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個人語りで恐縮、だからこのレビューも独りよがりな物になる。
生まれ育った町の図書館の雑然とした開架の本棚で林順信「都電の消えた街―東京今昔対比写真」を見つけたことは、自分の知的好奇心のスタートだったと思う。この本は在りし日の都電の風景写真と、現在のその同じ場所を定点対比させた写真集だった。ぼくは昭和30年代の東京の風景に夢中になった。
そもそも子供図書館で、いかにも社会科な本を読みあさっていた自分に大人の方の図書館を教えてくれたのは、母だったし、駄菓子屋のおばちゃんのような司書さんだった。
そしてなんにもないカレンダーの裏紙のような白紙に、ざっくりした河や路線を書いて、町を発展していく遊びにのめりこんでいた。(後年、シムシティの存在を知ったときは驚いた)
そんなローティーン中のローティーンとアラフォーの自分がくっついたのが本書。
まず地図が一杯載っているだけで、買ってしまう。
首都近郊や都市部を中心に数々の町が取り上げられている。
田んぼや畑、塩田は、工場や住宅やショッピングモールに変貌していく。歴史的な地名は、キラキラした味わいの無い地名に変換されていく。
自分が嬉々として、白地図で行っていたあの時間。
発展が終わると、ぼくはその町の地図を捨て、また新たな町を発展させていく。あの町はどうなったのか。どうなっていくのか。
僕も、日本も遠くまで来てしまった。
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西荻窪に住んで既に30年余りになるが、駅前なども土地が無いのでロータリーやバス停を含め余り変化が無いように思えるが良く気を付けて見れば随分と街は変わっている。先日は昔住んでいた善福寺公園の周りを散歩して見たら、かつては大きなお屋敷だった場所もいつの間にか切り売りされて住宅になっていたりするしな。でも所詮はここ2-30年の記憶しか無いのでその昔がどうであったかは知るすべも無い。
本書は古くは大正時代、昭和初期、高度成長期、平成期に発行された地図をベースにいかに一つの街が変遷していくのか具体的にまた詳細に定点観測して見せるもので何とも興味深いものだ。かつては田甫だったものが大きな工場になり、そして更に住宅地化の流れに押され工場も消えてマンション群になったりしているのが地図から読み取れる。
こんな場所もある。大正10年の地図には京王電気軌道が開通していた都内西部地区「くわやくこまえ」なんてのがあるのは何処の街だろう?なんとこれが今の「明大前」のことなのだからビックリ。起源は江戸幕府の煙硝蔵で、明治維新後に陸軍に引き継がれ、第一次大戦後の軍縮のながれで大正13年に廃止されるまで存在し、その後土地は明治大学と築地本願寺に払い下げられ、それぞれ大学と和田堀廟所になっているという。
明治、大正、昭和、平成と時代は移ろうがそれらを追っていく街の変化はまさに歴史の変遷という感が強く感じられる。古地図というと江戸時代のものばかりが注目されるが明治以降の地図ももう少し良く見てみると面白いのかも知れないし、つい昨日のような昭和の時代の地図も今は消えた何かが再発見できるかも知れない。
それにつけても地図は楽しいのだが如何せん地図の中の文字が小さく厳しい。老眼が進行しているのを改めて痛感してしまったようだ。
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このテの本はだいたい東京だけ、大阪だけなど限定的なパターンが多いものだ。しかしこの本は京都のみならず名古屋、武蔵浦和、習志野、横浜、仙台、尾久、川崎、博多などバラエティに富んでいる点が素晴らしい。
一冊で様々な土地の変遷や由来を知ることができ、どれも非常に頷けるものばかり。トータルバランスに優れる良書。
地図好きや土地にゆかりのある方はは一回手にとってみてはいかがだろうか。
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映画「Always 三丁目の夕日」のような近過去を回顧する風潮は諸外国には無く、都市の改変が激しい日本独特の風潮であると川本三郎が述べていた。本書は正にそれを地で行く内容である。それほど大規模なものでなくても、よく街で新しい建物や店舗を見かけると、あれ、ここは前はなんだったっけと考える事が多い。そんな時、過去の地図を眺めることでその疑問は解消される。今までも古地図に関する本は読んできたが、それらは昔と今でその間はあまり語られることがなかった。本書はその間を語っているところが肝と言える。
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知っている土地の項目を中心に読んだ。
面白いと感じていた地名について、その理由について理解できた。
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紹介されているのは著者が興味を持った場所でしかないが、これがまた秀逸。非常に面白い。今尾恵介さんの本ではピカイチではないか。
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今尾氏お得意の定点地図比較の本です。
一万分の1の地図を使用しているので、銭湯や交番などの
場所も今と昔で確認することができます。
千葉や川崎の海岸線などは、同じ場所とは思えないくらい
の変わりようです。
そんな地形の移り変わりを「見てきたかのように」実感
できる一冊です。