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凄い本でした。副島氏の本は世界経済の見通しを書かれていることが多いので、本屋さんで何気なく手に取ってみたのですが、この本は欧州のルネッサンス頃を記したものです。
副島氏が指摘してる通り、日本では(少なくとも私が高校の頃に習った当時においては)ルネッサンスとは芸術の話に限定されていて、宗教改革と結びついているとは教えていません。
そもそも宗教改革がなぜ起きたのかも私は知りませんでした、覚えているのは「ルター」という人物の名前だけです。そんな私にとって「ルネッサンスの意味=激しい政治思想活動(p14)」を解説してくれているこの本は新鮮でした。
欧州人たちは、ルネッサンスや当時の欧州内での長い戦争を経て、欧州人同士で争うことをやめて、それ以外の地域に進出するようになっていったのですが、それに至る背景についてこの本で知ることができたと思いました。
以下は気になったポイントです。
・ルネサンスとは1400年代に誕生したばかりの近代人による、激しい政治思想活動である、学問上の大変革運動(1439年からの60年間)であり、芸術上の大革新、そして政治上の知識人たちへの激しい思想弾圧と宗教弾圧である(p14、19、35)
・ルネサンスの中心にいたのはフィレンツエにいたメディチ家、人類史の近代を作ったヨーロッパの中心部分は、イタリアである、英・仏・独ではない(p18)
・欧州でエンペラーの帝位を1000年間名乗れたのは、ウィーンのみ、あとは国王、イギリスのチャールズ皇太子は、王太子と最近では訂正している(p20)
・ドイツ諸都市が命がけで立ち上がったのが、シュマルカルデン同盟(1531年、1546年から同盟戦争開始)、ドイツ全土で多くの都市が焼かれ負け続けた、1648年のウェストファリア条約まで(p27)
・ルネサンスの戦いは、共和政(古代ローマからある人類の長い理想)の最高度の到達点を示した、共和政とは、王様がいない政治体制のこと(p37)
・ルネッサンスの本体とは、旧約・新約の両方の聖書のギリシア語からラテン語への翻訳書の種パン活動、これによりローマ教会の僧侶たちのウソがどんどんばれ始めた(p38)
・西暦325年のニケーア宗教会議により、公然とパウロ教が出現した、三位一体説と、人間の生そのものを「罪深いもの」として決めつける、だから生涯をかけてその罪を償い、贖い続ける(p42)
・ギリシア時代に人間たちは、「生活を楽しむことをした、ギリシアの時代に戻ろう」というのがルネサンス運動である(p42)
・1530年8月12日にフィレンツェは降伏し、自治都市ではなく、メディチ家が君主待遇のトスカーナ公国、やがてコジモ1世が大公として治める君主国になってしまう(p58)
・キリストの新約聖書は、「イエスという男の物語」、パレスチナ地方を動き回ってエルサレムに紀元36年に入ってきて「自分はユダヤ王だ」と言ったので翌年に殺された(p65)
・カトリック教会のサクラメント(秘蹟)は、1)洗礼、2)堅信、3)聖体、4)告解、5)終油、6)叙階、7)婚姻からなる(p78)
・ルネッサンスを抑圧したのは、ローマ・カトリック教会、フィレンツェと、それが支援する文芸復興・人間再生の運動を煙たがって、闇に葬った(p94)
・人文主義者たちが殺されていった1498年でルネサンスは終わった(p129)
・イギリスとフランスの100年戦争(1337-1453)で、フィレンツェ市の銀行家たちがイギリス国王に貸していたお金が債務不履行となり踏み倒された、そしてフィレンツェも破産した(p141)
・ダヴィンチの偉大さは、最後の晩餐において、イエスの左側に女性(マグダラのマリア、キリストの奥さん)を描いたこと、これは絶対に口にしてはいけないこと(p195)
・フリードリヒ2世(神聖ローマ皇帝)は、グレゴリウス9世(ローマ教皇)に、第6回十字軍に行けと命令され、アラブと話し合いをした、平和的にエルサレム王になったが、ローマ教皇は激怒、第7・8回(最後)の十字軍を命じられたフランス王ルイ9世は、イスラム教徒と戦って戦死した(p205)
・重商主義の下に隠れていたのは「レッセ・フェール」で、王様の取り分として1-2割の税金を払うので、市場を守ってほしい、外敵から市場取引を守ってほしい、都市の安全を守ってほしい、というもの(p255)
・リベラリズムの背後には、人身売買・奴隷売買を認める性質が張り付いている(p256)
・プロテスタント革命で変わったのは、奴隷労働を認めないということ、しかしフィレンツェを含めたイタリア都市の商人は奴隷売買を行っていた、イスラム・インド・華僑・ユダヤ商人、スペイン商人も行っていたが、文献や史料として出てこない(p258)
・ローマ教会とその尖兵であるイエズス会自身が奴隷売買をしていた、そうやって教会・教団の運営費を稼いでいた、、当時の香料貿易とは、麻薬取引(p258)
・江戸幕府が鎖国を断行したのは、八幡船と呼ばれる黒塗りの十字架のついた大型スペイン船で、買って集めた日本人の少女たちを大量に積んで、スペインとイエズス会が東南アジアに売っていた事実を知ったから(p258)
2012年11月4日作成