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私たちが想像のできないほど悲惨で不条理な死と、奇蹟的に死を免れた人達の話に、人間の持つ残酷さと強靭さを感じた。また、中国の国共内戦のことがとても知りたくなった。
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戦争がいかに人々の人生を変えてしまったかを多くの人の視点から様々に語られています。どの国や軍が悪いかということではなくです。一読の価値は大いにあります。
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中台の歴史関連書は少なく、当時の人々の声を直接知ることができる貴重な本だと思います。新たに知ることもが多く、考えさせられました。しかし、日中戦争の著者の見解には首をかしげることもままあったので、星三つです。
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1949年。国共内戦が「終結」したその年を一つの軸に、戦場で、荒野で、海で、歴史に翻弄されていった「民」の話。毎日すれ違う人々に、電車で乗り合わせた人々に、それぞれの暮らしがあって、それぞれの大事な人がいたように、それぞれの1949を追う。あまりに辛くて、救いのない、けれど読むのをやめられない。
兵役により、まもなく入営しなければならない19歳の息子に向かって母が歴史を語る形式。その9割は歴史の話だが、時折挟まれる母から息子へのメッセージがせめてもの救い。
著者は文学であると断言する。あまりに重い、しかし忘れてはならない、かつて本当にあった人々の話。凄まじい、文学でした。
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ドキュメンタリーなんだろうけど、作者が書いているとおりこれは小説という感じ。事実を基に、時系列をぶった切って、カテゴリーごとに再構築しているという印象が強いから。
読む前は淡々と事実が述べられるものかと思っていたが、かなりドラマチック、ごく身近な自然や仕草についての繊細な描写があったかと思うと、凄惨、辛辣な描写が出現する。
あまり関連はないけど、この本を読んでいたら「命は安く、トイレットペーパーは高い」というウェイン・ワンの映画を思い出した。なんだろ、まるでクジラに飲まれるオキアミのごとく大海の中のプランクトンのように扱われる人たち、取替えは効かないはずなのにいとも簡単にこの世から消えてしまった人たち。人「たち」、と複数形にしなければならないことがどういう意味を持つのか考えさせられてしまった。
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著者は「本書は文学」であるという。そして、「文学だけが、花や果物、線香やろうそくと同じように、痛みに苦しむ魂に触れることが出来る」のだ、とも言う。しかし、僕はこれだけ様々な苦しみを現実のものとして著している「文学」を知らない。
本を読むことの一番の面白みは、知らないことを知り、自分なりに考える土台とし、自分の知識を系統立てて整理し、自分の考えを組み立てる礎とすることだ。だから、知らない事実を知らせてくれる本に出会うのは楽しい。この本を読んで、改めて自分が、そして多くの日本人が、そして多分多くの台湾人、多くの香港人、多くの中国人が、1945年8月15日以降に東アジアで起こっていたことについて、余りにも知らなすぎることに愕然とした。決して楽しい話じゃ無い。けれど、今この東アジアで起きていることへ結びつく全ての流れの中で、1945年からの4年間が欠落している事実は、人々を大きくミスリードすることになる、そう思った。
僕は著者がこの本で著していることに全て同意はしない。著者龍應台は台湾文壇の大家で、戦争直後に高雄で産まれた外省人で有り、本人が思うほどその呪縛からは逃れられていないと思う。そこかしこに散らばるセンチメンタリズムや、若干の事実誤認は、日本人ばかりでは無く、少なくとも僕の知り合いの多くの本省人も同意しがたい部分もあるだろう。この本をHonzで紹介していた麻木久仁子みたいなぬるい評論はやめておこう。それでも、この本が報せてくれる、少なくとも僕の知らなかった事実は衝撃的で有り、それがたとえ国と国の戦争であろうが、内戦であろうが、戦争の犠牲になった者に区別の無いことを知ることになる。そして、あの数年間、ちょっとした運命のいたずらが、家族を、友人を引き裂き、60年経った今も問題の根底に転がっていることを。
本書は2009年に台湾で発表され、原題を「大江大海一九四九」と言う。1949年、それは蒋介石率いる国民党軍が壊滅し、台湾へ敗走、その年の10月に、中華人民共和国が成立した年である。日中戦争に匹敵する犠牲者を出したこの国共内戦について、まともに知ってる日本人は殆どいないのでは無いだろうか。1945年8月15日は、日本人にとってはある種終わった日だった。しかし、東アジアにとっては、それは今をもつづく苦しみの通過点に過ぎなかったのだ、と言うことを、この本によって知った。
2010年代の東アジアを、そこだけ切り抜いて見てはいけない。歴史は綿々と続くもの。たとえ今の世代の人間が過去に責任を負うことが不可能であるとしても、少なくとも知らなければならないことはある。そういう意味では、全ての東アジア人が、一度は読むべき本である。そして名作でもある、なにしろ、「中国大陸で発禁処分」という、「現代におけるある種の文学賞」の受賞作品なのだから。
蛇足だが、この夏読んだ本ベスト3は、全て中国大陸発禁本ばかりだな。(苦笑)
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ドイツの"被害"が心に刺さった。
アウシュヴィッツに代表されるドイツの大戦中の所業はもちろん許されるものではない。しかし、ドイツが受けた"被害"は語ってはいけないのだろうか。敗戦国は永遠に加害者で在り続けるのだろうか。
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読了。学校で習わなかった歴史がここにもあった。大きな渦に巻き込まれていく弱き者たち、わたしたち。振り返れば壮絶な人生をみな歩んできている。いまいちど、先達に学べ…。
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「タマネギの皮を剝けば、あらゆる神話は消えてしまう」
ある雑誌で、著者がインタビューに答えて。
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文句なしの★5つで自信をもってお勧めできる傑作である。
表題の年に、筆者の両親は国民党の台湾脱出に伴って故郷を離れた。家族のことから国共内戦の話しを始め、いまや台湾政官トップの人から学者、友人、文献に載っていた人など、あらゆる人に取材し、当時の状況を明らかにする。生活圏と戦場が重なり、感覚が麻痺するくらい死は至るところにあり、残虐で非情でこれでもかというほど地獄と理不尽にあふれている。中国は、満州事変から毛沢東の大躍進までこれが続いたのだ。第二次大戦は1945年に終わったのに。
日本兵だったので戦犯になった台湾人、国共内戦で中国本土で戦うも共産党側になってしまった台湾人、ほんの僅かな違いで立場は全く違ってしまう。
どこにいようが、どこに所属しようが、勝者敗者や正義不正義にかかわらず、時代に踏みにじられた人々は兄弟姉妹だという筆者の気持ちは、この本を読んだ後ではよく分かる。
本書はノンフィクションとはいえ、対談ありエッセイありで、いろいろな文体や表現方法を駆使していてとても読みやすい。台湾では大ベストセラーだという。そうであろう。日本でももっともっと読まれてほしい本である。
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抗日戦争の後に、さらにこんなに凄まじい日々が続いていたとは。いままたここまでのプレゼンスを取り戻していることを考えると、改めてこの国の底力に唖然とさせられる
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戦争の残酷さは想像するしかありませんが、この本を読んで戦争というのはこんなに人の命が軽く扱われるのかと衝撃を受けました。
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この本との出会いは、2012年高雄に出張した時だった。百貨店の本棚の歴史コーナーで見つけた。内容には興味を持ったが、分厚く、荷物を増やしたくなかったので、買わずにおいた。今思えば、それは邦訳が出てまだ間もなかった頃だ。2013年、近所の本屋で偶然再会した。縁を感じ、即座に購入した。しかし、戦時混乱の描写は、時にむごたらしく、時にやるせなく、なかなか読み進められないでいた。
しかし、昨日、たまたまできた時間に読み始めたところ、時が経つのも忘れ、一気に読了することができた。読み終われば、なぜこれほど時間がかかったのだろうと、悔いた。それほどまでに、自分にとって、この本は読むべき本だった。
来年で、終戦70年を迎える。この歳月は長いと感じるかもしれないが、戦争の記憶はまだまだ生々しい。戦争は、人々が持つ、価値観を崩壊させ、狂人にたらしめる。誰が家族と離散したいと思うか。誰が故郷を捨てたいと思うか。誰が人を殺したいと思うか。誰が人から不条理に殺されたいと思うか。
この本は非常に価値のある本だ。登場する人物は、次々に入れ替わっていくが、それぞれに歴史と物語がある。そして、刊行された2009年は、生きていても80代後半、一人の一生の時間に該当する。
歴史の持つ深さ、重みをリアルに理解するためには、本著がこのタイミングで出たことに、貴重な出会いを感じる。そして、我々はここから何を学び、次の歴史という舞台に立っていくべきなのか。
歴史は、時間が経つとともに、失われ、そして繰り返されていくものがあるのだと思う。学校で習うのは、政治史や経済史などが中心だ。しかし、一人一人の人間が生きた証が、歴史なのだと本著は教えてくれた。
著者曰く、”皆が自分で考え、自分の場所を見据え、何が本当の価値なのか見極められるなら、この世界も少しは変わっていくだろうか”。19歳の息子に著者が宛てた言葉である。
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『私には想像力がなさすぎた』読み始め早々にかんじた。読み進めるうちに何度も同じことを思った。歴史的史実として国民党が台湾に撤退(あってる?)したことは知っていたが、私が知っていたのはそれだけ。その背景にはこんな物語があったんだ。あちらに行くひとにも、こちらに行くひとにも、また別の道を行くひとにも。まったく想像がつかなかった。作者はどの立場の人を責めるでもなく言葉をつむぐ。淡々としているところが私には恐ろしくかんじた。
作者が女性ということに驚いた。また女性だから書けたのかな?と思うところもあり。子を持つ母の強さを感じた。きっと素敵な女性に違いない。ほかの著書も読んでみたい。
泣きながらあとがきを読んだけど、知らないことって罪だと感じた。まずは自分の身の回りから興味をもち、知ることをおそれず対峙したい。誠実にね。
通勤時間など、こまぎれにちょこちょこ読んでしまったので次回は一気読みしたい。
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一つ一つの話がかなりの重みを持っているが、まとまりがないというのか、突然馬英久や李登輝が出てくる感じ。。。太平洋戦争終了後もこんなに人がたくさん死んだなんて。日本軍はもちろん共産党の暴力も伝えてくれる本。南京虐殺は正確な事実が日中間ではっきりしていないが、こういった共産党の負の側面も明らかにしてくれないと中国の言い分は信用できない。
混沌とした戦争状態では個人は誰が加害者、被害者になるかわからない。戦争状態にならないように努力する政治姿勢がいかに大切か考えさせられた。