投稿元:
レビューを見る
1984年6月に(エイズで?)他界したフーコーのコレージュ・ド・フランス最終講義。1984年2月1日〜3月28日、9回、18時限。ちょうど、30年前ですね。
フーコーの最後の3年間の講義は、ギリシア・ローマ期におけるパレーシア(勇気をもって真理を率直に話すこと)という概念に当てられている。パレーシアという言葉は、フーコーの出版された本のなかでは、数カ所しか言及されてないらしいんだけど、この3年間の講義は、パレーシアだらけである。
最後の年は、ずばり「真理の勇気」。分析の対象となるテキストは、ソクラテス、プラトン、そしてキュニコス主義。ソクラテス、プラトンは、「弁明」「パイドン」「ラケス」などの有名なテキストで、フーコーの解釈に、なるほど、なるほどと感心することしきり。
最期の講義ということで、遺言的なものを思わず、期待してしまうのだが、本人も、体調が良くないなか、最期を意識した言葉がいろいろなところにちりばめられている。
「哲学教師である以上、生涯のうち少なくとも一度はソクラテスとソクラテスの死についての講義をやっておかなければなりません。事はなされました。私の魂を救いたまえ。次回はキュニコス主義についてお話することを約束しましょう」(2月22日)
あと、全体を総括しようという思いもいろいろなところにちりばめられていて、冒頭で自分のこれまでの仕事を「主体と真理」の関係であるとして、総括している。そして、講義の最期のほうで、あきらかに時間がなくなっているのだが、ギリシア・ローマのパレーシアが、キリスト教にどのようにつながるのか、かなり足早に言及している。これまでの議論の精緻さから比べると、かなり大雑把な議論になっていたりするのだが、ここは重要なポイントなので、言葉として残しておきたかったんだな、というのが、伝わってくる。
出版されている本とあまり重複がない内容の講義が、膨大に残っていることに、あらためてフーコーのスゴさを実感しますね。死後、30年たっても、つぎからつぎに新しいフーコーが現われてくる不思議。
ちなみに、フーコーの講演は、カセットテープなどで録音されており(1970年の最初の講義を除く)、この本の講義については、以下のサイトでナマ声できける。何言っているかはわからないけど。イメージとちょっと違う声で、面白いね。
http://michel-foucault-archives.org/?Cours-au-college-de-France-1984-Le