエーズ』で、かれこれ200年も名指しで糾弾されているとか、全然知らなかった。
本の感想からは離れてしまうけど、アメリカはずっと「歴史が浅い」であるとか「若い国」と聞かされてきて、フランスは「革命によって古い王政から近代社会へ」と思ってきたもので、最初にアメリカ独立戦争の方がフランス革命よりも前と知った時は、しかもその頃日本は徳川10代将軍の時代だったっていうんだから、「何だよ、アメリカってそんなに若くないじゃん!」とか大層吃驚したものでした(←馬鹿〜)。
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王様ルイの優柔不断さに イライラ。「ベルばら」では もう少しいい人に描かれてたのに 実際は、やっぱり。。。
アントワネットの良さが 出てたように感じられた。
フェルゼンって 本当に すごい人だったんだ。
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すごい迫力。追いつ追われつ、というほどのカーチェイスではないけれど、いつ捕まるんだろうと、読んでいる間中ドキドキしました。
国王一家逃亡事件のことを最初に読んだのはマンガ「ベルサイユのばら」。なので失敗に終わるという結末は知っていたけれど、史実やあらすじを知っていてもハラハラドキドキするというところに、小説を書く価値や読む意味を感じます。
世間的にはマリー・アントワネットが最悪のバカ王妃として認識されているらしいのと、藤本ひとみの本でフェルゼンをうすのろバカ扱いしたものを読んだことがあります。ところがこの本では、ルイ16世国王がバカだったということになっています。それがもう本当にそうに違いない、と思う程説得力ありました。
きっと真実は全員がほどほどのバカだったのでしょう。
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とても読みやすくて、内容盛りだくさんだったが、一気に読み切れる。
フランス革命に関する本はたくさんあるが、ヴァレンヌ事件に焦点を当てているので、濃密で臨場感のある一冊になっている。
見方によってはルイ十六世がすべて悪いとは言い切れないと思うが、本書の視点ではこういう記述は仕方がない部分はあると思うので、別視点で書かれた本も読んでから人物評価したいところ。
ただ、本書に書かれているように、当時のフランスの窮状がすべて王や(特に)王妃に向けられてしまっていた点と、その状況を読み切れていなかったのが不幸だったのだと感じた。
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マリー・アントワネットやルイ16世が逃亡、連れ戻されるヴァレンヌ事件をドラマチックに描く。
登場人物たちが生き生きとしていてドラマのようでした。ルイは相変わらず可哀想な描写ですが…それもまた中野さんらしいのかなと。
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それにつけてもルイ16世のダメさ加減よ。長男の代打でイヤイヤ王位についたからちょっと同情してたけど、そんなふっ飛ぶくらいのブチ壊し男。アントワネットとフェルゼンは階級主義だったかもしれないけど、それに共感したくなるくらいの革命軍の粗暴さ。
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フランス革命の中でパリに幽閉の身であった王一家のパリ脱出からヴァレンヌまでの逃亡を綴る物語。
歴史の授業で出てくる一行だけの出来事ではなくて、帯で行われたというか過激度を増していった革命が感じられる作品。
マリーアントワネットという女性に惹かれる周りの人物にも凄く焦点があたっていて、特にフェルゼンという人物についてもっと知りたいなとおもった。
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フランス国王ルイ16世とその王妃マリー・アントワネットと家族たちが、パリから国境近くのモンメディへの逃亡を企てた。全てをお膳立てしたのは、王妃の恋人であるスウェーデン貴族フェルゼン。計画はパリを出るまでは順調だった。国王がフェルゼンの同行を断るまでは…。
逃亡計画段階から、目的地モンメディと目の鼻の先ヴァレンヌで反王党派に捉えられるまでを再現している。特に圧巻は、チュイルリー宮を脱出してヴェレンヌまでの24時間。
優柔不断で楽観主義の国王と、やきもきしながら従うしかないマリー・アントワネット。捉えられてからも国王の威厳を守ろうとするアントワネットの気高さ。
もし、この逃亡が成功していたら?逃亡を企てずにおとなしくパリにいたら?フランス革命は違った道を辿っていただろうか。
ノン!
歴史の流れは止められないのです。