投稿元:
レビューを見る
創造の世界を開くのは、自分たちの思い(暗黙知)を言葉(形式知)にし、言葉を形(実践)していくダイナミックなプロセスである
リーダーシップの検討 現場感覚、大局観、判断力
実践知を形成するための基盤の一つは経験である。とりわけ重要なのは修羅場経験、そして成功と失敗の経験だ。文脈は常に動いている。この文脈においては、この選択肢が最適だというジャストライトな判断をするためには、論理を超えた多様な経験が欠かせない
教養も重要な要素 哲学、歴史、文学
日本は零戦、大和、武蔵といった既存の兵器体系の精緻化には努めたが、それを組み合わせてどう戦うかという発想を生み出せなかった
アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド イギリスの哲学者 世界とは連関したプロセスそのものであり、常に動き続けるイベントの連続体であるととらえた。目を向けるべきはモノではなく、コトeventの生成消滅するプロセスにある。
人間は万物についての真実を知ることはできない。組織にとって都合の悪い真実は頬かむりしたくなるのが人間だが、それでは新たな知は生まれない。あらゆる場面でなぜを5回繰り返すトヨタのように、絶対の真実があると信じて、何度も執拗に問を発し、試行錯誤を続けられる組織が最後には勝つ。
アリストテレス 知を5つに分類 直感的に原理を把握するヌース知性、真理を見極めるソフィア智慧、客観的知識としてのエピステーメ、物を作り出す実践的知識としてのテクネ、そして豊かな思慮分別を持ち、一刻ごとに変わるその都度の文脈に応じた最適な判断や行為を行うことことを可能にする実践的知恵としてのフロネシス
フロネシスをもつリーダー
善い目的を作る能力 場をタイムリーにつくる能力 ありのままの現実を直感する能力 直感の本質を概念化する能力 概念を実現する政治力 実践知を組織化する能力
本田宗一郎 口癖 試す人になろう
人生は見たり、聞いたり、試したりの3つの知恵でまとまっているが、多くの人は見たり聞いたりばかりで、一番重要な試したりをほとんどしない。ありふれたことだが失敗と成功は裏腹になっている。みんな失敗を恐れるから成功のチャンスも少ない。やってみもせんで
クラウゼビッツ 戦争論
研究と観察、理論と経験は、相互に決して排除しあってなならない
投稿元:
レビューを見る
・実践知を持つリーダーの特性を3つにまとめると:
①現場感覚、②大局観、③判断力である。
・自身の立てた作戦でも、判断力によって否定しなければならなくなることもある(インパール作戦ではそれができなかった)。
・判断力の乏しいリーダーの最大の問題は、スピード感に欠けること。
・実践知を醸成するためには;
①経験、②良い手本に倣う、③教養。
→現在のビジネスでは、タスクフォースを組織するなど、新規の社内横断的な組織を立ち上げることによってこのようなことができる。
・蒋介石が軟禁されたが後に釈放された事件の背後には、中国共産軍と国民軍を統合させて抗日させ、それによりソ連に対する日本軍の脅威をそぐスターリンの戦略があった。が、そのような戦略性があったことを当時の日本当局は毛ほども気づかなかった。
・教養:チャーチルはバトル・オブ・ブリテンの際、ドイツのイギリス侵攻について側近に語り続けたが、それは目前のものではなく、900年前のノルマン人によるイングランド侵攻についての話だった。
・現場感覚:現場が大事といっても、現場からレポーターよろしくリポートするだけではだめ。そこに見えない本質を見出すように。モノではなくコトを見出す大局観がここで活かされる。
・イスラエルは戦史を記録する部門とそこから教訓を引き出す部門が分離されている。そして戦史室の長にはかなりの権限が与えられ、正確な情報を残せるようになっている。
・ニミッツは、武器の性能が十分理解されずに使用されてしまった稀有な例は、日本軍の潜水艦であると、喝破した。
・トップの科学技術に対する理解のなさが、日本敗北の原因と言える。
・ハンチントンは、軍人はプロ化するほど政治化しなくなると唱えているが、ファイナ―は逆のことを述べている。前者は、よって日本軍人はプロではなかったと結論しているが、そうではない。
・組織いじりではなく、組織を動かす人材そのものの育成と適正配置が、セクショナリズムを正し部門横断的解決をもたらすものとなる。
・米兵にとって、神への祈りは戦場においてとても役立ったと回答している。下士官の70パーセント、将校の62パーセントがそう答えた。
・日本軍は、表面的には、恐怖心はない、とする。しかしアメリカ軍は、恐怖心の存在を認めた上で、それをコントロールする術を学ぶ。そこにも大きな違いがある。
★やはり日本人は体裁を繕うからか、あるのに、ない、ということが多い。そこに問題の根源がありそうだ。
・周囲の兵士や指揮官からの励ましや支援などのソーシャル・サポートが、戦闘ストレス反応の抑制と密接にかかわっていることがよく知られている。
★これは仲間に対する気遣いがいかに大切かを教えてくれる。
・アメリカ陸軍のCOIN作戦に関する教範には、敵せん滅よりも住民を味方につけることを優先することとなっている。改訂の中心であったペトレイアス将軍は、「君は今日、イラク人のために何をしたか」がイラク駐留中の口癖だった。
★自分も「自分は今日、他の人のために何をしたか」と問いたい。
・本書は、組織内にはびこる「空気」について、取引コスト論から論理的に取り組んでいる点で興味深かった。
・本書は、派閥の功罪についても、取引コスト論から論じている点が興味深い。派閥は、おもての権力(法などで規律されるもの)と裏の権力(実際牛耳っている力)の齟齬が固有の問題となる。完全な民主主義も、完全な独裁も効率的ではなく、その中間形態が派閥と言える。
・ウェーバーは、社会学においては、事実問題と価値問題を峻別して事実問題に集中すべし、としたが、ポパーは、かちもん代でも論理整合性を基準にして議論することができるとした。いずれにせよ、価値問題と事実問題を峻別することが大切だ。
・野中氏に言わせると、「失敗の本質」はよりより未来を作るためのフィクションに近い。
・米軍の信賞必罰は徹底していて、ハズバンド・キンメルはルーズベルトの大のお気に入りだったが、真珠湾攻撃の責任を取らされて予備役少将に格下げ、息子も潜水艦勤務から陸上へ移った。議会が名誉回復を決議したのに、クリントンもブッシュも署名をしなかった。
投稿元:
レビューを見る
戦艦大和の特攻作戦に至った経緯分析に納得。
なかなか面白かったので、組織論的研究の方も読んでみようかな。
投稿元:
レビューを見る
失敗をだだの失敗として終わらせるのではなく、そこから何を学ぶかが重要。その作業を繰り返していくことが大事。
投稿元:
レビューを見る
この本を読んで、かなりのショックを受けた。日本は、明治維新以来、組織的学習にあまり進歩がない。第二次世界大戦という大きな損失、多くの過ちを起こしてきた失敗に学ぶ努力を自分を含め、怠って来ていると感じた。バブル崩壊もその後の失われた20年も、そして今なお喘ぐ日本社会も、その場の「空気」に「水を差す」だけの力量をもったリーダーの不足、不在に理由があると実感した。もっと歴史に学ぶ必要性を実感する一冊である。
投稿元:
レビューを見る
気になったことをメモ、引用。
日本は<零戦><大和><武蔵>といった既存の兵器体系の精緻化には努めたが、それらを組み合わせてどう戦うか、という発想を生み出すことができなかった。
新たな知を紡ぐには、さまざまな情報を幅広く集めながら、それらの背後にある文脈を理解し、適切な取捨選択を行わなければならない。そのうえで、何かと何かを組み合わせ、新しい概念をつくり出し、さらに、その概念を形にして実際に使えるかどうかを試してみることが重要だ。
アリストテレスの五つの知の分類。
客観的知識としてのエピステーメと物をつくり出す実践的知識としてのテクネ。
この双方を統合した概念、実践的知恵がフロネシス。
リベラル・アーツが重要。
フロネティック・リーダー
①「善い」目的をつくる能力
②場をタイムリーにつくる能力
③ありのままの現実を直視する能力
④直観の本質を概念化する能力
⑤概念を実現化する政治力
⑥実践知を組織化する能力
チャーチルこそその典型。
投稿元:
レビューを見る
巻次 戦場のリーダーシップ篇
著者名1 ノナカ イクジロウ
野中 郁次郎/編著
著者名2 スギノオ ヨシオ
杉之尾 宜生/著
著者名3 トベ リョウイチ
戸部 良一/著
著者名4 ドイ ユキオ
土居 征夫/著
著者名5 カワノ ヒトシ
河野 仁/著
1
戦場のリーダーシップ 野中 郁次郎/著
2
リーダーは実践し、賢慮し、垂範せよ 野中 郁次郎/著
3
失敗の連鎖 杉之尾 宜生/著
4
プロフェッショナリズムの暴走 戸部 良一/著
5
「総力戦研究所」とは何だったのか 土居 征夫/著
6
「最前線」指揮官の条件 河野 仁/著
7
石原莞爾 山内 昌之/著
8
辻政信 戸部 良一/著
9
山口多聞 山内 昌之/著
10
情報敗戦 杉之尾 宜生/著
11
合理的に失敗する組織 菊澤 研宗/著
12
派閥の組織行動論 菊澤 研宗/著
13
リーダーの「現場力」を検証する 野中 郁次郎/述 杉之尾 宜生/述
リーダーに求められる現場感覚・大局観・判断力とは? 昭和期陸軍の病理、天才参謀・石原莞爾の蹉跌など、日本軍の指導者の失敗と数少ない成功を通して、現在のリーダーや組織にとっての有益な教訓を引き出す。
投稿元:
レビューを見る
適切な情報処理の欠如、「独断専行」の容認、現場主義の欠如、「空気」による非合理的な意思決定、、、、
日本軍の欠陥は挙げればキリがないが、総括して適切な人材配置を行えるだけのバランス感覚が組織全体として欠如していたのが最も深刻な問題だったんじゃないかと思った。
人が行う以上全てを合理的に処理することはできないが、それを自覚して物事を進められれば結果は違ったんだろうな。
情報量が多くてエッセンスも沢山詰まっているが最終的な結論を示していないので、自分の中で何が一番の問題なのかを考えながら読み進める必要がある。
まだまだ情報に踊らされていて、本質的なメッセージを読み取れているかと言われたら自信がない。。。
知識も経験も圧倒的に足りない。
それらをある程度のレベルまで身に付けてからもう一回読みたい本。
投稿元:
レビューを見る
70年以上も前の戦争における失敗を分析することにより,現代へと適応する方法の検討。
失敗の本質ということだけあって,時代がかわってもその本質はブレナイのだと実感できる。
人間は万物についての真実を知ることはできない。組織にとっての都合の悪い真実は頬かむりしたくなるのが,人間だ。だが,それでは新たな知は生まれない。あらゆる場面で,なぜを五回問うトヨタのように,絶対の真実があると信じて,何度も執拗に問いを発し,試行錯誤を続ける組織が最後には勝つ。
我々は大東亜戦争の敗北を物量の差・科学技術力の差にきしていたが,より正確に表現すれば,政治・軍事指導者層の科学技術に対する認識の差で敗北したとみなすべきである。つまり,目利きのできないトップがイノベーションの芽を埋没させてしまった好例だったのである。
投稿元:
レビューを見る
率先垂範の精神を欠くリーダー、硬直化した官僚的組織、プロフェッショナリズムの誤解―現在も日本の組織を蝕む『病』を先人の犯した『失敗』を例に鋭い考察を加えています。これをどう生かすかは個人の問題ですが。
本書は「失敗の本質」「戦略の本質」の続編にあたります。一応、前の2作も読んだことはありますが、やっぱり面白かったです。ここでは、日中戦争、および太平洋戦争(大東亜戦争)における戦場でどのような決断を下し、またそこで失敗したのかを複数の執筆者が詳細に分析し、また、現在にも続く、『組織的な失敗』の病理を鋭く抉り出し、また処方箋を記したものであると思います。
なぜ帝国海軍は過ちを繰り返してしまったのか?というパールハーバーでの『奇襲』からミッドウェーの敗北。さらには昭和における日本陸軍といういわば『究極の官僚機構』ともいえる組織がなぜ暴走し、破滅して行ったかを東条英機対石原莞爾という二人の官僚のタイプを検証していたり、優秀な指揮官が必ずしも『組織の人間』として適切な人材ではない、ということを辻正信という現場の指揮官から検証してあったり、ミッドウエー海戦で壮絶な最期を遂げた山口多聞のエピソードは本当に考えさせられるものがありました。
ノモンハン事件の失敗。戦艦大和が沖縄に特攻作戦を敢行するときに作戦本部に発生した『空気』。そして、陸軍内における皇道派と統制派の派閥争いにおける『論理』は形を変え、時代を超えて現在にも『生き残って』いるんだな、ということをつくづく感じました。先人たちの失敗を以下に自分のものとし将来をいかにするべきか、ここにはそのヒントが隠されていると思います。
投稿元:
レビューを見る
読むのが辛い本だった。確かに当時の技術からして、限られた情報の中で判断せざる得ないとしても、思い込みや個人のこだわり、精神論で戦争に勝とうとする姿は滑稽ですらある。やむなし、と思われる点はほとんどなく、こんなやり方で何百万人も死んだのか、と思うと、返す返すもあの戦争は無駄だったと言わざる得ない。本当に怖いのは、日本が敗戦国となって、戦後の構築を全て米国が行ったため、日本人があの戦争を自ら反省できていないことである。自ら反省し、自ら学ぶという事を行う最大の機会を逸したのである。それが故に、戦後も戦前の考え方が生き続け、今の日本の停滞に繋がっているような気がしてならない。
ちなみに、この本では当然米国はあらゆる点で日本を上回る素晴らしい国家として書かれているが、その米国がなぜベトナム戦争で負けたのか、新たな興味が湧いてきたので、次ばそういう観点の本を読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
失敗はなぜ起こるのか。大戦当時の組織を例にあげて考察しており、分かりやすい。何よりも現代の社会でも色々なところで役に立つ知恵だと思う。しかし野中さんは山口多聞好きなんですねぇ~。
投稿元:
レビューを見る
まとめる必要なかったんじゃね?ってのはわかんなくもない。
残念ながら『失敗の本質』と比べるとイマイチと言わざるをえない。
それでも、日本軍好きでリーダーシップをとるひつようせいがあるのであれば読んどいて損はないと思う。
投稿元:
レビューを見る
前作に引き続きリーダーシップ論に隠れた軍事マニア的本。ダメな日本軍の中においても山口多聞のような逸材もいたことが救いか。
投稿元:
レビューを見る
失敗の本質では組織のあり方、方向性について深く考えさせられたが、今作はそれを導くリーダーの在り方について極めて深く考えさせられた。
印象に残った箇所を抜粋しながら、感想を述べていく。
P159 戦場の指揮官
特に、現場をしらない新任指揮官は権威の葛藤に苦しみながら、舞台指揮の方法を学んで行った。
P160 ガ島 38師団 中隊長 若林東一中尉の日記
「部下を持ちて」:「部下にさからひの気配ある時、弾丸の中にて部下行かざる時、かならず部下を叱るな、おのれの徳、おのれの勇、未だ足らざるを思へ」
P176から始まる「リーダー像の研究」では、圧倒的に秀でた能力を持ち、実際に数々の劇的な成果を挙げながらも、組織人としての能力の欠如、あるいは逆に現場からの信頼の欠如、はたまた組織の硬直性の壁といった様々な要因によって、最終的には勝利をもたらすことが出来なかったリーダーが多くいたことに気づかされた。
寡聞にして山口多聞司令官の能力については今回初めて知った所だが、そうしたリーダーをもってしても戦争の分水嶺となるミッドウェー海戦を勝利に導くことは出来なかった。
苦しい状況を打開し、最終的な勝利に導くことがリーダーの使命であるとしたら、その求められる能力は無限であり、半ば絶望的ですらある。
しかし、その事実に真正面から立ち向かい、己の全てを賭けて、部下を、会社を、国を守ることがリーダーには求められているのだろう。
壁は果てしなく高いが、そうしたリーダーに自分はなりたい。
P270 オリバー•E•ウィリアムソンの取引コスト理論
P276 イマヌエル•カントの人間の他律性と自律性の分析
そして、これらを用いた「派閥」や「空気」の分析は、組織や人間社会を理解する上で極めて示唆に富んでいた。
この本を読み、リーダーとなるには、学ぶべきことが無限にあると感じ、またそうした知識を溜め込めだけでなく、リーダー経験を積んで、「実践知」を身につけていかなかればならないと改めて感じさせられた。