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卒業以来、ほとんど会うことのなかったクラスメイトは、みな大人になっていた。
15年ぶりに開封されることになった小学生のときのタイムカプセルだったが、何故か封をしてビニール袋に個々に密封されていたはずの手紙は、すべて封が開けられていた。
何者かが事前に掘り起こし開封した?
疑問も持ちながらも、結局は再会の懐かしさに紛れうやむやになってしまう。
15年前、事故死したリョウタの手紙の内容はトシアキにとって意外なものだった。
ずっといじめられていた記憶しかない。
万引きを強要された。
深夜の校舎で幽霊ドッキリを仕掛けられ馬鹿にされた。
何かというと殴られていた。
リョウタのことで覚えているのはそんなことばかりだ。
なのにリョウタは謝りたいと思っていた?
仲良くなりたいと思っていた?
当時子分のようにしていたケンやセイサクさえも驚く、リョウタの本当の気持ちがそこには書かれていた。
もしかしたらリョウタは人との付き合い方を知らない、ただの不器用なだけの、哀れな子供だったのかもしれない・・・。
理想とは何だろう?
自分の目指す目標の邪魔になるからといって、安易に排除して手にいれたものは理想と呼べるのだろうか?
努力し苦労して手にするからこそ、価値があるように思うのだけれど。
人としてもっとも安易な解決方法を選んだとき、すべては決まってしまったのだ。
誰のせいでもない。
犯人自らの手で、未来への扉を閉ざしたのだ。
読んでいるときはそれなりに面白い。
けれど、何故か後に残るものが何もない。
何年かしてこの物語のタイトルを見ても内容を思い出せるかどうか、自信がまったくない。
そんな物語だった。