紙の本
現実編、そして妄想編
2015/09/28 11:24
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
私立聖ヒネモス女学院に通う藤林沙絵は、母親の藤林浅葱や担任の小長井要の反対を押し切り、声優養成の専門学校へ進学することにした。オタクな友人の由利千歌子と一緒にコスプレをしたり、動画をネットにアップしたりしている内に、自分は向こう側で輝くべき存在だと考えるようになったのだ。
しかし専門学校では、農道メットと馬鹿にしていた鉢屋出雲にデビューで先を越され、講師陣にも全く評価されず、テロリストのカリーム・アブドゥール・アル・アッザムが住んでいたために激安だった新宿の下宿に引きこもる様になってしまった。
久しぶりの同窓会で再会した由利千歌子は、生物工学の研究者を目指して東工大に入学し、ほっそりと痩せてスタイル抜群の女子大生となっていて、他の同級生もまばゆいばかりに人生を謳歌している。翻ってみて自分はただの引きこもり。声優を目指し始めた頃の自分を幻視して罵倒され、母親と約束の期限まであと少しと迫ったとき、彼女は声優事務所グランドクロスが主催するオーディションの記事をネットで目にした。
最後のチャンスと胸に秘めてオーディションに参加し、書類選考は突破したものの、周囲にプレッシャーを与えるモデル女子高生の楯岡未知や、ツキノワグマの仔に乗るマタギ娘の百地狸子に圧倒され、社長の中司周馬の目の前でのオーディションでは、全く持っての素人ぶりをさらしてしまう。…だがなぜか合格。最短デビューを目指し、前例無視のプロモーション活動を行っていくことになるのだった。
本作は前半と後半に分けて理解した方が良い。前半は私小説もどきな、声優を目指した少女が現実に打ちのめされて挫折する話。後半はあり得ない幸運の連続で声優事務所に所属することができるようになり、デビュー目指してオーディションを受けまくれるようになる話だ。
この内容を深読みすれば、前半の終わりの同窓会で、旧友とのあまりの落差を見せつけられた落伍者が絶望して自殺、あるいは自閉してしまい、後半のストーリーは全て妄想という解釈も出来なくはない。ゆえに、前半の展開が嫌ならば、真ん中くらいからページを開いて読み始めても、物語的には何ら問題がない構成となっている。
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沙絵の、消費者→表現者にいたる過程が過剰なくらいナマナマしく丹念に描かれているだけに、その後の堕落した姿は「明日から本気出す」気のすべての者に刺さることまちがいなし。少なくとも私は刺さった。
オーディション以降の展開はちょっとふわふわしてしまった感じ。
とんとん拍子に進ませてくれそうないプロダクションの方針や疎遠になってしまった友人との今後など、これからの話がとても気になる作品だった。
シリーズ化を意識しているエピローグだったけれど、タイトルの元ネタを考えるとこれで完結としてもある意味ではきれいな終わり方に思える。
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丹下桜さんの曲のタイトルが使われているとの情報から手に取る。
各章のタイトルが桜さんの曲のタイトルとなっており、各章の扉には歌詞が数行、桜さんの名前と共に掲載されている。物語の雰囲気をよく表している。
漫画家さんが書いたということで心配していたが、それほど読みにくい文章ではなく、よくある展開でありながら、コミカルな堕落の現実感に寒心した。
始めに情報を見たときには、桜さんの曲を盗用しているのかと心配したが、桜さんの名前を出しての引用であり、安心した。桜さんへのあこがれを抱く人の多様さを実感した。
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続き物を書く予定なのかここできれいには終わっていません。作中のアニメの設定などが多くて少し辛かった。主人公は親近感のもてるどこにでもいるようなキャラなのはよかった。
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10のまあまあより、9の駄作と1のきらめきに出会いたい。この世の中にある膨大な本の中で、本との出会いは一期一会。そんな中で私にとってのきらめきとなったのが本書。
素人動画投稿サイトと友人の協力をきっかけに声優を目指すことを決めた女の子の話。決してサクセスストーリーではない。主人公を見出し特別扱いして引っ張り上げてくれるプロデューサーも、素敵な男の子も、強敵や親友と書いて友と呼ぶ存在も、特別なものは何もない。与えられる側から与える側に憧れ、思春期特有の自意識過剰さで自惚れ、現実を前に打ちひしがれる。夢を目指すという聞こえのいい文句、999人の挫折者と1人の成功者のうち後者になれると思い込む力、都合のいい成功を夢想し現実に向かえない程度の決意。
おんぼろアパートでニート同然の生活を過ごし、大喧嘩して勝ち取った専門学校へ行く権利を自ら投げ出す。自分は特別だと思ってた。すぐにデビュー、スカウト、まわりの素人どもとは違う。無意識の自意識。楽しめない同窓会。喜べない友達の変化。頑張ろう、明日から……本気で又は楽しんでやってる人は、明日からなんて立ち止まったりしない。たかが役の一回二回逃したくらいで心が折れたりしない。
与えられたものを享受する側から、与える側へ行きたいと羨望と嫉妬でもって道を決めた少女の物語。イタイ、暗い、考えが甘い。作者の自叙伝的な小説であるだけに、感情が絵空事ではなく引きつけられる。
読み過ぎると毒になる。だが過ごしてきた青春は闇でも黒歴史でも捨てられるものではない。どんなに醜くても捨てていい想いではない。
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既刊2冊、未完。
オタクな少女の悲惨な生き様を描いた話し。でも応援したくなるし、もしかしたらとも思う。仲間の他の二人も可愛いし、声優の先輩方も好い人。アニメ愛に溢れた作品。
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声優を目指して専門学校に入るも挫折ししかし立ち上がる青春
作者の本業はマンガで連載しているマンガ版を自ら小説化もするという
よくわからないようなよくわかるような状態になっているが
以外にと言ったら失礼だが構成も描写も良く出来ていて感心
高校時代の友人との関係やオーディションを受けての母とのやりとりも面白い
わりと傑作