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米国に留学している1980年の「私」に、作家をしている2009年の「私」が語りかける。不意に視点が行き来する、時空を超えた対話を軸にしながら、留学先の高校でのディベートの授業を迎える。テーマは「天皇の戦争責任」。
母、死したヘラジカ、ベトナムのシャム双生児、そして大君が語る言葉を浴びつつ、一度は敗れた過去のディベートに決着をつける。
タブーともいえるこのテーマに踏み込み、胸がすく「言葉」を語り得る著者の筆力は凄まじい。折口信夫アニミズムっぽい天皇論はなんとなく曖昧に終わっちゃっても、「私」の物語は完結し得ている。
ドキドキハラハラするような場面はないのに、読んでる間ずっと心臓はバクバクしてました。久々に小説を「読んだ」気分です。
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219ページで一旦図書館に返却。
癖の強い内容で、私には読みにくい。現実と夢-妄想-が交錯する、不安定で少し不快な、独特な世界。統合失調症の人には幻聴や幻覚があると、どこかで読んだことがあるが、そういう人のいる世界とはこんな感じなのではないかと思った。頭の中に不協和音が響くような、辛い世界。
東京裁判の話だと思っていたけれど、半分くらい読んだ時点では、東京裁判は殆ど出てこず、著者と重なる主人公の、母や「過去の自分」からの自立がテーマのようだと感じた。
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日本の中高生が天皇の戦争責任について
こんなに考える事があるだろうか。
アメリカの中高生についても
こんなにこんなに考えているとは想像もつかない。
日本が戦後史に蓋をして来た結果だろうか。
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16才のアメリカ留学してる少女が時空を越えて様々な事を経験思考するお話。始めはちょっと戸惑うが中盤からは物語に入り込め、終盤のディベートはもう興奮。天皇の戦争責任や日本とアメリカや神とか脳をフル回転して読了。さて、自分はと考えさせられた。
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タイトルから想像していたのとは全く内容が違いました。
マリと一緒に混乱したり、途方に暮れたり、なかなか読み進まなかった。
多分、同じ時代を共有しているからかも。
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1964年生まれのマリが16才でアメリカに留学した時の物語。マリは授業で天皇の戦争責任についてディベートをさせられます。しかも天皇の戦争責任を追求する側。アメリカに行って日本のことを知る、マリと一緒に勉強させられました。面白かったです。この時代のアメリカならキラキラした夢と希望のストーリーかと思ったのですが、アメリカの暗い部分と戦争が残した傷跡が延々と語られ、日本人の無意識を執拗にアメリカ人から攻撃されます。
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えっとですね、この本を読むのに1週間以上かかりました
途中、ちょっと風邪気味で、読むペースも遅かったのもありますが
とにかく、この小説の世界に入るのが難しかった
最初はファンタジーなの?なんなの?と戸惑ってばかり
内容は,興味深いものなんだけれでも、
やっと慣れて来たと思うと、舞台が今と昔に行ったり来たり
頭の中の不思議な生き物というか人?が現れて来たりで
最後まで読まずにはいられなかったけれども、なんだかつらかったです
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主人公の切迫した息遣いがダイレクトに伝わって来る
15歳でなぜかアメリカの中学校に入れられた少女の苦悩、果てしなき自問自答と襲いかかる過去の亡霊と幻影の数々、16歳で卒業試験に課せられた模擬ディベートの異常な体験、天皇の戦争責任と日本の戦後史について総括、などなど著者その人の自分史と実体験を生々しく想起させる主人公の切迫した息遣いがダイレクトに伝わって来る1冊である。
天皇の戦争責任のありやなしや、をテーマとするかつての敵国でのディベートに余儀なく臨んだ主人公が、「東京裁判」のやりなおしを命じられた生贄のような立場に立たされて四苦八苦する場面がこの作品のハイライトであるが、解答不能の難問にそれでも答え続けていく中で、私たち日本人がおのれの本性と来歴を問わずに現在まで呆然と生きてきた異常さが明るみに出されるのである。
小説という形式の中にあまりにも言わんとする多くの要素を持ち込んだために、時として進路が混沌とし、主人公も著者もその場に佇んではまた力を振り絞って歩き始めるのだが、多少の未熟さを併せ持ちながらも必死に生きようとする「彼ら」に思わず「大丈夫だからね」と声を掛けたくもなるのである。
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妄想のところはわかりづらかったが、少なからず日本人としてのアイデンティティを揺さぶられる。
帯にもあるように、外国語に翻訳して世に問うてもいいのではという作品だった。
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どんな内容なのか知らないまま図書館で借りたので、アッチの世界へ行ったり、コッチに戻ったり、の話に面食らいました。
青息吐息で読み終えた感じ。
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同世代の著者として、これまでの作品を追っかけてきた…
そのためか、本書も、感覚的にうなずきながら読んだ。
これは…アメリカに留学した少女が、
「東京裁判」をめぐるディベートをするという物語。
―なぜこんな大きな国と無謀にも戦ったかは、まだいい。
日本人がなぜ、昨日まで敵であったアメリカをこんなにも
ころっと愛したかだ。それは論理で説明できない。
しかし、ディベートは論理を競わせること…否応なく、
主人公は論理的思考をめぐらせ…そして、破綻してゆく…
実は、そのことこそ、本書が小説でなくてはならないことだろうし、
さらには、戦後日本が抱え込んだ破綻なのだろう。
本書は、東日本大震災以降にまとめられたもの…
広島、長崎の原爆を受けながら、福島原発の事故を招いた、
日本という国、日本人ということ…を、一人ひとりが、
真摯に受け止め、立ち返っておくことは不可欠と思う。
物語の主人公は、天皇の戦争責任を肯定する側となるが、
ディベートが進むほど、劣勢に追いやられる…いや、
破綻してゆくのだ…しかし、肯定否定を離れ、
見えてきたものがあった…最後の言葉は、あまりに重い…
―どう負けるかは自分たちで定義したいのです。
それをしなかったことこそが、私たちの本当の負けでした。
もちろん、私の同胞が犯した過ちはあります。
けれど、それと、他人の罪は別のことです。
自分たちの過ちを見たくないあまりに、他人の過ちにまで
目をつぶってしまったことこそ、私たちの負けだったと、
今は思います。
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主題は◎なのに、非現実なお話が必要?少女の挫折・母親との関係って別の話では?抽象的な表現の意味が?というのが感想で、読みづらかった。でも、心に引っかかった部分を引用してたら、作者の言いたかったことに少しだけ触れられたような。普段、読書はエンターテイメントであればよい私だけど、いつかもう一度読んで、重い主題に向き合ってみたい。
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1980年、母親の命令で望まないアメリカ留学をした16歳のマリ。彼女は進級試験として「第二次世界大戦における天皇の戦争責任」について調べるよう教師から命じられます。2000年代の日本に生きる40代の自分や、森で撃ち殺したシカ、ベトナム戦争の影響で奇形児として産まれた少年・・・。彼らと不思議な交流をしながらマリはあの戦争について考えていきます。
ファンタジーというか夢と現実がゴチャゴチャになっていて、決して読みやすいとは言えない話。難しい。
でも「戦争犯罪人のA、B、Cは罪の種類であって重さではない」とか「なぜ敗戦記念日ではなく終戦記念日なのか?」など考えさせられるポイントがいくつかあった。
実際の東京裁判は「天皇の戦争責任は問わない」という前提で進められた。そのことは戦後の日本の国づくりに少なからず影響を与えたと言えるのだろうか。示唆にとんだ作品だったと思う。
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図書館で予約したら百人待ちくらいだったので、順番が回ってくる頃には何でこの小説を読もうと思ったのかは、忘れてしまった。誰かが褒めていたからかもしれない。
どうにもぼんやりした印象。大きすぎるテーマを消化しきれていない気がする。過去と現在との対比、母と娘と対比、現実と幻想の対比…。たとえ赤坂真理とマリ・アカサカが同一人物だったとしても、ポンとアメリカの片田舎に放り出された十五歳の主人公に東京裁判を追体験させる、というのは無理があったのではないか。主人公の設定年齢と語り手の認識力とに差がありすぎるのがどうも気になって仕方がなかった。これは一人称小説の最大の問題だ。
それに、2011年3月11日も、取ってつけた感じ。連載中にそれが起きたから入れてみました、みたいな。
作者の天皇と日本人観など、ハッとさせられる非常に興味深い記述がところどころにある。例えば「天皇に対する歴史上の日本人の態度には、どこか不思議なものがある。たてまつりながら利用する。最高権威をあたえながら実権は与えていない。しかし、最後の最後に彼に向ってひれ伏す。などなど。(中略)だとしたら天皇は、本質的にパペットということにならないか。」(p.266)
また、三島由紀夫の『英霊の聲』を論じたあたりとか。「この混乱(注:天皇を髪じゃないと知って騙され、結果的に裏切られ、恨むこと)は、日本人に今でも広く持たれ、私自身をもいまだに困らせる混乱であると感じたのだ。誰もあえて言葉にしようとしなくなっただけ、より厄介だった。(中略)しかし、答えのなさに誰かが正面から立ち向かわなければ、次は因果がまったくわからない者たちに空虚さが継がれていく。」(p.387)
時の権力者が、なぜ天皇家を滅ぼして自分自身が最高権威者とならず、天皇家の権威を利用してきたのか、というのは今でも僕の中でもまた、大いなる疑問である。あの、織田信長でさえ、朝廷を滅ぼそうとはしなかった。
すとん、と腑に落ちる答えは、まだ見つからない。
そんなわけで、これから何冊か、日本人と国家を描いた小説をいくつか読む予定。
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読み応えあり。そしてしっかり純文学していた。
しかし、時間も交錯するし、私と母の現実と想像もまた交錯するので、慣れていないと読みずらいかも。
戦後の対米かんけいや感情など、私が日頃より思ってるとおり!が書かれていて、さらに知らない事も書きこまれていて、皆読めばいいのに‼と思った。