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杉村春子のために書いた戯曲だそう…原作は「亀遊の死」。
ひとりの遊女の死がどんどん脚色されていく過程は喜劇のようだけれども、何ともいえない哀しみがつきまとう。
私は、通訳の籐吉が亀遊への恋心から、彼女を身請けしようとする外国人客の言葉を正しく訳すことができない場面にとても惹かれる。
先日テレビで放映された、玉三郎と檀れいの舞台を観たけれど、私の遊女亀遊のイメージは檀ではないかも(ファンの方ごめんなさい)。
上村松園の「遊女亀遊」もなんとなくピンとこない。
戯曲として名作。その通り上演されることを望む。
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既に持っている作品なのだが、昨年、坂東玉三郎主演の舞台を見た
帰りに新版を購入した。戯曲である。
時は幕末、舞台は横浜の遊郭。吉原から流れて来たおいらんが、好いた
男と添えないことを嘆いて自刃した。その場にいたのは、やはり吉原から
横浜に移って来た芸者のお園。
客を喜ばすために、おいらんの死についてお園が吐いた小さな嘘が
だんだんと大きくなっていって…。というお話。
このお園、その昔は昭和の大女優・杉村春子の当たり役。私はこの
人の舞台の時も何度か観ているので、お園の台詞を読んでいると、
頭の中に杉村春子のお園と、玉三郎のお園が交互に登場した。
おいらんの死を嘆きながらも、それを商売のネタにするお園。
面白ろうて、やがて哀しき物語だ。
併録は『華岡青洲の妻』。こちらも既に小説の方で読んでいるのだが、
戯曲は台詞だけなので、姑と嫁、女ふたりの心の底にあるライバル
心がストレートに分かる分、戯曲の方が怖い。
女は、弱い生き物だけれど、したたかな生き物でもある。
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実際は本ではなく「シネマ歌舞伎」を観たのですが、Booklogでは登録できないので、本で登録してます。
有吉佐和子原作で、文学座で杉本春子の当たり役の中年芸者・お園を玉三郎が見事に演じきっており、華麗な玉三郎とは一味違った演技を観る事ができます。
尊王攘夷が声だかに叫ばれていた幕末の頃、横浜の遊郭・岩亀楼の花魁・亀遊(きゆう)が自害した。暫くして、亀遊が異人を嫌って自害したという事で、攘夷女郎として瓦版に華々しく喧伝された。そして辞世の句として「露をだに厭う大和の女郎花、ふるあめりかに袖はぬらさじ」が紹介されていた。
亀遊が読み書きのできないのを知っていたお園は、この話をでっち上げだと気付く。しかし、攘夷女郎がいたとの評判で、岩亀楼には客が詰め掛けてその話を聞きたがる。初めは本当のことを話そうとしていたお園であったが、楼閣の主人に客が喜ぶ話をするように言われ、話はどんどん脚色されて行く。
ところがある時、いい気になって語っていて、ちょっとしたことから脚色したことがばれてしまう。そして怒った攘夷党の侍達に刃を向けられることに・・・
喜劇の中にアイロニーを帯びた玉三郎の演技が見所です。
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マツコ・有吉の怒り新党を見ていると数か月に一回出てくる
「名字談義」。ここでマツコさんは有吉さんに
「有吉佐和子先生と同じ」というのを必ず言うんですよね。
それで気になって読んだという。
有吉先生の著書というと昔「恍惚の人」は読んだけどそれっきり。
「複合汚染」と悩んだけど遊女関連の調べ物でも出てきたのでこちらを
読むことにしました。
横浜にある遊女屋が舞台。
その「岩亀楼」というのが今どこにあるのかと思ったらなんと
横浜スタジアム。
灯篭がスタジアムの横の日本庭園にあるらしい。
横浜スタジアムは良く通るのですが、日本庭園があることすら
知りませんでしたよ。
今度見てみよう。
さて、物語ですが、吉原から横浜に流れ着いてきた病気中の遊女が、
翻訳者と恋に落ちる。
なんとか仕事復帰できる程度になったら、アメリカ人に見初められて
しまう。
当時、外人と一度関係を持つと、日本の男は二度と手を出さないという
一文にびっくりしましたが、
日本の人ってそういうところ往々にしてあるな、と
自分も日本人ながら納得。
アメリカ人が嫌なのか、結ばれない恋を嘆いてなのか、ただ
世をはかなんでなのか、女は喉を切り自殺してしまう。
そこから人の噂があらゆる方向に進んでいくのがこの物語の肝。
恐ろしい人間心理を、お園という芸者が操っていきます。
操っているということに気づくのも後半になってからなんですけど。
お園という名前を聞くとどうしても「魔女の宅急便」のパン屋のオソノさん
をイメージしてしまうことと、前半の陽気な、からっとした会話を
見ていたのであれよあれよと膨らんでいく物語に
引きずられていくような形になりました。
ラストシーンはまさに、ふるあめりかに袖も何も濡れて
歩いていく様子が目に浮かぶようで、
ただその脳裏に浮かぶシーンの中で幕が降りるのを待つ、
という気持ちになりました。
その後に「華岡青洲の妻」も入っていました。
NHKでドラマ放送されていたな、この作品も有吉先生の
作品だったのね、と軽い気持ちで読んだら、怖い怖い。
嫁姑の、夫が家にいるかいないかでの真逆な関係性。
母親が息子を愛する強い気持ちは、やっぱり美しくないなと
いつも感じてしまいます。
そんな女通しの争いを見ることによって、
結婚することが怖くてできなくなってしまった
妹の気持ちがよくわかります。
これはドラマ・舞台で繰り返し利用される演目でしょうね。
自分の体を犠牲にして「勝った」と思う女の恐ろしさよ。
男性ははたから見ていても、深淵にある恐ろしさとか
全然気づかないんでしょうね。
もしくは、知っていてしらんぷりなのか。
女は怖いし、男はずるい。
二作あわせて、盛りだくさんの一冊でした。
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ものすごく読みたかったけれど入手できず、図書館で借りた。戯曲スタイルでびっくり。
攘夷、って言葉、尊王、とどう関係あるのか分からないし、難しい。佐幕も。
女郎の是非はもちろん、洋妾には格下をあてがうなどの人権問題、格下の扱いに満足できないアメリカ人の様子など、考えるところは第二幕に集中していた。後半はあまり好きな展開ではなかったなぁ。