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本書は、2012年9月の発行であるが、小沢一郎の民主党離党が2012年7月。当時は政権与党の大民主党内で長く続いた「親小沢vs反小沢」の政争に一応の決着がついた時期だった。
2012年12月の衆議院選挙で民主党がボロ負けし、自民党が政権奪還を果たした現在から見れば、民主党内部の「小沢一郎」をめぐる政争は、民主党にとってどう言う意味を持っていたのかとあらためて考えてしまう。
内部抗争の結果、国民に見捨てられて選挙でボロ負けした要素も大きいと思うと、民主党政治家のレベルの低さと考えるしかないか、などと思いながら、本書を手にとってみた。
本書は、「小沢一郎」と「東京地検特捜部」の20年にも渡る因縁とも思われる争いを詳細に取り上げたものであるが、「歴史に残る大政治家」と「法律の番人たる特捜検察」との、がっぷり四つに組んだ「政争」の凄まじさを詳細に明らかにしている。
これらの内容は、当時の報道を詳細に読んでいればほとんどわかるものばかりで、あまり新しい知見はないと思うが、これだけ長年にわたる「対決」を読むと、その全体像がよく見えてくる。
「小沢一郎」は、やはり「古い政治家」なのだろう。法律に違反したのかしなかったのかはともかく、「特捜検察」が対決に持ち込むだけの「材料」を提供する雰囲気がその周辺に漂っていたことは否定できないと思えた。
また、「特捜検察」は、組織の腐敗とまでは言えないかもしれないが、無理のある強引な捜査に突き進む「組織的土壌」があったのではないか。厚生労働省の村木局長の「無罪」事件や、大久保秘書の取り調べ「録音」による「調書でっち上げ判明」を取り上げるまでもなく、「特捜検察」自体が大きな組織的問題を抱えていたことは、間違いがない。
本書は、当時の「政治家」や「特捜検察」のありかたを考えることができる本だとおもうが、すでに「小沢一郎の日本未来の党」は衆議院議員9名の少数政党となり、「小沢一郎」の「全国政治家」としての位置は大きく低下しているし、「東京地検特捜部」で無理な捜査に手を染めた検察官は、懲戒免職や退職とされて尻尾切りされている。
本件は既に終わっているのである。
本書は、改めてこの間の経過を確認できるという価値はあるが、現在につながる考察がないという点は物足りないように思えた。