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様々にバイアスをもって語られることの多い韓国および朝鮮半島の現代史を、経時的に事実を並べながら解説したもの。論文的に書かれているので、文献など出典、検証をしっかりした中立的な立場で書かれている。「韓国現代史」という書名だが、同時に北朝鮮の変遷も並行して書かれているので、時代ごとの両者の動きや関係性を比較しながら読めるところも本書の利点。確かに、北朝鮮のことを語らずして韓国現代史を語ることはできないだろう。
本書の「現代史」は1945年から始まっている。1945年といえば、日本の植民地下から離れた年であり、そこから現代史が始まるという点で、今日の韓国が形成されるうえで日本は無関係と言ってはならないと思う。
1945年以降の日本の現代史は「戦後」として上り調子一辺倒のものとして語られることが常だけど、朝鮮半島の現代史は、それ以前の過酷さに二重に輪をかけたくらいの試練の連続。米ソの冷戦の場でもあったし、冷戦では治まらず朝鮮動乱も起こった。今でこそGNP10位台の韓国だって世界の最貧国のような時代がずいぶん長かった。さらに朝鮮動乱(朝鮮戦争)は休戦中であり、いまだに「戦後」ですらない。そのような過酷な状況のもと、朴正熙以降の歴代大統領たちは、基本的には韓国の発展を考えていたのではないかと思う。民族的な習いでもあるとは思うが、私腹を肥やすようなことがあったり、また圧政のレベルにまで及んだ時は、民衆・市民が声を上げてきた。茨の道を選びながら経済発展と民主化を韓国は韓国なりのやり方で成し遂げてきたといえる。
韓国の歩みを愚かだとする見方もあるが、「たら・れば」を抜きにし、バイアスをかけずにきちんと読み解けば、その歩みはおおよそ理にかなったものだということがわかる。時代や状況が日本のような幸運な、器用な歩み方を許さなくしていた。そしておそらく、過酷な道を歩んだからこそ、今日の韓国は激動に立ち向かえる力を得ているのだろうと思う。