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圧倒的なボリュームで、とても一気には読めませんが、
次へ次へと、一気に読んでしまいたいと思わせる程の、
とても興味深く、とても面白い内容でした。
水戸黄門は、あまりにもTVドラマの印象が強すぎて、
史実にある実績や人物像をご存知の方は少ないのでは、
と思いますが、なるほど、こういう方だったんですね。
もちろん、冲方さんの解釈と脚色によるものですから、
そのまま、まるまる鵜呑みにすることはできませんが、
登場人物各々が、とても魅力的に描かれていました。
ただし、1点。光圀の大志と大義は伝わってきたけど、
作品からのメッセージが、よくわからなかったかな~。
でも、とても読みやすい、面白い歴史小説でした。
作品としても面白かったし、人物としても興味深いし、
何か、じっくりと読書をしてみたいと思われる方には、
オススメしますね。読んで、損はありません。はいっ。
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「天地明察」に次ぐ第2弾。すばらしい本に出会った。「明察」が傑作だっただけに2作目は厳しいと思っていたが、初めて山本周五郎「樅の木は残った」や司馬遼太郎「竜馬がゆく」高橋克彦「炎立つ」を読んだ時のような衝撃。しかも、単なる伝記ではなく、詩文の世界の頂点を目指す光圀、大義を追い求める光國が、生き方のすべてを「義」の一点に集約させるために手塩にかけて育てた家老を自ら殺さなければならないドラマを中央に置いたかつてない小説。750Pの長編ということもあり「明察」ほどには受けないだろうが、文句なしの★★★★★。こちらの方が遥かに衝撃が深い。幾度も涙をこらえねばならない場面もあり、ゆっくりと時間をかけて何度も戻りながら読んだ一冊。
「大日本史」編纂という大事業。何故この世に歴史が必要なのか。「人が生きてこの世にいたという事実は、永劫不滅である。」と。
長たるもののあるべき姿も示す。「藩主として最初になさなければならなかったことは「宣言」である。・・藩主とは「託す者」である。託すことの重さこそ、宣言の重さであろう。史書は宣言の軽薄を教えるものではない。宣言ののちに到来する人の世の重みをいかにして背負うかを教えるものである。」
尚、光圀の字は、もとの「國」は惑いに通じることから、晩年、八方の字「圀」に置き換えた不惑の名ということ。
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読耕斉や泰姫その他個性豊かな仲間(ライバル)たちとお互いに影響を受けながら成長していく姿が良い。
中国の師・舜水と一緒に調理をするシーンがとっても好き!
「天地明察」の渋川春海とのやり取りを、今回は光圀側から描いていて、面白かった。保科正之が大好きだったので、今回もまた出てきてくれてすごく嬉しかった。
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テレビなどで黄門様として知られる光圀とはかなり異なるイメージでしたが、なぜ自分が世子なのか苦しみ続けた若き時や詩歌への情熱、史書編纂へかける想い、また短くとも幸せだった妻との暮らし、良き友や師との出会いや別れなど光圀の喜びや悲しみをしみじみと感じました。
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手に取ってびびった。700ページもあるんだもの(笑)。
タイトルどおり水戸光圀の人生だが、「水戸黄門」の好々爺といったイメージより、若いころ辻斬りを行っていた殺人者のイメージか「天地明察」ででてきた「やたら血の熱い人」というイメージのほうが近い。
「天地の狭間にあるもの悉くが師である」と文中にもあるが、父 頼房、兄 頼重、妻 泰姫、叔父 義直、宮本武蔵、沢庵、山鹿素行 林羅山、林読耕斎、後水尾院、冷泉為景、左近、保科正之、朱舜水
などと出会い、学び、見送る。といったのが大まかな流れ。(その中で、自らの存在の確立、詩作、領地経営、史書編纂などを背景に物語はすすむ)。
ただ見送るでいえば例外は冒頭で誅する家老で、「歴史は連綿と続くわれわれひとりひとりの人生である」という記述からその歴史を断ち切る(ひっくり返す)からだった…かな?
4つの治道の記述と硬直化した幕府組織の描写がよい。
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大作である。黄門さんこと、水戸光圀を扱った小説としては、一番史実に近いのかもしれない。戦争もなく、事件もそれほどなく、平和な時代を淡々と生きていく。地味な人生かもしれないが、いろいろな人たちとの出会いと別れが描かれている。
物語の初めと終わりに自分の後を託すはずだった紋太夫を手討にせざるを得なかった光圀の苦悩が描かれる。奇しくも、紋太夫の大義は朝廷に政権を返納することであり、水戸家出身の最後の将軍がその大義を果たすことになるとは。歴史の綾である。そこが一番のクライマックスである。
700頁以上のハードカバーが、2000円弱であり、お得感一杯の本である。
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テレビ番組のイメージが強く、若かりしころの姿や暮らしぶりは想像だにしなかった「黄門様」。徳川御三家の世子として、どう育っていったのか、周囲の人間関係含め、闊達に描き出してます。そのボリュームたるや圧巻ですが、「眉目秀麗な源氏の中将様」と、光源氏を彷彿とさせるイメージ作りや取り巻くキャラクターの設定など、これからどんどんスピンアウトできそうな内容。光の当たるところも、そうでないところも描いているところにも魅力があります。
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読んで良かったと素直に感じられる一冊。
天地明察に続き、沖方さんの書く文章の魅力に最初から引き込まれる。
梅の詩で始る物語、一人の人生を左右する出会いと別れ。
ネタバレは嫌いなので一言、天地明察では読みながら涙を流しました。
この光圀伝では最後の一文を読み、どっと文章が蘇り涙が溢れました。
素晴らしい一冊をありがとうございます。
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水戸黄門こと徳川光圀の生涯を描く歴史小説。
多くのエピソードを持つ徳川光圀を少年時代からその死までを描く大河小説でありながら、エンターテイメント性もある作品に仕上がっています。
「水戸黄門」の講談的魅力とはまた異なる、その人間性の本質にも迫るものがありました。
構成的にも冒頭の家臣の殺害に至るミステリー的な要素(ちょっと強引な動機かも)もあり、大作ながら、最後まで読ませます。
特に読耕斎や泰姫との心からの交流と別れ、左近の存在による死者の如在感、紋太夫との大義における信頼と破綻が感動させます。
もちろん、スケさん、カクさんも史実に則って活躍しますし、綱吉との確執も上手に処理されています。
また、「天地明察」とのリンクもあり、「天地明察」からの読者サービスもあります。
次回作も大変期待できそうです。(次は保科正之かな)
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冲方丁先生の、文人時代劇第二弾。
物凄い熱量をもって、文業と義のため生きる主人公の姿が熱い。前作に続き、その信念の中に、作者自身を重ねてしまいます。
また、本作の分厚さと比較すると、キャラクターも印象的で覚えやすく、非常に読みやすかった。史実の説明で進めず、あくまで"物語"として展開させていく作者の手腕が伺えました。
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長編であるが、個性ある登場人物が生き生きと描かれ、面白く、一気に読んだ。
ただ、最後に明かされる紋太夫の「我が大義」は予想外というか飛躍し過ぎて、拍子抜けした。
その点で若干マイナスだが、良い本だった。
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「天地明察」の光圀が魅力的だったのでかなり期待して読んだ。
光圀はもちろん水戸家家臣、林家などなど味のある人物がぞろぞろ出てきておもしろかった~
冲方さん、次は何を書くのか楽しみです。
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テレビの水戸黄門とは全く違う『剛』のイメージの光圀伝。『義』を第一に考える生き方に感銘を受けました。今年No.1の面白さでした!
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徳川光圀といえば、大半の人がそうであるようにドラマの中の好々爺としての水戸黄門しか知らず、本書の主人公として痛快かつ激情の人、かつこうまでも劇的な人生を歩んだ人物であるとは思いもよらなかった。
帯に「新たな水戸黄門像を示す」といったことが書かれていたが、まさにそのとおりだったと思う。
兄を差し置いて水戸藩の後継として指名されたことを後ろめたく思うがその感情の矛先を方方にぶつけた少年期。親友と伴侶を得て、兄への後ろめたさへひとつの解答を出した青年期。多くの別れと新たな誕生に次代へ繋げることに情熱を注ぎ出す壮年期。徳川光圀という一人の一生をとてもドラマチックに描いています。
天地明察の時もそうだったけれど、この筆者は本当に上げて落とすのが上手い。そして、ただ落とすのではなく、登場人物を落ちた事実から新たな未来や方向性へ進ませるのがとても上手い。
天地明察と時代設定がかなり重複するので、天地明察を前後に読んでおくとより楽しめる。長編ではあるけれど全体的に読みやすいので、歴史小説に抵抗がある人でもすんなり楽しめる一冊ではないでしょうか。
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久しぶりにのめり込んだ小説!
自分の中で水戸黄門こと光圀のイメージは
1.大日本史を編纂
2.朱舜水を師匠に学びラーメンを食った人
3.若い頃の趣味は辻斬り
だったが、これを読んで「詩で天下を取る」と熱い思いを持ち、勉学に励み、暴力ではなく筆力や舌力で人を動かした義に熱い人という好きな歴史人物の一人になった。
また、光圀だけでなく読耕斎や泰姫、介さんなど魅力的な人物が多いのも良かったし、その人達との離別のシーンには涙…
次は天地明察を読む!!