投稿元:
レビューを見る
4世代に渡るある家族の話。平凡に見える家族でも必ず何かしらあるもの。慌ただしい毎日をやり過ごすので精一杯だけどちょっと足を止めて振り返るのも大事だね。男女雇用機会均等法やら、女性総合職やらでワーワーしてる時代に戸惑う主人公の娘。あー、そうだった、そうだった。社会に出て、現実を思い知らされたあの頃を思い出した。自分も強くなったもんだ(笑)
投稿元:
レビューを見る
時代を遡りながら、一家族の日常を切り取った連作短編小説。
勲と香、勇、そして床屋。
何気ない日常の中で、床屋が登場し、家族4代(勲の父も含む)に渡って利用する。
勲は父が建てた製菓工場を20代で引継ぎ、2代目となるが、時代の流れもあり、倒産させてしまう。
その後は一ヒラ社員として働き続ける、過酷な人生だが、何か過酷さを感じさせない表現とユーモアがある。
心温まる物語有り、胸が熱くなる物語有り、短編ということでスラスラ読めてしまう。
床屋という、誰しも身近に感じる舞台だけに共感しやすい話。
投稿元:
レビューを見る
「床屋さんへちょっと」
軽いタイトルの割に、書かれた内容は一人の男の人生と、その家族の物語。
でもやっぱりどこか飄々として、それでいて人生の厳しさと温かさと寂しさと…人生そのもののような味わいを感じさせてくれる。
冒頭の「桜」では自分の墓を下見にいく老年の男性が、次の「鋤き鋏」では娘の婚約者と行動を共にしている。そして「マスターと呼ばれた男」では海外出張に出かけた先での話で…
そう、この物語は主人公である「宍倉 勲」の人生の一場面一場面をカットした作品だ。
当然ながら、一つ一つの話にはつながりがあり、「あそこで書かれていたことはこういうことだったのか」という伏線を読み解くような楽しみ方もできる。
勲本人の人生を描いた中で、娘である香や、妻である睦子の人となりも段々と浮き彫りになってくる。
読み終えたときには勲本人ですら気づかなかったであろう彼の人間くささ、そして魅力をしみじみと感じることができる。
人生って、人間ってこういうものだよな。
「床屋」という場所を軸に描かれた一人の男性とその家族の物語をぜひ手にとって欲しい。
投稿元:
レビューを見る
うーん、最初のストーリーはとても好き。
宍倉勲という人物を時代をさかのぼる形で描かれる連作短編集。キーワードは常に「床屋」。
ちょっと共感できる部分が少なかったかな。2度読みはないです。きっと当たり前の普通の男性の人生を振り返れば共感できる部分もあったんだろうけど、なんだかきれいごともあったり、逆に身近すぎて、誰かの日記を読んでるような・・
最後の2,3話は読むまでいきませんでした。
投稿元:
レビューを見る
社長という役職に縁のある父娘の、
人生の断面毎に起こる些細な出来事を
短編集にしたもの。
話は徐々に過去に遡り、
各話では「床屋さん」が登場する。
表題作まで読み進めたとき、
些細な出来事ばかりであった
これまでの話が素敵なものに見えてくる。
起伏の激しい話ではないけど、良い話。
投稿元:
レビューを見る
床屋さんを軸に父娘の温かな関係が描かれている連作長編。
様々な時代を行ったり来たりが、懐かしく優しい気持ちにさせてくれる。
思わず笑ってしまったりホロッと来たり…
読み進めるほど、この話の虜になってしまう。
2015.12.25
投稿元:
レビューを見る
山本幸久さんのお仕事もの大好きです。
これは、もろお仕事ではないですが、
後からじんわりしてくる熱い想いがいい。
行ってみたい世界です。
投稿元:
レビューを見る
2016/5/6
おじいさんの人生を遡っていく。
うまいなぁ。
さっきの章で回想していた出来事がこれか。とか、この人と後々結婚したんだね~とかいちいち確認できてなんだか身近に感じられる。
おじいさん死んでしまった後の話も寂しいけど優しい気持ちになる。
うまいなぁ。
やっぱりこの人の本好きだわ。
投稿元:
レビューを見る
9つの連作短編。
最初の7編は、主人公の老年から遡りながら描くというちょっと変わった構成です。8編目(単行本では最後)は主人公の死後を、9編目は文庫本で追加されたものだそうです。
主人公の宍倉勲はカリスマ経営者であった父親の中堅製菓会社を引き継いだ二世経営者。しかしその会社を若い頃に潰してしまい、その後、繊維会社に最初は平社員として勤めた人物です。最初の印象は坊ちゃん育ちの無能力者。しかし読み進むにつれ、(人並み優れている訳ではないものの)非常に誠実でしっかりした人物であることが判ってきます。目立ちはしないが多くの知人から、そして家族から信頼された人物。そんな姿が見えてきます。
サラリと描かれていますが、考えてみれば実に苦難の話なのです。
しかし、そこを大上段の物語にせず軽く描き、暖かな家族の信頼感を出す。そのあたりが持ち味ですね。
床屋さんの使い方もうまいな。
投稿元:
レビューを見る
「なんか行き詰ったり、モヤモヤすると、散髪にいくねん」という知り合いを何人か知っている。女性にとって髪は命ともいえるくらい大切なものだと言うが、男にとってもそれなりに大切なものなのである。
といってる俺は、手入れが面倒くさいので、坊主刈りだったりするのだが(笑
本作は、主人公宍戸勲の半生を床屋と家族を通じて描いた連作短編集。最後の2話を除いて、70代の勲の人生を遡る構成が面白い。前の作品に出てきた描写について「あぁ、ここのこれね」って発見できる快感が良い。仕掛けの妙で読ませてくれる。
主人公一家は結構波乱万丈の時を過ごしており、描きようによってはもっとドラマチックに仕立てられなくもないと思う。例えば池井戸潤あたりが描くと、もっとベタベタな展開にもって行くんだろう。でも、そこは山本幸久、ヒョーヒョーと軽さを感じる物語に仕上げている。好みが分かれるところだろうが、俺はこういう仕上げ方も重すぎなくて好きである。
投稿元:
レビューを見る
父親と娘の関係を中心に、家族の歴史を時を遡りながら描く連作小説。お仕事小説プラス家族小説の傑作。
全てのシーンが映像で脳内再生されるかのように、会話のテンポや場面のシチュエーションが素晴らしい。無駄な登場人物が存在せず、全員が愛すべき人々である。そして、区切りの時に出てくる床屋さん。本当におはなしの展開が巧い。山本さんはもっと評価されていい作家さんです。
投稿元:
レビューを見る
図書館で借りたハードカバーの同タイトルがとても良かったので保存用に。文庫化に際して書下ろさられた短編「歯医者さんはちょっと」と中島京子さんの解説を読了。
投稿元:
レビューを見る
床屋をテーマとした、ほっこりとさせる連作長編ですね。
時系列がバラバラなのは意味があるのかな。
少し違和感を、感じてしまいました。
続けて読めば意味が分かったかも知れないですね。
投稿元:
レビューを見る
実にほのぼのと読めるストーリー。
お菓子メーカーの二代目の苦悩、その娘、孫が床屋で繋がっている話。
どうってことのない日常が、繋がっている。
幸せな気分になる本でした。
投稿元:
レビューを見る
連作長編。9つのお話が入っている。
ひとつの話ごとに、時間が過去に戻る。前に読んだこれとは関係ない2冊も時間が遡っていくところがあったので、あれ?また?と思ってしまった。
でもこの手法自体は割と好き。前のあれはここからこうなったんだーと知るのが楽しい。
毎回、床屋さんがちらりと出てくる。ちょっと無理にでも床屋さんを絡めてきているのかな、なんて思う部分もあった。
勇が年齢に対して大人すぎるのと、登場人物たちの会話がたまに不自然なのとが気になった。こんな話し方はしないだろうなとか、こんなやり取りはしないよね、とか。
どの章も最後はちょっといい風に終わるので悪い感じはしないのだけれど、腹立たしいイヤなひとが出てきたり、登場人物がイヤな思いをしたりするので、読んでいる最中の気分はあまり晴れやかではなかった。タイトルから、何となく終始ほのぼのなストーリーをイメージしていたので意外だった。
途中、少し退屈しながら読み進めてしまったものの、後半の「床屋さんへちょっと」は良かった。集大成って感じで。まあ、ここでもイヤなひとが出てくるのであまり穏やかには読めなかったんだけど。
通して読むと、ひとりの男の生き様や家族の絆が見えてきて、あたたかい気持ちになった。もっと全体的に穏やかでもいいのになとも思ってしまうけれど、いろいろなことがあったからこその最後の展開なんだろうなとも思う。