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岡本綺堂の探偵小説全集、全2冊の1冊目。
編者の解説によると大部分は本になっていなかった作品らしい。
ここに集められたのは広義の探偵物とのこと。
正当派の謎解きばかりではなく、怪談が混じる。
半七捕物帳など他で読める有名どころは入ってない。
編者は、今までなかなか読めなかったものが入手しやすくなるのは資料的にも価値があるんだよと力説する。
でも廃れるには廃れる理由があるケースも多いんじゃないかな。
解説は参考にはなるが編者の見方は独りよがりな印象だ。
文章やつくりを見るのが面白い。
翻案ものは当時の読者の読みやすさを考えて日本名にしてあるから、英国紳士といわれても名前に引きずられて日本人を思い浮かべてしまう。
当時の読みやすさと今の読みやすさのズレが興味深い。
長い話(連載小説?)は次から次へと話が移り変わって結局なにが主題だったのかよくわからない。
そういうまとまりの無さを見るのは面白いが話としてはどうなんだろう。
翻案?の差別的なものは読むのが辛かった。
差別語のみならいざ知らず、展開がしんどい。
特に【魔女の恋】の後半は白人視点の「おそろしい黒人」とその対処が、ジェノサイドの成立過程そのもので怖かった。
被虐待者の反発を恐れる虐待者は、被虐待者を暴虐の徒と見なす。
でも「原作は”国民の創生”ですか?」ってなストーリーの中でも黒人やジプシーが人間にみえて、しかも善の側にいるはずの白人の非が見えるのはさすが綺堂。
筋としては「おそろしい蛮人に危ない目にあわされる白人」だけど、その「蛮人」や「魔女」がどんな目に遭わされてどんな気持ちでその行動に出たのかが描かれる。
筋は変わらないから読む人によって受け止め方が代わってしまいそうなのは怖いけど。
【魔女の恋】
→「毒の園」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4003264126
【片腕】が切ない。