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あまりに繊細で、痛々しく、美しい物語。生の世界と死の世界、その間を超える臨場感に圧倒されました。
荒廃しつつあるのが地上の世界だけではないという哀しさも印象的で。どちらの世界も決して甘やかなものではないけれど。描かれるそれぞれの美しさには強く惹きつけられました。
闘争と荒廃に満ちた世界には幸福などないのかと思えましたが。脆弱な主人公の内面的な「強さ」や、少しずつ描かれる「絆」が、ほんの少しの希望を与えてくれた気がしました。
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第19回日本ホラー小説大賞作品「先導者」を読んだ。特殊教育を受け強靭な精神力と苦痛に耐えた者だけがなれる先導者。死んだ人をある場所に導く「御役」が役目。15歳で先導者になった少女の淡々と綺麗な言葉遣いで語られていく。とにかく御役の描写が細かく、死に向かうプロセスが重く息苦しい。前半はグイグイ引き込まれ、後半の展開はいまいち気分が乗らず消化不良だったが、全体的にまとまってたなという印象。あと巻末の選評も作家の生の声を聞けて面白かった。
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死の瞬間の感覚描写が生々しい。きっとそうなのだと思う。繊細な感覚と文章でドキドキする。
だが、筋立てが妙に荒い。あまりに現実的でせっかくの繊細な感覚描写の雰囲気を壊す。もしかしたらこの差が作者が意図したコントラストなのかもしれないが・・・。期待した霊界も近所の森の中のよう、登場する霊たちも魅力ない。「どうしてこんな話になっちゃうのぉ~」と、がっかりした。
幽体離脱をするときの描写は繊細ですばらしい。
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生の世界と死の世界を行き来する女の子が主人公。死に向かう描写がリアルで息苦しくなる前半から、ストーリーが予想外の展開に斜めすべりしていく後半が気持ちいい。最後の場面が、ふわっと温かくて良かった。
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契約を交わした、選ばれた人間を魂の再生する場所へ導く「先導者」
丁寧な言葉遣いで、淡々と語られる死後の世界は繊細で、引き込まれた。
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(No.12-10) 第19回日本ホラー大賞〈大賞〉受賞作品。
『15歳になったばかりのわたしは、先導者として認可され、研修所から人里離れたコテージに移り住む。多少のわがままなら聞いてもらえるとの事で、北国を選んだ。
初めての御役(仕事のことを私たちはこう言っている)は、契約者ではない人物を連れて行くという例外的なものだった。しかも事故死。初めてなのに・・・、不安だったが次長に「あなたならできる」と言われ、困難に立ち向かう。
契約者なら、老衰や病死などなら、そこに佇んでいるはずだが、どこにもいない。まず探索からやらなくては。時間は限られているのに。
やっと探し出した相手は、思いがけない行動をとる・・・。』
図書館で借りるまで、これがホラー大賞をとった作品だと知りませんでした。面白そうな話だという情報を拾ったので探したのです。私はホラーはどちらかというと苦手なので、知らなくて幸いでした。
ぞくぞくするような恐さは全く感じませんでした。ホラーというより、ファンタジー色が強い気がします。
亡くなった人の魂を捜しに行く話は結構あって、私がまず思い出したのは「サブリエル」です。あの河のシーンは好きだな。
この話のすごいところは、人の死や、探索に向うために擬似的に死ぬシーンの克明な描写です。外からではなく内側からの描写なので、作者にあなたはもしかして死んだ経験があるの?って聞いてみたくなってしまった。
最初は連作短編集なのかなと思ったのですが、そうではなく長篇小説でした。
視点が「わたし」に固定されているので、組織の詳しいことや、世界の成り立ちなどはぼんやりとしか分かりません。でもそれはそれで良かったように思います。だって「わたし」にはそういう余計なことはいらないのですから。
最初から悟りきっているような、生きることをあきらめているような「わたし」が、静かに強く望んだこと。密やかなラストシーンは哀しくてとても素敵でした。
どこでこの本の情報を拾ったのか忘れてしまったのですが、読んで良かった~、静かに感動しました。
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図書館本
ムラカミハルキ新作予約、2番目だって、やった~!
***
車、ぶっつけた! とほほ・・・。
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まず、文章がとても上手で香気がある。一人称なのだが、なにか昭和初期の作品を読んでいるような錯覚に陥ることしばしば。物語の設定にも引き込まれる。それまで何の疑いもなく組織の命令に従ってきた主人公が、恋愛感情を知り自我に目覚めていく過程は痛々しくも力強いのだが、その恋に走ることにより、提示されていた問題が投げ出されたままになってしまったのは少し残念。この部分だけでスピンオフ作品も描けると思うので、いつの日かそんな物語も期待したい。
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図書館にて。
ホラー小説大賞受賞作ということで、予約して借りてみた。
全編に通じて静けさに満ちた作品。
ホラーというほど怖さは感じられなかったし、淡々と過ぎていく日常に差し込まれた非日常というような、じわじわとくる理不尽さ、悲しさのようなものが感じられた。
以前読んだ、「わたしを離さないで」(カズオ・イシグロ)と同じ静けさというのはほめすぎ?
中盤の曾祢さんの生い立ちのエピソードはもう少し薄くても良かったのでは?
それよりはわからないなりに主人公の幼いころの生活の描写がもう少しわかると、彼女の寂しさがもっと伝わる気がした。
ラストシーンも、なし崩し的に運良く逃げられているまま終わっているけれど、曾祢さんとの何か幸せなエピソードも欲しかったな…。
甲斐さんとのことも大樹とのことも中途半端で、大切な人と一緒にいることを選んだのなら、最後にもう一つ能動的で未来につながるエピソードが欲しかった気がする。
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死者を再び富と名誉を持った家系に生まれ変わらせる役割を持つ先導者となった「わたし」。わたしの運命を一人称の語りでつづられた小説。
ホラー小説大賞の受賞作ですが怖さというものはなく、わたしの語りの美しさや格調高い文章はどちらかというと純文学の香りすらも漂わせているように思います。
なにより圧巻だったのはわたしが死者の魂を導くため臨死体験をする際の描写力です。この作者は一度死んだことがあるのか、と思わせる生々しさがありました。わたしが魂を導く御堂の話やそこが徐々に崩壊していく話も妙なリアリティがありました。
わたしが所属する組織についての話や後半の展開などがちょっと消化不良気味でしたが、語りの美しさ、描写力に加え、物語の展開もわたしの再生、もしくは復活の物語としてとても綺麗なもので、ここをさらに突き詰めていくと、ものすごい作品を今後書かれるのではないか、という予感を持ちました。
第19回日本ホラー小説大賞