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安楽死と医師会の問題 下巻
2016/01/05 13:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:jhm - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻に入り、当初の安楽死の問題よりも医師会問題に重点が置かれたようになる。
そのため、興味を持ちきれない。
途中にはさまれる白川とは別の安楽死反対派の医師が、苦しむ患者を前に安楽死を決断出来ない状況の描写は、医師ならではの生々しい残酷さで読者を引き込む。
この作品では、多くのひとが死んでいく。殺されたり自殺したり。
安楽死と医師会の問題に巻き込まれ、ひとが実際に死んでしまうことはあるのだろうけれど、警察も余り捜査をしていなかったり、犯人がどういう手口で犯行を行ったのかが重視されていない。
ひとが死んでいるのに、あっさり過ぎてしまうということに、ひとの命を雑に扱っている印象を受け、読んでいて気分が良くない。作者が医師であるから尚更不快になる。
本書における謎の『センセイ』が、結構早い段階で予想がついてしまっていたことも残念な点。
安楽死によって利益を得る人物と考えれば、簡単にある人物に辿り着く。
もうひとひねりあっても良かったのではないかと思う。
誤植なのか文章自体がおかしいのかわからないが、読んでいて首を捻ることが数回あったことも残念。
今まで読んできた久坂部羊さんの作品の中では、最も出来が悪いと言わざるを得ない。
この作品に上下巻というのは、無駄にページを使いすぎ。
それでも、安楽死について考えさせられた。
わたしたちは、いかに生きるかにばかり気が行きがちだが、いかに死ぬかにもっと思いを向けても良いのではないかということを考えさせる一冊だった。
医学が進歩したため、こういった安楽死をはじめ脳死など、ひとの命の終わりが曖昧に複雑になってしまった。
単純でなくなってしまった以上は、それぞれが自分の意見を持ち、家族に伝えておくくらいはしておきたいものだと感じた。
ひとの生き死にを、理由はあっても人間が決めることがそもそも良いことには思えないので、可能なら、安楽死など不要となることが望ましいとは思う。
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なるほどー
そんな落ちか〜
って感じがしました。
上下巻の長編ですが、はらはらワクワクなんであっという間に読めます!!
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医師であり小説家である久坂部羊氏の四作目。
ずいぶん昔、廃用身が単行本で発表された直後に読んで、破裂、無痛を飛ばしてこの作品を読みました。実際の現場を知る人であるからかけるのであろう臨場感溢れる物語は、これは本当に物語なのか?フィクションなのかと疑ってしまうほどの世界観です。
すべて読み終わったあとでプロローグを改めて読むと、黒幕のセンセイはもうこの人だとうたっているようなものにも関わらず、読み終わるまでその正体に気づけませんでした。いやぁすごいなぁ。追って残り二作も購入しようと思います。
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安楽死の是非をめぐる問題が主題。作者が医者であることもあって、専門用語がたくさん使われており、現場の臨場感を感じることができてとっても面白い作品だった。
医者にとっての安楽死や安楽死を望む患者側の視点や家族の視点に加えて、官僚や政治家・製薬会社まで巻き込んだ論争を描いているのが良かった。ただ、安楽死推進派がカルト的な要素を含んでいるところとかに少し偏見をかんじた。推進派・否定派の論拠もありきたりなものに加えて、あまり言われていないような論拠もあり勉強にもなった。
ストーリー的には、自ら望んでないにもかかわらず矢面に立たされた医師が主人公というものであり、とっても楽しめた。真面目なのだが、雪恵と不倫してしまうところなど小説的な要素が含まれていてよかった。ただ、最後のほうに主要人物が殺されていくところはまだしも、最後の「センセイ」の正体が製薬会社のやつだったことには少しがっかりした。厳密には「センセイ」と呼ばれる立場の方々じゃないし・・・。最後に思いっきり私益を追及するものが勝ってしまうという結末は、日本社会の今を反映させているものだろうと思ってしまい、上手な結末だった。
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エピローグを読んだ時のセンセイの印象は偉大な医師だったがプロローグを読み終えたときは死神のように感じた。
後味は悪いが考えさせられる本だった。
今まで考えもしなかった安楽死問題とゆう杭を心の中に打ち込んでくれたことに感謝。
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読了!★★★★★
謎の人物“センセイ”とは?その目的とは?
安楽死法成立に向けて、様々な思惑が入り乱れる中、
着々と“センセイ”のステップは進んでゆく。
皆、利用されているとは露程にも知らず。
苦悩した白川が最後に見つけた答えは果たして・・・
正しいのは誰なのか・・・
とてもショックを受けるテーマであるとともに、ミステリとしても
考えることができる面白い作品だ。
現場のリアルな描写、政治、立法、権力闘争と広く壮大なスケールの中に
ミステリが織り込んでありどんどん読み進めたくなる。
仮にこんな説明はどうだろうかと読んでいる時に思ったことーーー
あなたは肛門に、3時間おきにサバイバルナイフを刺されなければならない。
深く、奥まで。(なぜ肛門なのかは本書を参照して欲しい)
これは現代医学では治せない病気なのでこの前提を覆すことは現状では不可能である。
しかし、全力をもって治療にあたるので死に至る様なことは無い。
輸血、消毒はもちろん、食事ができなくても点滴によって補う。
モルヒネ等の麻薬を使用し、意識を無くしたり、ギリギリの意識にし、
できるだけ苦痛を感じない様にする。
覚醒すれば、痛みと闘わなければならない。
朦朧とした中、あなたの周りでは様々なやり取りがあるが、意思を示すのも困難だ。
あなたはどうして欲しいか?
A 「治る見込みも無く、いつまで苦しんだらよいかわからないこんな状態ならいっそ・・・」
(治療費も莫大だし・・・)
B 「まだやりたいことあるでしょ!?もしかしたら治療法も発見されるかもしれないし頑張って生きて!この人が死にたいと思ってるなんて勝手に決めつけないで!」
(安楽死の名目で殺人を容認してはいけない!)
C医師「このまま治療を続ければ死ぬことは無い。しかし治ることも無い。痛みに苦しみ、死を待つだけの生に何の意味があるのか・・・私にできることはせめて痛みを感じない様に意識を曖昧にすることだけだ・・・」
(治療を続ける限りは医療費が発生する・・・安楽死させたら殺人罪に問われるし・・・無意味な延命治療は面倒だ・・・どうせ助からないのだからやる気も起きない・・・)
D医師「これが医療なのか。人は人らしくあるべきなのではないか。」
(安楽死を必要としている人には適用すべきだ!)
あなた「 」
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安楽死をめぐる医師や政治の話。人や世論や国が動いたのは結局はある人物の欲のためであった結末がなんともリアルかも。
とは言え、もう少しこの本は話題になっても良いのではないか…。
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長編です。途中冗漫と感じるところもありましたが、安楽死の是非を巡っての政界、医師会、製薬会社、マスコミの魑魅魍魎入り乱れ。
現実の問題として読者に安楽死、又死というものをエンターテイメントでありながら考えさせる良書と思います。
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上下巻まとめて。
医療の進歩と生命倫理というものは、必ずどこかのラインでせめぎ合う、背反する価値観のようなものだが、その葛藤を象徴する最たる具体例ともいえる、"安楽死"をテーマに据えた本書は、まさしく普遍性を持って老若男女遍く人々に訴えかけ得る。
老人の終末期においては容易に想像がつくが、実は患者が若くても、その若さゆえに安楽死が求められる状況がある、という説明に関しては驚いたし、医療従事者にしか書けない描写の一端として強く印象に残った。
小説技巧としては、神業のように卓越している、というわけではないけれど、一本調子ながら、根っこのストーリーが充分に面白いので、グイグイと先を読ませる。
"センセイ"の正体を始め、ミステリーとしてもちゃんと成立していると思う。
ただ、ちょっといろいろな要素を詰め込み過ぎていた嫌いはあったかもしれない。
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上巻はかなり惹き込まれて読んだのですが、下巻は上巻でちりばめられたいろんな要素の畳み方がちょっと雑に感じられてしまい、残念。
まずはJAMA。様々な知謀を巡らせて国内医療の覇権を握ったと思ったら、代表の新見はおかしくなっちゃうし、その後不自然なほどバタバタと人が死んでいくし…
そして阻止連。結局無能な集団のまま消滅。唯一まともだった東氏は新見の手でアッサリと離脱。古林康代もサックリ死亡。
これだけ関係者が不審死してたらだれがどう見ても超怪しんで、わずかでも関係している人たちに捜査の目を向ける思うんだけど。
で、話の黒幕「センセイ」の正体のガッカリ感といったら…正直、何の驚きも無かったし、この程度のヤツが黒幕かーという残念感しかありませんでした。
もっとも最後、各組織がグダグダになるところや、不審死が相次ぐことの影響とかまで考えが至らないのは、「センセイ」があの程度の人だからかなー、と変なところで納得。
ヘビーで関心が強かった題材なだけに、良い出来であってほしいという期待感が大きすぎたのかもしれません。(同著者の「無痛」が個人的にヒットだったのも、その期待感に繋がってたと思います。)
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『神の手』(久坂部羊)読み終わった!
まず医療崩壊という関心がなかったテーマなのに読ませられる。次に安楽死の是非を双方の立場から論ずるから、自分でもどちらが正しいのか考えさせられる。そういう核心部と別に、主人公の友人、山名が団体内の地位争いに骨肉する図は滑稽だが面白いし、なにより展開が気になってあっという間に読めてしまう。JAMAが宗教じみてくるあたり、強い信念持つ危うさが伝わってきた。
ただ、後半JAMAがなんでもやるようになり現実味が薄れたことと、結末に少し納得がいかなかった。伏線とか張ってあった?エピローグの一言で一応の理由づけはあるんだろうけど。
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2015/10/29-2016/05/16
人の命は地球より重いが、それが事実なら地球は潰れている。安楽死は究極の医療である。
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下巻に入り、当初の安楽死の問題よりも医師会問題に重点が置かれたようになる。
そのため、興味を持ちきれない。
途中にはさまれる白川とは別の安楽死反対派の医師が、苦しむ患者を前に安楽死を決断出来ない状況の描写は、医師ならではの生々しい残酷さで読者を引き込む。
この作品では、多くのひとが死んでいく。殺されたり自殺したり。
安楽死と医師会の問題に巻き込まれ、ひとが実際に死んでしまうことはあるのだろうけれど、警察も余り捜査をしていなかったり、犯人がどういう手口で犯行を行ったのかが重視されていない。
ひとが死んでいるのに、あっさり過ぎてしまうということに、ひとの命を雑に扱っている印象を受け、読んでいて気分が良くない。作者が医師であるから尚更不快になる。
本書における謎の『センセイ』が、結構早い段階で予想がついてしまっていたことも残念な点。
安楽死によって利益を得る人物と考えれば、簡単にある人物に辿り着く。
もうひとひねりあっても良かったのではないかと思う。
誤植なのか文章自体がおかしいのかわからないが、読んでいて首を捻ることが数回あったことも残念。
今まで読んできた久坂部羊さんの作品の中では、最も出来が悪いと言わざるを得ない。
この作品に上下巻というのは、無駄にページを使いすぎ。
それでも、安楽死について考えさせられた。
わたしたちは、いかに生きるかにばかり気が行きがちだが、いかに死ぬかにもっと思いを向けても良いのではないかということを考えさせる一冊だった。
医学が進歩したため、こういった安楽死をはじめ脳死など、ひとの命の終わりが曖昧に複雑になってしまった。
単純でなくなってしまった以上は、それぞれが自分の意見を持ち、家族に伝えておくくらいはしておきたいものだと感じた。
ひとの生き死にを、理由はあっても人間が決めることがそもそも良いことには思えないので、可能なら、安楽死など不要となることが望ましいとは思う。
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安楽死と現在の日本の医療に問題提起する社会派サスペンス。患者を安楽死をさせてしまった医師の苦悩と、それを取り巻く安楽死推進派と反対派の攻防、政府も巻き込み、安楽死法、医療業界再編に話は及ぶ。
医師の仕事が多義に渡るようになったり、リスクの高い科が避けられ、医師不足の背景など今の医療問題が見えて学びになる。色々な思惑が絡み、安楽死させた医師が苦悩し話が進様も読んでいて興味深い。
この本を読み、反対派の意見も理解した上でもやはり、私もそういう風になれば死の選択が欲しいと思う。
【引用】
私自身、親を安楽死させる事ほど親不孝は無いと思いましたが、でも実際によってケルヒムで最後を迎えた母を見て、ああ、これは親孝行な事だと思いました。そ
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敵対する医師会を解散させ勢力を拡大する医師組織JAMAと後ろ楯大物政治家・佐渡原。両者の思惑どおり安楽死法は制定に向かって邁進した。が、やがて発覚するJAMA内部抗争と代表・新見のスキャンダル。次々に抹殺される、核心に近づく者たち。そして発表された安楽死専用薬ケルビム。すべてを操る“センセイ”の正体とは?戦慄の真実。