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日本が大東亜戦争で敗戦したことは知っていても,なぜ負けたのかということまでは,なかなか歴史の授業で学ぶことはないと思います。
敗戦の原因はどこにあるのか,将来にいかすべき教訓は何かということを研究したのが本書です。
文章が読みにくいということはありませんが,出来事や人物に馴染みがないので,やや読み進めるのに苦労しました。
私は自分の仕事や生活にどう活かしていくかということを考えながら読みました。
本書を読んでの私なりに得た教訓ですが,
・成功体験ばかりでもそのことだけに囚われて,視野が狭くなってしまい,そのことが大きな失敗を招く。それゆえ,失敗も貴重な経験。
・帰納的思考を大切に。経験から知識を得,それを実践しながら知識を修正していく。トライアル&エラーが重要。
失敗を取り上げることは,ともすれば当事者を非難するように受け止められ,取り上げること自体をやめさせようとすることもあるようです。しかし,責任追及という視点ではなく,何が起こったのか,その何が良くなかったのか,今後どうすべきかということは,たとえ失敗に目を向けることに気が進まないとしても,臭い物に蓋をするという姿勢ではいけないと思いました。
この本を読んでいる最中に,身近にそのような話を聞き,歴史を学ぶ姿勢は重要だと改めて認識した次第です。
本著の先駆けとなる「失敗の本質」も読んでみる予定です。
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・太平洋戦争での6つの戦闘を取り上げ組織の抱える問題点を抽出し、その分析・解釈によって行政機関や企業など組織一般にとっての教訓を引き出そうと研究の成果を『失敗の本質』で1984年に発表。その後、暗黙知と形式知の相互作用によるダイナミックな知識創造プロセスを明らかにし、『知識創造企業』『流れを経営する』を研究・執筆。
・『失敗の本質』で得た重要な命題の一つは、日本軍における過去の成功体験への過剰適用である。言わば「成功は失敗の元」。人間は、成功体験によって強化された自己をなかなか否定できない。戦後の日本の政治組織、官僚組織も、厳しい陸海軍の失敗から何かを学んだようには見えない。日本において唯一、自己否定の能力を持ちえたのが企業組織。企業は厳しい市場競争のなかで生き延びなければならず、実行すべきことから逃れようとする企業は消えていくだけ。
・2011年の東日本大震災はまさに「戦時」であった。事故後、官邸中枢には、状況に即した組織的判断力、本部と事故現場との連携が不可欠だった。にもかかわらず、官邸中枢の対応は、『失敗の本質』で挙げた日本軍の「組織的失敗の要因」の二の舞を演じた。官邸中枢の危機対応は、「いま」「ここ」の現実に向き合えなかったため、現場の課題に直面する大局的視点を持ちえず、ダイナミックな危機対応ができなかった日本軍のそれに酷似している。日本軍と同じ轍を踏んだ危機対応の様相に、まさに「フロネティックリーダー」不在の国家経営の縮図を見る思いがした。日本軍の過去の失敗を例に現在の組織に有益な教訓を引き出したのが『失敗の本質』で、日本軍の指導者の失敗と(数少ない)成功を題材に、現在のリーダーや組織にとっての有益な教訓を引き出した。
・「フロネティックリーダー」…フロネシス(賢慮ないし実践知)は人間の究極の知。文脈に即した判断、適時・絶妙なバランスを具備した高度なリーダーシップ。
フロネシスの中身を一言でいえば、個別具体の物事や背後にある複雑な関係性を見極めながら、社会の共通善の実現のために、適切な判断をすばやく下しつつ、自らも的確な行動wを取ることができる「実践知」のことをいう。そうした知を備えたリーダーがフロネティックリーダーだ。
その要件は6つ。
1)「善い」目的をつくる能力
2)場をタイムリーにつくる能力
3)ありのままの現実を直視する能力
4)直観の本質を概念化する能力
5)概念を実現する政治力
6)実践知を組織化する能力
・フロネティックリーダーの育成のための基盤の一つは「経験」。とりわけ重要なのは修羅場体験、そして成功と失敗の経験。文脈は常に動いている。「この文脈においては、この選択肢が最適だ」というジャストライトな判断をするためには、論理を超えた多様な経験が欠かせない。また、手本となる人物との共体験も、リーダーシップの形成に大きな影響を与える要素。もう一方で教養(リベラル・アーツ)も重要な要素。陸軍大学校や海軍大学校が教養を重視していたという話は聞いたことがない。それがバランスを欠いた指揮官を生み、バランスを欠いた戦い方につながった面もある���ではないか。
・硫黄島で守備隊を指揮した栗林忠道中将軍は陸軍大学校を二番目の成績で卒業した後、約5年間にわたり、アメリカ留学、ヨーロッパ視察、カナダ公使館勤務などで海外生活を送った。若い頃、「軍事以外の知識の著しく低級」であることを問題にしのている。彼は日本軍に数少ないフロネティックリーダーの一人だったのだろう。
・日本は「零戦」「大和」「武蔵」といった既存の兵器体系の精緻化には努めたが、それらを組み合わせてどう戦うか、という発想を生み出すことができなかった。新たな知を紡ぐには、さまざまな情報を幅広く集めながら、それらの背後にある文脈を理解し、適切な取捨選択を行わなければならない。その上で、何かと何かを組み合わせ、新しい概念を作り出し、さらに、その概念を形にして実際に使えるかどうかを試してみることが重要だ。こうした一連の知の作法が日本軍においては欠落していた。連合軍と比べ、物事を見聞きし、判断し、新しいものを作り出す能力に劣っていた。「新たな知を希求する組織」という面では軍隊も企業も同じである。
・失敗例から引き出す教訓としては、モノではなくコトでとらえる大局観、不都合な真実に目をつぶらない知的誠実さ、多様な知・多様な人材、リーダー同士の目的の共有、新しいコトを生み出すイノベーション思考の重要性である。いまの経営環境もあの戦争と時と同じといえなくもない。いまのリーダーに求められる役割は「想定外の現象への対応=新環境への創造的適応」ではないだろうか。そのために、一人でも多くのフロネティックリーダーがこの国に増えることを望む。
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国家的視野による戦略、現場感覚のあるリーダー、空気によらない責任者の明確な判断、いずれも全く実現されていない。無意味な戦争に突入する事がないようにするために何をすればいいのか、悩ましい。
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野中教授が主張されている「現場感覚」「大局観」「判断力」を有した「フロネティック・リーダー」を裏付けるための、戦時の事実・将校の行動を通じて各専門家が論じている。
自分は、「石原莞爾」「辻政信」「山口多聞」の考察が大変深く印象に残った。
天才肌故か、組織に目配せする能力が欠落していた石原。
軍の基本ポリシーに忠実すぎるが故に数々の失策に対し誰も苦言を呈すことができず、結果的に独走を許してしまった辻。
組織や上官への抜群の目配せと溢れる程の愛国心故に自らの不利をあえて飲み込み率先して殉職した山口。
ヒューマニズムに偏った感想になってしまい、申し訳ありませんが、私にとっては非常に参考になりました。
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失敗の本質に先立ち、図書館で借りる。
日本はなぜ負けたのか、をリーダーの観点で分析している。リーダーとなる人財が不在だったのではなく、適材適所の配置に至れなかったことが、かくも悔やまれるほどに致命的であったと思わされる。正直、後半が面白い。
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難しいけど失敗の本質が少し見えてきました。
キーワードとして「PPPA(plan plan plan forget)」とか「空気」とか「取引コスト」ってのが印象に残ったのと仕事でも使えそう!
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真実はいずれとしても、いろんな角度で意見が出されているところが面白い。特に、バンザイ突撃の日本軍とアメリカ軍の双方の捉え方の相違が、興味をそそった。
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▼調べた単語
・翻って(ひるがえって):1 反対の面が出る。さっと裏返しになる。「裾が―・る」2 態度・説などが、急に変わって反対になる。「評決が―・る」
・賢慮(けんりょ):賢明な考え。すぐれた考え。
・コンテクスト:文脈
・プラグマティズム:思考の意味や真偽を行動や生起した事象の成果により決定する考え方。19世紀後半の米国に生まれ、発展した反形而上学的傾向の哲学思想。
・涵養(かんよう):水が自然に土に浸透するように、無理をしないでゆっくりと養い育てることを意味する。「読書力を―する」
・インフォーマル:公式でないさま。形式ばらないさま。略式。
・逡巡(しゅんじゅん):(スル)決断できないで、ぐずぐずすること。しりごみすること。ためらい。「大学に進むべきか否か逡巡する」
・帰趨(きすう):(スル)物事が最終的に落ち着くこと。行き着くところ。帰趣。「勝敗の帰趨を見とどける」「人心の帰趨するところを知らない」
・フロネティック・リーダー:アリストテレスのフロシネス(賢慮)という概念に基づいて野中郁次郎一橋大学名誉教授が提唱したものです。この賢慮型リーダーシップには、①「善い」目的をつくる能力、②場をタイムリーに作る能力、③ありのままの現実を直観する能力、④直観の本質を概念化する能力、⑤概念を実現する政治力、⑥実践知を組織化する能力、の6つの能力が必要とされます。
・フロネシス:理念と実践の相互作用がなくして生成されることはあり得ず、その方法論は実践的推論です。実践的推論による結論は、演繹的三段論法のように論理的真偽ではなく、仮説検証型フィールドワークなどにより、仮説設定と修正を反復することにより導かれます。
・演繹(えんえき):普遍的命題から特殊命題を導き出すこと。一般的に、組み立てた理論によって、特殊な課題を説明すること。
・帰納(きのう):推理・思考の手続きの一つ。個々の具体的な事柄から、一般的な命題や法則を導き出すこと。
・拙劣(せつれつ):(技術や出来具合が)へたなこと。つたないこと。
・軍事テクノクラート:政治経済や科学技術について高度の専門的知識をもつ行政官・管理者。技術官僚。テクノクラット。
・狭隘(きょうあい):せまいこと。
・セクショナリズム:一つの部門にとじこもって他を排斥する傾向。なわばり根性。
・法匪(ほうひ):《匪は悪者の意》法律の文理解釈に固執し、民衆をかえりみない者をののしっていう語。
・悪弊(あくへい):悪い習わし。悪習。悪風。「悪弊を断ち切る」
・兵站(へいたん):戦闘部隊の後方にあって、人員・兵器・食糧などの前送・補給にあたり、また、後方連絡線の確保にあたる活動機能。ロジスティクス。「兵站部」
・拙速(せっそく):できはよくないが、仕事が早いこと。また、そのさま。
・巧遅(こうち):出来ばえはすぐれているが、仕上がりまでの時間がかかること。
・俊英(しゅんえい):学問・才能などが人より秀でていること。また、その人。
▼付箋をした箇所
P.15
実践知を形成するための基盤の一つは経験である。とりわけ���要なのは修羅場経験、そして成功と失敗の経験だ。
論理を超えた多様な経験が欠かせない。
手本となる人物との共体験も、リーダーシップの形成に大きな影響を与える要素であろう。
もう一方では教養(リベラル・アーツ)も重要な要素である。哲学や歴史、文学などを学ぶなかで、関係性を読み解く能力を身につけることができる。
そんな弁論術も含めた政治力は、フロネティック・リーダーの重要な要素である。
P.17
直観を概念化する能力を挙げた。換言すれば、暗黙知を形式知化する能力である。概念化、言語化できて初めて、組織的な共有が可能になる。それにより、組織からのフィードバックを得て、直観をさらに磨くことができる。このスパイラルアップのサイクルは、言葉によって起動されるのだ。
P.20
いま実行すべきは、サイロの破壊とタスクフォースの創設を通じた機動的な知の総動員である。それが日本企業復活のカギだと私は確信している、
P.44
哲学は「どうあるか」という存在論と、「どう知るか」という認識論で構成され、その両面から、真・善・美について徹底的に考え抜く。それによって、モノではなくコトでとらえる大局観、物事の背後にある関係性を見抜く力、多面的な観察力が養えるのだ。
P.45
フロネシスを備えたリーダーを、私はフロネティック・リーダーと名づけた。そうしたリーダーは、以下六つの能力を備えている。
①「善い」目的をつくる能力
②場をタイムリーにつくる能力
③ありのままの現実を直観する能力
④直観の本質を概念化する能力
⑤概念を実現する政治力
⑥実践知を組織化する能力
P.52
イノベーションは、ある理論を前提とし、そこから論理分析的に正しい答えを引き出す演繹的思考では実現しない。完全競争状態の市場という理想郷を不完全状態に変えることで、企業は利潤を手にすることができるという考えをモデル化したのがマイケル・ポーターだが、そういうやり方では現実の延長線上にある戦略や革新ならぬ改善しか生まれない。
それに対して、個別具体の現実から出発し、新しいコンセプトや物事の見方を打ち立てようという強い思いから生まれる帰納的思考が、イノベーションには不可欠となる。帰納的思考は最後には必ず行動につながる。行動によってみずからの考えや判断の正否がわかるからだ。
P.217
「ああ、兵は拙速を尊ぶ。巧遅に堕して時機を失うよりは、最善でなくとも、次善の策で間に合わせなければならない」
P.218
「目前の悲惨に覆われて全局を忘れてはならない。これは洋の東西を通じ、いつの世にも変わることのない指揮官の統率である」
P.230
彼らに共通するのは、戦に臨む不動の信念であり、臨機に重大決断を下せる柔軟な頭脳であった。そのうえ闘魂と敢闘精神はアメリカ人さえたじろがせるほどだった。彼らなら、南雲のように優柔不断を繰り返すことも、致命的な判断ミスを何度も犯すこともなかったろう。
P.249
インフォメーションがあったことはほぼ間違いない。問題は、それを適切に分析し、情報(インテリジェンス)に転換して有効に活用したかどうかである。
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名著「失敗の本質」の続編.リーダーシップに焦点を絞って議論.
・若手に権限移譲し「小さい組織」を任せるなど,次世代のリーダーが実際に権限を行使する場を設ける事が重要
・開かれた多様性を排除し,同質性の高いメンバーで独善的に意思決定する内向きな組織が問題
・求められるのは「現場感覚」「大局観」「判断力」
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オーディオブックで読了。
失敗の本質の28年ぶりの続編と言うことで、
色々現代の時事ネタも入ってきていて面白いです。
前作は戦略や戦術のレベルでの失敗の分析でしたが、
今回はリーダー及びリーダーシップにフィーチャー
して分析が為されています。
本作の最大の山場はやっぱり空気感と取引コストかなと。
なんというか、日本という国は本質的にはやっぱり
連綿と続いているのだなぁということを感じずには
いられない下りでした。
現代の組織にもかなり適用可能な歴史の教訓を
是非本作から学んで頂ければと思います。。。
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●リーダーシップを発揮するためには、実践知をを備えなければならない。経験や教養により、大局観と現場感覚、判断力を養うことが大切。
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第二次大戦における日本の軍事行動の失敗から教訓を得ようとする本。リーダーシップに的を絞り、主に司令官に焦点を当てて分析を試みている。空気で説明される大和特攻を、取引コストの点で説明を試みたことは興味深かった。
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第二次大戦時の帝国陸海軍が犯した数々の失敗を、個別の事例の丁寧な調査と解説で分析してくれている。この手の本の中でもとてもわかりやすいものだと思う。何を読んでも当時のお粗末な意思決定や視野の狭さに呆れるが、やはり他人事ではない。特に戦艦大和の特攻にあたっての意思決定では、米国留学経験のある知性派でさえ、今考えれば合理的でない決定をしている。本書の分析によれば、「敗戦が濃厚な状況で、大和を温存しておくことは、臆病者のレッテルを貼られるだけでなく、終戦後に大和が敵国の実験などに使用されることになり、これらを何より恐れた」とされている。当時のその立場であれば当然の意思決定かもしれないが、そのせいで数千人の戦死者を出したとなれば、同情できる話ではない。ただ、こういう「空気感」のなかで誤った判断をしていないかについては常に自省する必要があると感じた。
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「失敗の本質」の続編。太平洋戦争時の日本軍におけるリーダーシップ不在、大きな戦略不在についてが、具体的な事例、人物を取り上げながら説かれている。実用的な知識だけでなく哲学が必要なこと、グランドデザインを持ちつつ現場の細かな様子にも気を配る必要があること、リーダーシップにおいては日常の部下とのコミュニケーションも重要であることなどが印象に残った点です。
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戦場という生死がかかる究極の状況の中でのリーダーシップ。日本を覆う「空気」というものに支配されないこと、それがリーダーとして必要なことなのだろう。