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吉本の思想については賢しく語られるばかりで、結局何のこっちゃ分からんままに時代に埋没するだろうと思ってきたが、ようやく非常にフェアでクリアにその思想を語る著作に出会った。という意義があるだけで、吉本隆明という代物は矢張りもうちょっと…ダメだろうなという感のみが残る。「懐かしさ」という(ような)ものを抜きにして、「個人」という代物を「自立」の根拠として如何に信じられるのか、という問題なのだろうけれど。
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昭和の思想家として名高い
著作を解説しても仕事の全内容は難しくてよく理解できない
原点のようなものは少し見えた
付録の 三島由紀夫の考えた天皇制と日本国憲法 は参考になった
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「戦後思想の巨人」であり、とくに団塊の世代の人びとに大きな影響を与えた吉本隆明の仕事の意義を、社会学者の橋爪大三郎が解き明かしています。
『擬制の終焉』は、マルクス主義の中でのセクト争いがスターリニズムにつながっていることを指摘したものです。橋爪はこうした吉本の役割を、「無教会派の祭司」ということばで言い表わしています。また、『共同幻想論』と『言語にとって美とはなにか』は、レヴィ=ストロースの構造人類学やソシュールの言語学などの成果と対照しながら、その意義が説明されています。その後の『マス・イメージ論』『ハイ・イメージ論』などで展開されたサブカルチャー批評は、「大衆の原像」に寄り添うことにみずからの立場を定めた吉本による定点観測の試みとして読み解かれており、ロス疑惑やオウム真理教事件、9・11の同時多発テロに際しての吉本の発言を紹介しながら、吉本の真意をさぐろうとしています。
さらに、吉本から大きな影響を受けながら、「言語派社会学」を構築しようとした著者自身の立場から、疎外論的な枠組みを持つ吉本の思想が批判されています。また、『増補版』で追加された部分では、三島由紀夫と吉本隆明における「政治と文学の問題」が論じられています。
「永遠の吉本隆明」というタイトルが示すように、団塊の世代ではない人びとにとって吉本の思想が持つ意義を示そうとする著者の企図が実現されているのか、やや疑問に感じました。また、『「超」戦争論』や『反核異論』についての評価は、まったく理解できないということはないのですが、やはり苦しまぎれの護教的な議論に終始しているような印象を受けてしまいました。