紙の本
隆慶一郎氏「影武者徳川家康」のパロディ本?パクリ本?
2013/01/06 11:25
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
つまらない小説でした。
関ヶ原の戦いを前に突然死した家康を、その後、影武者が見事に演じていくというストーリー展開に、最初は引き込まれていきました。良い本を買ったと感じ入ったほどです。ところが、よほど後ろめたかったのでしょう。なんと本書の中で、ネタ本の存在を明示したのです(171ページ)。調べてみると、ネタ本は隆慶一郎氏の最高傑作らしいではありませんか!本書に対する関心が急速に冷めてしまいました。
さらに告白した辺りから、本の内容自体も乱雑になっていきます。つまり、話が突然途切れたり、呆気なく勝負が決まったり、登場人物の心理描写や感情表現が足りないため淡々と時が流れたりと散々です。全く話に広がりがありません。この辺の事情は作者本人があとがきで吐露しています。「後半、坊主を主人公にしたことが、仏教についての勉強不足もあり手に負えなくなってきて・・・(567ページ)」。なんか言い訳がましいですね。
盗作と言われない程度に肉付けを変え、ネタ本どおり話を展開すれば良いと考え、安易に書き始めたのでしょう。ところが、自分の時代見識のなさや力量不足から肉付け(誤魔化しとも言う)を続けることが難しくなり、乱暴な内容進行となってしまいました。
しかし、「パロディ」と「パクリ」の境界線ってどの辺りにあるのでしょうか?考えさせられる小説です。ただ「ネタ本を読みたくなる」という意味では、ネタ元にもメリットがあるわけで、殊更問題にはならないのかもしれません。コロッケと美川憲一との関係のようなものでしょうか。ただ、隆慶一郎氏の死後に本作を発表した荒山氏は卑怯だと思います。
いずれにしても「能力の枯渇」は恐ろしいですね。おそらく、荒山氏は今後大した作品は書けないでしょう。本人も薄々感じているようです。「書き手にとっては厳しい時代となるかもしれませんが・・・(572ページ)」。ある意味正直な方でした。
投稿元:
レビューを見る
かなり大胆な話しを“軸”にしながら、所謂“時代伝奇”、「妖しいモノを含むアクションが入って来る時代劇エンターテイメント」として綴られている。なかなかに愉しい…
投稿元:
レビューを見る
無茶な設定でもこういう脚色も割りきって読めばそれなりに愉しいからよいのではないでしょうか。映画とかにしたら面白いかも。
投稿元:
レビューを見る
面白い伝奇小説。ここまで奇想天外であると、軽い読み物としては、つい引き込まれました。でも、設定が奇抜すぎて、共感出来ません。あり得ないですよ(笑)
決して、隆慶一郎氏の名作、影武者徳川家康と一緒にして欲しくないと思います。
投稿元:
レビューを見る
設定に多少無理があるが、軽い読み物としては楽しめた。最後のオチは、冷やっとする落語のオチ見たいで良い。
投稿元:
レビューを見る
荒山徹 著「徳川家康トクチョンカガン」を読みました。
朝鮮の義勇軍に参戦していた元信は、豊臣秀吉率いる日本軍に捕らえられ、徳川家康の影武者に仕立て上げられる。豊臣に恨みを抱く元信は、怪しげな朝鮮忍者を駆使して豊臣滅亡をもくろむ。関ヶ原の戦いや大阪の陣の裏で一体何が起きたのか。そして、徳川秀忠と柳生宗矩は阻止することができるのか。
関ヶ原、大阪の陣というあまりにも有名な歴史の裏でこのような戦いがあったと誰が想像できるのか、それはまさに山田風太郎亡き後、この荒山徹をおいて他にいないという意気込みが伝わってきそうな読み応えたっぷりの歴史エンターテイメントでした。
家康の影武者が朝鮮人だったという設定にも驚かされますが、そういう展開で歴史をなぞらえていくと、思わず納得してしまいそうに感じざるを得ない所もさすがだと感じました。
また、表の戦いでの登場人物はみな歴史上の人物を配しつつ、裏の戦いでは得体の知れないすさまじい忍者を描くところも楽しめました。
特に、自分の好きな霧隠才蔵が最後まで物語に関わってくる所などもうれしいかぎりでした。
結末も荒山徹らしい終わり方でやられました。
これからも歴史の裏から歴史のおもしろさを描いていってほしいと思いました。
投稿元:
レビューを見る
http://denki.txt-nifty.com/mitamond/2009/10/post-8de9.html
投稿元:
レビューを見る
荒山徹の小説は初めて。
徳川家康の影武者を主人公とした小説と言えば、言わずもがなの時代小説傑作中の傑作、隆慶一郎「影武者徳川家康」を思い出すのだが、本作はあの名作に果敢に挑んいる本歌取り的作品。善悪の立場を反対にし、家康の影武者をまさかの文禄の役の捕虜とするという離れ業を放ってくる。
小説自体も、隆慶一郎だけでなく山田風太郎や山岡荘八いや読みようによっては吉川英治や司馬遼太郎までもカバーというかリビルドしているという貪欲さ。
ただその心意気はいいのだが、残念ながら仕上がりの粗さが気にかかる。真田十勇士の末路の乱雑さや、関ヶ原合戦までとそれ以降の秀光の個性の変わりよう…文自体も必要性がないところで文語口語が混ざっていたり、雑味が残るのは仕事の丁寧さに欠けているからではないか?
朝鮮の忍者3人衆のガッチャマンネタはやりすぎで却って興を削ぐと思ったし、オーラスのどんでん返しもあれじゃ落語のサゲやん…と、雑味というか違和感が残ってしまうのだ。
せめて伝奇小説に特化していれば、悪乗りも勢いも味わいになったのだろうが、歴史小説の側面を持たせてしまったがために、荒っぽくかつ軽薄なイメージが残ってしまったのが残念