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いきなり序文が名作です。必死で隠すわけではないけれど、できれば人には見せたくない、時折取り出してはこっそり楽しむコレクション。それを表に出すのはさぞかし勇気と勢いが必要だったことでしょう。
正直なところ、収められた短編のうち理解できたのは2作品だけ。「件」の悲しみもいまいちピンとこなくて、目の前に小川氏がいたとしたら微妙な空気が流れていたでしょう。けれどどの作品も、この人にとって大切なコレクションで、それを打ち明けてくれたのだと思うと無碍に突き放す気になれない。信頼されたようでちょっと嬉しくて、少しは理解できないかと努力したくなる。人間同士の距離の詰め方というのは、こういうものではないかと思います。
各短編に寄せられた解説は、自分とは異なる視点の面白さを感じられました。解説を読んでから短編を読み返すと、全く新しい景色が見えてくるかもしれません。