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完全版が出ているみたいですが、私が手に入れたのは昭和58年版の方だったので、こちらで書かせてもらいます。
この本で一番印象に残ってるのは家庭教師一行との会話です。
「もうじきサウザンクロスです。おりる支度をしてください」
「僕、も少し汽車に乗ってるんだよ」
「ここでおりなけぁいけないのです」
「厭だい!僕もう少し汽車に乗ってからいくんだい!」
と、家庭教師と男の子が言いあっているのをみて、ジョバンニ。
「僕たちと一緒にいこう。僕たちどこまでだって行ける切符持ってるんだ」
女の子が言う。
「だけどあたしたち、もうここで降りなけぁいけないのよ。ここ、天上へ行くとこなんだから」
「天上なんかいかなくたっていいじゃないか!僕たちここで天上よりももっといいところをこさなけぁいけないって僕の先生が云ったよ」
そうジョバンニが言い返しても、女の子は、
「だっておっ母さんも行ってらっしゃるし、それに神さまが仰るんだわ」
「そんな神様うその神様だい!」
「あなたの神さま、嘘の神さまよ」
「そうじゃないよ」
家庭教師が尋ねる。「あなたの神さまって、どんな神さまですか?」
ジョバンニは考えつつ、こう答える。
「ぼくほんとうは良く知りません。けれでもそんなんでなしにほんとうの、たった一人の神さまです」
「ほんとうの神さまはもちろんたった一人です」
「ああそんなんでなしにたった一人の本当の神さまです」
「だからそうじゃありませんか。わたくしはあなたがたがいまにその本当の神さまの前にわたくしたちとお会いになることを祈ります」
と家庭教師は結んで、この一連の会話は終わる。
ジョバンニの言ってる、「たった一人の本当の神さま」というのは既存の宗教に関係なく、誰もかれも心のどこかで頼るものだと思います。
大ピンチのときに漫画でもよく使われる、
「ああ神さま仏さま!誰でもいいからどうかお願いします!」
という台詞がよく現れてると思います。
要は、そういう風に最後に心で信じているのがジョバンニの言う「たった一人の本当の神さま」なんだろうな。
このシーンはそんな信仰心をズバリ表されたような気がして、ドキッとしました。
またこの漫画を描くのに猫をモチーフにもってきたのも、どこか異世界な雰囲気に一役買っていていいです。
このおかげであの映画が生まれたんだものね。