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世界が評価した戦略幕僚、元陸上自衛隊1等陸佐の手記。
戦後日本が達成した防衛戦略の金字塔とは。
本書は、陸上自衛隊で戦略家として歩んだ著者による「半ば回顧録」として書かれたものである。読んでみた感想であるが、総じて、PHP新書は内容が薄い気がする。本書は、薄味ながらとても貴重な内容となっている。ゆえに、踏み込みの甘さや、解りにくいことがもったいない。(素材が生かされていない。)
企画自体は、出版社側から依頼があったようであるが、一般人向けに解りやすく出来なかったものか、編集者側に、もっとやりようはなかったのだろうか。
著者は、角田順氏にめぐり合い師事する。また、角田氏を当時、唯一のシビリアン・ストラジストであったと高く評価しているが、なぜ角田氏を賞賛するのかがわからない。逆に、高坂正堯氏を、とてもストラテジストでは無いとしている。それぞれ評価の是非以前に、そもそも、ストラテジスト(戦略家)とは何かが良く分からない。高坂氏は国際政治学者で法学博士である。みすず書房のホームページによると、角田順氏は法学博士とある。では、戦略家とは何であろうか。何を持って戦略家とするのだろうか。高坂氏は戦略家を自任していたのだろうかと疑問な点が多々ある。次に、外交官だった岡崎久彦氏をシビリアン・ストラジストとしているが、果たして、戦略家である外交官と戦略家で無い外交官があるものなのだろうか。岡崎氏だけが特別なのだろうかと疑問に思った。戦略家とはなんなのか解説が欲しかった。(感想として、岡崎氏は、保守派の偏った人というイメージが強かったが、本書を読んで見直した面もある。)
ソ連の脅威、日本の防衛戦略の解説は面白い。「日本も砲火を交えない戦争に参加していた」といるのは、なるほどと思わされた。大綱の見直し論は、内輪ネタの感があり、著者の無念がにじみでているせいか冗長すぎる。
著者は防衛事務次官だった久保卓也の理論を高く評価している。私的には、久保氏は、ロッキード事件の一因である次期対潜哨戒機(PXL)の国産化が白紙還元された事件の時、誤った発言をし後藤田正晴が激怒した人という印象しかなかったが、新たな一面を知ることが出来た。
回想録的とあるが、武官から文官に転官したことには触れられておらず、物足りない。教養書としても回想録としても中途半端となってしまったきらいがある。
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8割くらいが冷戦時代の対ソ防衛戦略について。それはそれで面白かったけど、やっぱり冷戦終結後の時代にどうあるべきか的なところを知りたかったので少し残念。後半で少し触れてはいるものの結論的なことは述べられていなかった。
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「ノルディック・アナロジー」から見えてくる米中日の関係《赤松正雄の読書録ブログ》
制服組の論客から、少し季節外れの感がしないでもない、防衛戦略本がだされた。西村繁樹『防衛戦略とは何か』である。この人は、防衛大学校を卒業したのち、陸上自衛隊畑を一貫して歩き、ランド研究所などで防衛戦略の研究を深めた。つい先ごろまでは防衛大学校の教授をされ、定年退官されたばかり。
西村氏は、北欧の戦略環境が、日本の戦略環境と酷似しているとの着眼から「ノルディック・アナロジー」なる構想を打ちたて、内外に物議を醸したことで知られる。1980年代に日本の自衛隊は「北方重視・前方対処戦略」を掲げ、米ソ冷戦を終結させるのに、一役買った。その立役者の一人が当時陸上幕僚監部一等陸佐だった西村氏である。
自衛隊制服組がこうした著作をものすることは至って珍しく、せいぜい志方俊之氏(帝京大教授)ぐらいしか私は知らない。その分、普通の軍事関連ものよりもリアルな記述で満たされておりきわめて面白い。加えてこの本は、彼が留学先でいかに苦労したかが精緻に描かれているうえ、独自の構想を重大なヒントを得て打ち立てた分、様々な障害にも出くわされた。とりわけ防衛庁内局の中からやっかみか嫉妬ともいうべき非難・中傷を浴びた下りが妙に目をひく。
この分野は戦後日本にあっては殆ど人が踏み分けいらぬ道。その中を切り開いてきた苦難の歩みが語られ、興味深い。師匠筋に当たる角田順氏や岡崎久彦氏への傾倒ぶり。それとは反比例する厳しさで、高坂正堯氏や西広整輝氏らへの辛辣な批判。防衛計画大綱をめぐる久保卓也氏に対する冷静な評価。昭和40年代から米ソ冷戦を公明新聞記者として、秘書として、そして代議士として一貫して外交安保畑を歩いてきた私としては、裏舞台を暴露される思いで、一気に読んだ。
かつて、「ソ連脅威論」ではなく、「米ソ対決の脅威論」だとして、先輩から教えられた懐かしい日々が蘇った。この先輩はそれこそ、若き日の岡崎久彦外務省局長と国会論戦で渡り合った。今も戦友であるかのごとく、様々な角度から意見を交換されているようだ。私もまた、隔月に一回の政治家、学者入り乱れての私的勉強会で岡崎氏とは同席させていただき、謦咳に接している。
米ソ対決の歴史的経過を追うにつけ、これからの米中対決における日本の果たす役割に思いをいたさぬわけにはいかない。「ノルディック・アナロジー」から見えてくるものは奥深く広範囲である。
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制服の戦略家として著者が研究した,80年代の対ソ連防衛戦略の話。極東と北西ヨーロッパの地理的近似性から,極東のソ連軍を北欧のソ連軍と比較して考察するノルディックアナロジーを編み出したそうだ。ちょっとよく理解できなかったのは残念。
自身の自衛隊における出会い,成長の回顧録にもなっている。そこはあまり興味なかったが。
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冷戦期日本の防衛戦略がどう変遷していったのかってのと、制服で戦略家としての道を切り拓いたって自分の話。
ノルディックアナロジーとか確かに面白い。実際に地図重ねるとそれらしく見えるし、だからこそ北海道の地理的戦略的な重要性が見えてくる。あと高坂さん、久保さん、西広さんってのが出てきて日本の戦略家ってのはどんなだったかってのが見えたような気がする
。国内世論に配慮して曖昧にした結果日米防衛摩擦がとかってのもなるほどって感じ。
でもなんか不思議でしょうがないんだけど自衛官って文章ヘタクソなんかなやっぱ。
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"防衛" "戦略"という自分のキーワードにひっかかり、おもわず衝動買いした書籍。
なんと著者は、あの有名な"ランド研究所"で学んだ経験があるという。素晴らしい。
著者の経歴を含めて、冷戦時の自衛隊の戦略や、アメリカとの関係、内局と制服組との関係など、興味深く読むことができました。
特に米ソ冷戦時に、自衛隊も戦略面で大きな貢献をしていたことに感銘。
そして、著者の熱い使命感も感じました。
やはり、良質なアウトプットを出すための大前提は、自身の"will"だな!
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西村退役一佐の回顧録+わが国の防衛戦略策定(転換)の経緯についてさらっとまとめたもの。冷戦勝利の立役者としてレーガン、サッチャー、コールと中曽根は同格の四巨頭であるというのが持論だったが、その認識は間違いじゃなかった。ただし、陸自の北方重視の真の意味がようやく分かったの心。あと久保氏再評価。ああ、80年代中にきちんと国内で議論をこなした上で防衛大綱を更新していたら、FSXであのような事にはならなかったのだろうか・・・そして、西村退役一佐はより一般向けの新書と、専門的な内容のハードカバーを今後も執筆していただきたいと強く願う。
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制服の戦略家としての回顧録であり、タイトルと内容が少し違うか。
地政学的な北海道の重要性とか、冷戦において日本が果たした役割についても述べられている。