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アフリカの神話?民間伝承??よくわからないが、独特の語り口で荒唐無稽ともいえる話が紡がれる。巻末の解説で、この物語には恐怖が満ちている(人間が生存困難なジャングルの密林や動物への恐怖)とあるが、物語の中で次から次へとでてくる恐ろしい生物や精霊なども、そう考えると不思議と納得感がある。アフリカ文化を考える上では読んでおいて損はない本だと思う。
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なんか凄い。わけがわからない…翻訳だから?元々こうなの?
飲んだくれの屑かと思いきや、まさかの。。いや、やっぱ屑、みたいな。
謎が渦巻くけど、途中からどうでもよくなる。
自由なイマジネーションの奔流、エネルギッシュな一冊。
好きか嫌いかもわからなかったので、☆はつけられない。
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読み始めて3~4ページで、読み慣れた小説とは何かが違うことに気づく。意味を取る、心理を読む、そういうおなじみの小説作法とは無縁の一冊。荒唐無稽な物語。西洋とも東洋とも違う、はっきりとした異世界感、アフリカの声。
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「わたしは、十になった子供のころから、やし酒飲みだった。わたしの生活は、やし酒を飲むこと以外には何もすることのない毎日でした」から始まるこの小説。主人公の父は、主人公には、やし酒を飲むことしか能がないのに気が付いて、56万本のやしの木がはえているやし園をくれ、毎朝150タル、午後2時には飲み干してしまうので夕方さらに75タルのやし酒を採取してくれるやし酒造りの名人を雇ってくれたけれども、ある日そのやし酒造りが死んでしまう。それで、主人公が「死者の町」に、やし酒造りの名人を呼び戻すために探しに行く話。冒頭からして「なんだこれは!」とひきこまれてしまう。しかもこの主人公は「神々の父」と名乗り、無理難題ふっかけられたりするんだけど鳥とか火に変身できちゃったりして、そんなんなら簡単だよねと思いきや、旅路の森とかにいろんな生き物がでてきていろいろ苦労する。白い生き物とか赤い生き物とかいろんなことが起きて最後もまぁやし酒飲みには会えるんだけど最後までいろいろ起きて、たしかに飽きない。教訓とかメッセージ性を特に感じさせないところもいい。アフリカには行ったことないしアフリカの民話の背景とかよくしらないから、知ったらまたよくわかるところがあって面白いのかもしれない。とにかくこの本は、異世界なかんじの面白さだった。
アフリカ文学の最高傑作らしい。多和田葉子さんの解説も、よかった。
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本作を真面目に捉えるならば、グリムやセルバンテスやスウィフト、はたまた太安万侶のようだと言えよう。しかしこれを与太話と捉えるならば地獄八景亡者戯や頭山ということになるだろう。そして自分は後者を支持するのである。
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表紙に「アフリカ文学の最高傑作」と銘打っており、短いながらも物凄い小説らしい。
現代アフリカ文学を読むのは、今回が初めてとなる。高校卒業後、いろいろと海外の文学に触れてみたが、世界史の教科書で見かけた作家の本を片っ端から読んでおり、結果的にヨーロッパの小説が中心となっていた。
そんな中で、ノーベル文学賞受賞と聞いて読んでみたバルガス=リョサ『緑の家』の衝撃。読み辛さも含め、今でも鮮明に残っている。その後に読んだ『密林の語り部』も、読みやすいこともあってより楽しめた。それまで、ラテンアメリカ文学と呼ばれる分野があることすら知らなかったが、楽しめそうな世界が広くなり、とても嬉しかった。他にも、読んだことの無い地方の文学は無いだろうか…
こうした状態で見つけたのがこの本だが、衝撃というか戸惑いというか、その大きさは『緑の家』以上だったかも知れない。「です」「ます」口調の混在や、何となくヘンな日本語への戸惑いは、まだ良い(翻訳だし)。それ以上に「何だこれは!?」と思ったのが、今までに感じたことの無い不思議な神話的世界観。
以前、古代エジプトの創世神話を読んだことがあり(矢島文夫『エジプトの神話』ちくま文庫)、少しだけ齧った日本の創世神話と併せ、あんな感じの荒唐無稽さ(あるいは、今の常識では理解できないような世界観)があるんだろうな~と思いながら読み進めていった。
だが、何か違う。荒唐無稽さもあるのだが、先に挙げた神話には無かった違和感がある。
それは、どことなく現代的なニュアンス。「七ポンド五シリング」だとか、「飛行機のような~」といったワード、読者の存在を認識し、読み手に語りかける箇所。書かれたのが20世紀なのだから当たり前なのかも知れないが、物語の中で起こる出来事は紛れもない神話世界の出来事だ。こうしたちぐはぐな世界観からは、この小説が今なお生き続けている神話なのだという印象を受ける。
肝心の内容については、各々の話が何を暗喩しているのか等わからないことだらけだったが、詳細な解説があり、その一端を楽しむことができた。
中でも印象的だったのが、恐怖という言葉。物語の中で、主人公は死を売ってしまった(?)ので、死ぬ心配が無い。そのため、一見緊張感の無さそうな状態で旅をする。ずっと無敵のマリオみたいな。だが、主人公は依然として恐怖を抱き続けている。
アフリカの人々が信じるという森林への恐怖とはいかなるものか?それを意識しながら読み返すと、また楽しめそう。森林への恐怖など、自然から離れて暮らすわが身においては、そう感じるものではない。だが、いざその恐怖に対峙した時、この物語の主人公のように、乗り越えようとする意志を保てるだろうか。
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あまり読む機会のない「アフリカ文学」作品。神話のような設定や登場人物、舞台背景などはあるものの、折々に通貨としてポンドが出てきたり、文明の利器がたまに登場したりするので、そういった部分に出会うたびに「あぁ、これは小説なんだ」と気づかされます。とはいえ、ナイジェリア出身の著者の想像力だけでこの作品が書かれているわけでは恐らくなく、現地の民間伝承や伝説なんかも組み込まれているのではないかと思います。
死んでしまった「やし酒作りの名人」を連れ戻すために旅を続ける主人公が出会う人々や訪れる街は、神話的な雰囲気が色濃く出ています。死後の世界へ入っていく部分や、死者の町に住む人々の「生きている者」との違い、主人公に降りかかる困難を乗り切るための呪術、なんでも願いを叶えてくれる冥界からの土産と、その破損による主人公の置かれる立場の暗転などは、実際にこう言う神話がアフリカにあると言われたら素直に信じられるぐらい、リアルで生き生きとしています。
他の地域の、いわゆる「神話」で描かれているのと同様、この作品でも「森林」や「川」が此岸と彼岸、あるモノたちの領域と別のモノたちの領域を分ける重要な要素となっています。自然に対する畏怖と尊敬に加え、アフリカならではの「異部族に対する意識」の現れを見ることができて、そういう部分から読んでも非常に面白い。
日本語が妙なところが多々ありますが、これは原文(著者は英語でこの小説を書いているらしい)の英語の粗さを表現するため、あえてこのようになっているらしいです。正確ではない日本語の味わいも感じることができます。
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その魅惑的なタイトルに、思わず手に取らずにはいられない一冊。岩波の惹句は「アフリカ文学の最高傑作」だが、確かに良くも悪くもアフリカらしい小説(偏見)。荒削りなストーリーの中に散りばめられた、いかにも土着といった雰囲気の民話の数々が、(翻訳で読んだので良く判らないのだが)「風変わりで不正確な英語語法」ともあいまって、クッツェーのような正確に欧米化された文学ではない、第三世界の野性味溢れる魅力を醸し出している。
訳者による論考「チュツオーラとアフリカ神話の世界」、多言語作家 多和田葉子による解説も良い。
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◆乱暴に要約すると、やし酒を飲むことしか能のない町の有力者の息子が、亡くなったやし酒作りの名人を尋ねてはるかかなたの「死者の町」へ行くという冒険の物語です。◆ですがその世界に入ろうとすると、すべてが神秘的で衝撃的なのです。「なんだこれは」という驚きと、理解が追い付かない戸惑いを感じながら読み進めてゆくと、いつの間にか物語は終わっていて、ハッピーエンドなのか、そもそもエンドなのか何なのかもわからない、そんな不思議で面白い一冊でした。
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やし酒のみが死んだやし酒造りを求めておもむく死者の町への道中は不思議で奇妙、魔術的で神話的。
しかしそんなにやし酒というものは美味しいものなのか?
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ちょっと残酷な寓話の寄せ集めみたいな感じで、小難しくなくて素っ頓狂で面白いが、整合性などを求めると全く理解のできない話となるので、深く考えずに楽しんだ。何度か読むと色々と見えて来そう。
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だ・である調とですます調、現在形と過去形が入り乱れる独特の文体から飛び出す神話的な物語。
父が雇ったやし酒名人のおかげで、毎日飽きることなくやし酒を飲んでいた主人公はある日、そのやし酒名人が死んでしまうという憂き目にあう。「ジュジュマン」でもある「やし酒飲み」が、死んだやし酒のみを探して「死者の町」へ行って/帰る波瀾万丈の冒険譚。
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死んでしまったやし酒造りを探して死者の町へと旅に出たやし酒飲み。
神話的?世界観。次から次へと摩訶不思議な展開が繰り広げられていく。
生と死の世界が絡みあい、神々との対話や擬人化したドラム/ソング/ダンスらの饗宴など、アフリカ民族の文化や価値観、思想が深くこの物語の根底にあるのがわかる。
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やし酒という酒を飲むことしか能のない金持ちのボンボン息子が、
不慮の事故で死んだ自分専属のやし酒職人を呼び戻すため、
ジュジュと呼ばれる魔術道具を身に着けて死者の国に旅立つという神話的物語。
完璧な紳士に擬態する頭蓋骨だけの一族、恐ろしい力と呪力を持った赤子、
一度入ると帰れない町、太鼓と歌と踊りの妖精による祭典、
超常的な力を持った小作人による大虐殺、全ての争いを裁判で決する町等、
混沌とした出来事を魔術と機転と幸運で切り抜ける様はどことなくユーモラス。
最初単なるごく潰しのように描かれてた主人公がいきなり全ての神の父を名乗り始めたり、万能の呪術道具を持ってる割りにすぐにピンチになったりするところもいい加減な感じで面白い。
反面、縄張り意識や共同体の輪を見だすものへの仕打ちなど村社会的コミュニティの閉塞感だったり、アフリカの規範意識のようなものがからっとした物語のなかから透けて見えたり。
文体もいきなり敬語になったり、いきなり読者に語りかけ始めたり、かなり独特だと思ったけど、原文も現地言語を英語に置き換えて作られたようなかなり破格の文体だとか。
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やし酒ってどんな味なのだろうかと、なんとなく手にとったのだが、新年早々、手に余るお話を読んでしまった。この読後感を如何せん。