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母の遺産 新聞小説 みんなのレビュー

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みんなのレビュー89件

みんなの評価4.0

評価内訳

87 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

終末医療の渦中にいる自身の未来の姿をふと思ってしまうリアリティ

2012/06/10 15:39

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投稿者:本を読むひと - この投稿者のレビュー一覧を見る

水村美苗『母の遺産』は、その副題の「新聞小説」に、かなりの意味がある。著者の最初の小説を別とすれば、『私小説』『本格小説』と、これまでの小説はいずれも小説の一種のジャンルというべき名称をタイトルとしていて、今回の作品も、それに連なるものと考えてよいからである。
 『母の遺産』は読売新聞に連載された「新聞小説」だが、『私小説』が著者自身とその周辺を描いたもの、『本格小説』がドラマティックな骨格をもったものだとすれば、連載を続けて読みやすい、あるいは連載の途中でも興味をもたせる、といった日本的なエンターテインメント性のある小説である。老いた母親の介護、そして長年連れ添った夫の浮気という題材自体も、一般的な関心の範囲内にあるといえる。
 同時にのちに、「新聞小説」とは主人公の祖母がそれを読み、そのために主人公の大変な介護の対象となる母親がこの世に生じることになった尾崎紅葉の新聞小説『金色夜叉』を指してもいることが明らかになる。複合的な意味合いが「新聞小説」にあることがこれで分かった。(図書館の本を読んだので、帯文がそのことにふれていたのは後で知った。)

 最近は日本の小説をあまり読んでいないのだが、興に乗って二日間で500ページ以上の本書を読んでしまった。面白いことは認めざるをえない。
 以下に記すのは、ストーリー上、少し気になった部分であるが、未読の人は予備知識のないほうがいいかもしれない。主人公、美津紀はわがままな老女の母親が転倒骨折し、その介護にあけくれるが(その大変な過程が本作の中心をなす)、ふとしたことで夫に別の女がいることを知ってしまう。入院した母親の面倒に忙しいなか、大学教授の彼はベトナムに「サバティカル」で旅立つ。忙しさと夫への不信のせいで、美津紀は母親が病気で亡くなっても、そのことを知らせないままにしておく。また以前、夫の浮気は二度ほどあったのだが、そのときより相手が若そうな今回の浮気(というより、それ以上のもの)を知ったことも夫には黙っている。
 ところで主人公は夫のパスワードを知っていたため、ベトナムにいる二人のeメールのやりとりを読んでしまうのだが、そのなかで女が計算高いことを知る。
 《女は哲夫の年収、貯金や株の総額、マンションのローンの残高、さらには美津紀のおおよその年収まで知っていた。〔略〕そして、別居の話もまだ出ていないのに、話し合いだけで済む協議離婚なるものを成立させるため、美津紀に分けるべき財産を計算してきていた。》
 ここで本書のタイトルとなる「母の遺産」が生きるのだが、すでに入院中に老人ホームに移るため土地が売却された母親の財産のことを、相手の女は知らないらしい。《あますことなく平山家の懐を把握している女だが、千歳船橋の土地の話は知らされていないようだった。》
 ストーリー上、問題となるのは、たとえ夫が相手の女に、妻に入る財産のことを黙っていたとしても、そうしたことを計算高い女が考慮しないことの不自然さである。細かな金銭を気にしない女か、それとも主人公の母の遺産さえも考える女か、どちらかでなければならないような気がする。またベトナムで二人が同居しているならeメールの必要もないのでは、とも思う。かくてこの小説は、「母の遺産」にストーリー上、抜き差しならぬ重みをもたせつつ、そのためにかストーリー上の齟齬がさらされる、そんな小説になってしまった。とはいえ、あくまで主人公の視点から描かれる小説であるため、矛盾が矛盾としてやぶれるほどではないと言い添えておきたい。また「母の遺産」にも複合的な意味合いがありそうだ。

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2012/04/14 09:26

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2012/04/08 17:31

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2012/10/30 18:33

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2012/11/21 14:52

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2012/06/04 23:28

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2013/01/01 21:35

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2012/06/10 12:22

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