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ノンフィクションはあまり読んでこなかったが、この本はとても読みやすく一気に読んだ。
内容も、多くの人に読んでもらいたいもの。
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決算書を誤魔化して銀行から高額融資を受け挙句の果てに計画倒産をさせる一方で、その融資金額を経営者と山分けしていた経営コンサルタントを捜査する特捜部の仕事に誰も文句はないであろう。
だがその捜査の過程で、同じ企業の経営に携わったというだけの理由で違う経営コンサルタント及びその顧客企業も同じ穴のムジナと決め付け逮捕・倒産に追い込んだ特捜部の捜査に疑問を呈するのが本書。捜査開始の際のシナリオに沿う証拠が見つからないにも関わらず、特捜部のメンツに拘り赤字決算を黒字に粉飾したことを無理やり詐欺と言いくるめて犯罪者を作り出した一種の冤罪でもある。
厳密には粉飾決算は褒められた行為ではないし犯罪ではあるが、一方で中小企業の命綱である銀行融資を継続するために赤字決算は絶対悪であり、場合によっては決算を操作して黒字決算を作るのはある意味では必要悪と言える。融資をする銀行もそれを薄々感じていながら融資を焦げ付かせないために継続融資をしている。融資継続のための「黒字」決算書の存在を詐欺と称するならば中小企業の大半は詐欺を行なっていることになる。
大企業の粉飾決算は上場廃止にもならず、一人の犯罪者もださないのにどうして中小企業にだけこうした捜査が行われたのか大いに疑問を持つ所以である。それが正義かどうかは別として、一旦、特捜部が捜査方針を立てるとそこからは逃れようが無いとしか言いようが無いということだろうか。なんともやるせない事件の顛末である。
唯一の救いは摘発された経営コンサルもそして倒産させられた企業の社長も飽くまでも実直でお互いがお互いを信頼し、捜査の過程において何度も相手に罪を着せ自分は罪を減じる可能性を示唆されても、自らの信念に基づき正直であったことであろう。
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TVドラマHEROで木村拓哉が演じた検事久利生公平のセリフに
「被害者の味方になってやれるの検事だけだから」
というのがあった。
裁判になると弁護士は被告人につくからだ。
あの話はフィクションだし、特捜を舞台にしてはいないので少し話は違う。
でも、この本において、特捜の行った捜査から裁判、そして直接、間接にわたって数々の会社を倒産に追い込むことによって誰の味方をしたのだろうか?
被害者は銀行と言うことになっているけれども、本文にもあるとおり、その銀行も回収できたであろう債権を焦げ付かされている。味方どころか足を引っ張られた形だ。
巨悪に立ち向かう、たしかにかっこいいかもしれない。が、誰のためにもならないことはしないほうがよいのではないか?
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読み終えてわなわな。特に印象に残ったフレーズです。
「検事さん、あなたは、今やってること、好きですか?なにかをプラスにしている仕事なんですか?その仕事で何かがプラスにならなくてもいいんですか?いつも、どういう気持ちで過ごしているんですか?」
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これは、本当に恐ろしい事実を記載した本です。
なお、恐ろしいことは、この本の主人公たちに実刑判決が下されていることです。
あまりにも想像力が欠如しているとしか思えません。
この本に描かれたことは、単なる特捜部の問題だけでなく、司法全体の問題へつながっているように思われます。
ここ数年、司法改革が叫ばれ、裁判員裁判が始まり、弁護士の数も増えました。
しかし、本当の意味で必要なのは、その人の立場に立って物事を考えてみる能力や、時には人の痛みに寄り添える能力を持った人が、人の人生を左右する権力を持つ職務に就くような制度作りではないでしょうか。
この本の主人公たちほどではないにしても、日々、司法権力に大なり小なり苦汁をなめた経験をお持ちの人はたくさんおられることと思います。
誰にでも降りかかるおそれのあることと認識し、司法制度にも関心を持って頂きたい、だから、一人でも多くの人に読んで欲しいとの願いを込めて、★5つです。
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特捜の暴走というか、手前勝手な倫理で、必死に生きる庶民の生活を一方的に破壊してしまう。
正義感に燃えるジャーナリストが克明な取材により暴く特捜の病理。
好きなアパレルの仕事を資金繰りに奔走しながら、必死に生きる中小企業経営者。
そんな経営者を元銀行マンが、融資を受ける立場にたって誠実なコンサルを行う。
大多数の中小零細企業の実情をよく表している。
そんな誠実に生きている国民を世間知らずの特捜が無理筋な権力行使。
あってはならないことだ。
石塚健司氏のようなジャーナリストが日本のジャーナリズムの正常化の旗振りとなってほしいものである。
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銀行員が企業を見抜けなくなった。この点について大いに賛同できる。銀行業務は多岐に渡り、銀行員は本来の仕事である貸出に対する時間が削られ、融資先との人としてのつながりが薄くなったことで事業に対する深い理解ができていないように感じる。
「人を見て貸せ」融資の基本ではあるが実際は数字を当てはめ判断している部分が大いにあると思う。そして、その弊害として現在の中小企業において粉飾を行っている企業は多く存在している。粉飾という言葉は聞こえが悪いので「調整」という言葉がよく使われる。
本書はそんな中小企業を救おうとしたコンサルティング会社とその対象企業の社長が検察に潰される話。
ターンアラウンドマネージャーのかっこよさ、生きがいを改めて確認しつつ、行政の現状に対する把握ができていないこと。銀行融資のありかた。また銀行員の仕事とは。と考えさせられる一冊。
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重たい話でした
本文より 日本の企業数は約四百二十万社(平成二十四年版中小企業白書)。このうち九九・七%を中小企業が占め、雇用の七割弱を中小企業が支えている。そのうち何割ぐらいの会社が粉飾決算をしているのだろう。巷間では八割とも九割とも言われるが、それを実証するデータはもちろん存在しない。
粉飾決算は当然すべきではない。しかし、しないと金が借りられないという現実が有り、生き延びられる企業に金が廻らず倒産するとしたら誰も得をしない。
主役はエス・オーインクと言うアパレルの経営者とそこを助ける銀行出身のコンサル。粉飾決算をしても借りた金を返す意思とそれなりの能力があり、しかし検挙され銀行を騙した詐欺罪で実刑判決を受けた。震災特別融資を悪用したというのが検察特捜部のストーリーで中小企業の粉飾決算なら普通は特捜部の出る幕ではない。
粉飾決算に薄々気がついてながらも保証付き融資であればノーリスクなので実は歓迎している銀行が被害者で真面目に経営しながらも方便として粉飾決算に手を染めた経営者が加害者。事件になってどちらも得をしなかった。
貸倒が増えても貸し剥がしせざるを得なくてもいずれにせよ世間の批判を受ける銀行の立場。上司の意向に逆らえない検察の担当者。法律違反をわかりながらも踏み込まざるを得ない経営社とコンサル。それぞれの立場は理解できる。
しかし震災特別融資と言うのは紋切り型では貸せない相手に貸し社会全体の負担を下げる制度のはず。そこであら探ししてしまったのが筋が悪かったのだろう。
以下も本文より
「それは確かに……しかし、すべての会社に即座に実態を表に出させるようなことをすれば、倒産してしまう会社が続出します。それはハードランディングです。ソフトランディングさせてあげるべき会社もたくさんあります。粉飾決算を続けながらでも銀行借入額を少しずつ減らしていった例はたくさん──」「その考え方がおかしい。粉飾をしている会社は倒産して当然なのではないですか。なにしろ実態は破綻なんですから
「……逮捕されたら、会社は潰れてしまいます」「それはしょうがないねえ」「でも……そうなれば仕入先にも影響が出ますし、倒産するところも出てくるかもしれません。路頭に迷うのはうちの社員だけじゃすまなくなるし……」「それも含めて、やはりしょうがないでしょうねえ
検察上部もこの担当官の発言は言い過ぎだと認めている。
現在佐藤、朝倉両氏に対してはヤメ検弁護士の郷原氏が中心となって支援しているようだ。逮捕時には報道した大手新聞社が検察の行きすぎに対しての意見は調べた限り見つからなかった。
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中小企業の現実の経営状況をリアルにレポートされており、
わかるわかると思いながら読ませてもらいました。
途中から特捜の捜査の問題に内容が移ってからは、
ちょっと内容がしつこく思えた。
中小企業の社長とコンサルのやり取りをもっと知りたかった。
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粉飾決算をする中小企業の経営者と、それを助けるコンサルタント。彼らが特捜検察に詐欺罪で起訴され、有罪となるまでの話。普通に考えると、当たり前の話だが、「検察が会社を踏み潰した日」というタイトルにあるように、著者はそれに批判的だ。
多くの中小企業は大なり小なり粉飾決算をやっている。銀行は数字だけを見て金を貸し、個別の企業の事情を考慮しないから、そうせざるを得ない。彼らは決して銀行を騙す意図はなく、必ず返すつもりでいる(例外もいるが)。そのような中小企業を起訴し、倒産に追いやるのが検察の役目だろうか?、と。
中小企業の窮状は理解できたが、それを救うのは政策の問題ではないだろうか?。検察が自己の描いた主張を曲げず、被疑者・被告人を捜査し起訴したことを批判しているが、それはお門違いの気がする。
ただ、検察官には諸般の事情を考慮して起訴するかどうかと決める権限があるので(起訴独占主義・起訴便宜主義)、その観点からすると、特捜検察が扱う事件であったかどうかは疑問が残った。
なお、この本で主人公となったコンサルタントが自ら書いた本、「粉飾 特捜に狙われた元銀行員の告白 」も出ているので、本人の弁も読んでみたい。
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『粉飾』に引き続き読んだ本書であるが、検察の役割と銀行を含めた金融のありかたについて、改めて考えさせられた。
主任検事の描いたシナリオに沿って行われる捜査、途中で間違いに気づいても引き返せない体質、捜査能力低下により本当に糾弾すべき大企業等への不正については及び腰になる実態。巨悪に立ち向かう「かつてのヒーロー」は随分と変容してしまったが、相変わらず強大な権限だけは持ち続けている。その権限をどこに、どのように使うのかを再考すべき時期にきていると感じた。もはや権限を適正に使えないのであれば、素直に返上すべきなのかもしれない。
一方、銀行は企業経営の実情や経営者の人となりを調査せず、単に数字のみで融資可否を判断していく。企業の成長と発展を金融面からサポートするという崇高な役割は完全に過去のものとなってしまった。
マニュアルに沿って融資判断をする限り、個人の責任は問われないし、お役所にも文句は言われない。融資先がどんなに困っても、自分の銀行が経営危機になっても、マニュアルに従ってさえいれば、申し開きが立つ。そして、責任転嫁やアリバイ作りのための膨大な資料作りに労力が割かれることになる。これではもはや経営とは言えない。
もちろん粉飾は悪であり、粉飾を行った中小企業、粉飾を指南したコンサルタントには罪がある。しかし、本当に是正すべきは、現在の不適切な金融システムとそのシステムの中で凝り固まってしまった銀行経営にある。これを打破しない限り日本の将来は暗い。
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銀行を辞めて中小企業のコンサルタントになった男が、粉飾決算によって不正に銀行から融資を受けたとみなされ、顧客と共に詐欺で東京地検特捜部に逮捕される。
本書は「会社を立て直す為に必死で働いていた社長とコンサルタントが、特捜部のメンツのために突然逮捕されることになった」という筋でこの事件を紹介している。同時に、彼らの姿を通じて日本の中小企業の社長たちが置かれている状況に光を当てる。
彼らが粉飾決算をしていたこと自体は事実で、両人ともあっさり認めている。しかしそれは銀行を騙すつもりで行ったことではなく、あくまでも再生するためのテクニックであり、特捜部が手がけるような悪質なものではないというのが彼らの主張だ。
私自身は経営者ではなく気楽なサラリーマンなので、粉飾決算が実際どの程度の問題かピンと来ない。本書からのイメージとしては、車のちょっとしたスピード違反や駐車違反など青切符レベルのことに思われる。
政治家や大企業など巨悪に立ち向かうのが本務であるはずの東京地検特捜部が出張ってくる事件ではない、という著者の主張はなんとなく共感できる。とは言え、軽微といえども犯罪は犯罪という見方も当然可能だ。意見が別れるだろう。
現在まだ裁判が続いている事件なので結末は分からない。注視したいと思う。
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国家権力の横暴さに、血反吐が出る。◆朝倉さん、佐藤真言さんには頑張ってほしい。◆◆「まだあったんですか?(潰れてなかったんですか)」という意味を役人に言われた人を身近な人を知っているが、官尊民卑の思想を持った役人は害悪あって一利無しだ。◆◆取り調べ全面可視化導入を早く望む。◆いつ自分がこの理不尽な暴力の巻き添えを食うかと思うと、恐ろしい限りだ。