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米国のリバタリアン、ティーパーティー系議員やシンクタンク、有識者など、一部で盛り上がっているらしい金本位制復活論について。米国憲法を厳密に解釈すれば金銀に裏打ちされないペーパーマネーの造幣流通は違憲となることや、米国における金本位制の思想的背景、州政府の中央政府に対する根強い不信感、基軸通貨としてのドルの弱化とフランスや中国など脱ドル派からの挑戦、過去約10年で金価格が約7倍に高騰する中、日本を除く各国中銀が金保有量を大幅に積み増していることなどなどを踏まえ、広い視点から解説している。
著者は、米国人はまず目標が理念的に正しいと判断すれば、どんな困難に思えることでもその信念に基づき力技でどうにかして実現してしまう傾向があることから、日本としては、一見荒唐無稽なような金本位制の復活論でも一蹴せずウォッチすべきとしている。
金本位制への移行手順はというと現段階ではアイデア以上のものは無さそうだが、レーガン政権下で「金委員会」に所属していたレーアマン氏によると、「アメリカの連邦準備制度理事会は、大統領からの要請を受けて、主要10カ国(G10)辺りと協議に入る。そこで、それら国々の相互間の貿易が均衡するよう、為替レートを購買力平価に照らして釣り合うポイントで安定させる。(略)主要国相互間で購買力をはかる指標についての合意を得るため、様々な消費価格の物価の序列体系を考え、そこに個別通貨の尺度となる金平価を正確に位置づける。そうすることで各国通貨相互の最適かつ公正な交換レートが決まる。このようにして決まる金のドル換算価格は、世界の金産出コストを上回る価格に設定することで、通貨の素となる金が安定して産出されることになる」こうして、米国大統領が国際通貨会議での合意を経て、3年か4年先の決められた日に金本位制を始めるようG1諸国に促すとしている。
個人的には金本位制復活はまず政治的に無理なんじゃ。。。と思うけれど、とても興味深い本だった。