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日本で電子書籍が流行らない理由は多々あるが、流通と安価で質の高い製品が電子化を阻んでいる。それはとてもいい事だが、既存のビジネスモデルを根底から覆す事象が起きれば、一気に崩れるだろう。果たして取次の存在意義はあるか?
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なかなか出版を取り巻く中の人が言い出せないことを歯に衣を着せずにさらけ出している面では、ある一定の評価。
しかし出版の遙か外にいるいち読書好きが見るこの業界の動向としては、電子書籍ビジネス以前の既得権益に触れられていないところが、非常に残念であり、そこに触れていないところが中の人の限界なんだろうなと思わせる。
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本が売れない、新聞の発行部数が下がっていると言われている。しかし、電子書籍市場を見ても、必ずしも伸びているわけではない。その最大の理由は、著者が指摘しているように、日本と違ってアメリカには書店が街にあるとは限らないことだ。ニューヨークのような大都市なら本屋はあるが、地方都市行くと本屋と呼べるところは、大学がないかぎりなかなかお目にかからない。そういう状況で電子書籍を読む選択肢が出てくれば、書籍や雑誌が読みたい人たちにとっては、ありがたい存在なので手が伸びる。
反対に、日本では、地方都市でも、よほどのことがない限り書店があり、数日遅れでも最新本が手に入る状況にある。それならば、洋書や洋雑誌を読む人でもない限り、電子書籍に手が伸びない。
新聞の売れ行きが下がっている原因としては、インターネットのニュースを無料で読めば済むと思う人が増えていることだ。それに、新聞社も企業であり、営利を追求している面はあるので、何らかの偏りがあり、たとえば世論調査で調査の仕方に怪しいところがあるなど新聞に対する信頼あるいは、新聞信仰が薄れているのも原因と考えられる。
新聞社の側も、何とか収益を上げようとしている。たとえば、日本経済新聞は、課金制をとっている。参考にしているのが、あの経済紙Financial Times とWall Street Journalだ。両社ともに世界を代表する経済紙で、課金制にしても他では手に入らない情報を売り物にしているだけになかなか読者が減らない。
しかし、日系の場合、よく言われるのが、紙の新聞と電子版の共存を図るためにデジタル版単独では月4,000円、デジタル版と併用の場合新聞購読料金プラス1000円という値段設定にしている。著書によると、2010年に始めた課金制度が、2年後には、20万人の有料読者獲得とある。日経の場合、企業や企業の商品、サービスを取り上げた記事を書いて会社員を中心とした読者がいる点で他の新聞とは違う特徴がある。しかし、その日経にしても、いつまで紙の媒体とデジタル版の両面作戦で行けるのかはわからない。あのウォールストリート・ジャーナルの日本版は、月1980円だけに、よほど読みたくなるような記事が載っていないと、読者が消えていく可能性は避けられない。
最後は、有料でも無料でもコンテンツ次第だ。せっかく読むからには何か興味がもてるコンテンツを読みたいもの。脳をビビビと刺激するような面白いものを提供してもらいたいものだ。
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電子化で苦境に立たされる新聞・出版業界の現状報告。著者は光文社が実施した希望退職者募集に応じてフリーとなったジャーナリスト、評論家。新聞・出版業界にとっての結論は、ほぼ書名の通りで、救いや希望や逆転の戦略が提示されているわけではないが、読みやすく書かれており、出版社社員である私にとっては、目の前で起こっているあれこれの事象を多少の距離を取って俯瞰することができた点で有益であった。
業界や企業の構造的な浮沈は歴史的宿命として受け入れるしかないとしても、コンテンツの劣化や報道力の衰退が文化と民主主義の危機をもたらすとすれば、絶望だけしているわけにはいかない。
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チェック項目16箇所。日本の電子出版市場は、いまだにガラケーでのBL、TLなどを中心とした漫画コンテンツが売れているだけ、いわゆる一般書とされる文芸書、ノンフィクション書、経済書、ビジネス書などはほとんど売れていない。日本では、紙は定価で電子は自由価格と別々のシステムになっている、ということは、出版社が電子書籍の値付けができなくなると、それが紙の書籍に影響し、紙の書籍が大幅に売れなくなる可能性が出てくる、安くされた電子書籍に対して、高い紙書籍を維持するのが困難になることが考えられる。日本の音楽産業は、ネット配信が普及したことでCDショップが減り、結果的に市場規模が縮小した、そこで、電子書店は、リアル書店と”Win-Win”の関係を築いていくべきだと考えているというのだ。いまの若い世代は、クルマはもとより、テレビもPCも買わないという、たしかに「iPhone」は売れても「iPad」は売れていない、そう考えると、いくら安くなったとはいえ電子書籍専用端末を買うとは思えない。アメリカ人と日本人の読書スタイルはまったく違う、日本では「立ち読み」だがアメリカでは「座り読み」だ、とくに子供たちは、床に座ってマンガが読んでいる。世間は書店の仕事を誤解している、書店の仕事は知識労働ではなく肉体労働である…朝は、まず台車を押して倉庫から本を運び、書棚の入れ替え作業、雑誌の区分け、昼は食事時間もなく電話に出て注文対応、お客に入荷連絡、レジに立てば休む間もなく、カバーかけ、1冊1冊の本は軽くとも、段ボール詰めにされたら腰が抜けるほど重い、実際、書店員の職業病は腰痛で、バイトはそれが原因で辞める者が多い。なぜ書店は大型化しないと、現状では生き残れないのか?それへあ単純にタイトルをそろえなければ、読者のニーズに応えられないからだ…読者は来店してお目当ての本がなければ、昔なら注文をしたが、いまは「それならネットで買う」となってしまう。コミック誌がやってこられたのは、連載の人気漫画をコミック化して利益を出してきたからである、コミック誌で発信し、コミックスで売る、このビジネスモデルが崩れようとしているのだ。「あるデータでは、20代のアニメーターの平均年収が110万円。それだと生活できないので、若い人がこの業界に入らない。それで、高齢化が進んでいるとも言われているます」。最近流行りの「格差社会」論でも、「上位2%の裕福層が富を独占している」などというが、漫画家の世界もまったく同じである、ただ、この構造に対し、「裕福層からおカネを取って配分しろ」とは、誰も言わないことだけが違っている。20年前全米で6万人いた新聞記者は4万人に減ってしまった、その結果、「取材空白地域」(記者が不在で取材がなされない地域)がどんどん広がった、そうしたところでは、公務員の不祥事や投票率の低下など予想されなかった現象が起きたというのだ。法廷に記者が行かなくなったため、裁判はいい加減になった、医療分野の取材も行き届かなくなったために、医療サービスも低下した、しかし、こうしたことをネットメディアは穴埋めしてくれない。テレビはもう完全にコモディティになってしまった、すでに日本でも、高画質高品質は求められていない、まして受像機だけのテレ���は新興国でさえ、競争力を失いつつある。あなたは、わたしたちの生活からどれだけ紙がなくなったか、考えたことがあるだろうか?電車の切符はいまやほぼなくなった、そのせいで、電車の改札口に係員の姿はない、銀行通帳もほとんど見かけなくなった、出入金はATMでやるようになったため、銀行の窓口係の数は大幅に減った、つまりデジタル化は失業をつくり出してきたのである。
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ITの進歩は結局のところ失業と格差をもたらしている、99%が反抗すべきはウォール街じゃない、ってとこが慧眼。
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同じ著者の「出版大崩壊」が2011年3月の発行だったので、その後が気になって読んだ。状況は大きくは変わらず、出版業界はさらに絶望的のようだ。本書では、英米の出版業界のデジタル化事情などか詳しく記述されており参考になった。
…でも、私が一番気になったのは中で紹介されていた「フィフティ・シェイズ」という小説だ。この作品は、売上でハリー・ポッターを超えたとされ、英米の電子書籍市場を一気にブレークさせたらしい。ほら、そういわれると読んでみたいでしょ?内容はポルノらしいんだけど。
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光文社を早期退職した著者の、出版業界の現状に対するなんとも言えないモヤモヤシリーズ、というと悪意があるか。
で、どうしよう?がなかなか見つからないこの手の話。日本全体の構造不況みたいな要素も少なからずあるとも思うし…モヤモヤするよなー。
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著者の言う通りなら、本当に絶望未来だ。もう救いようがないところまで来ている。確かにネットの出現で情報に対する価値がコペルニクス的に変わってしまった。デジタルに行くも地獄、紙の世界に残るも地獄で進退窮まった、というところか。
著者の分析はどれも正しいとは思うのだが、そもそも新聞とか出版物を(金を払ってまで)欲しい人が元より少ないというのが根本原因ではないのか?昔は娯楽といえばテレビと読書くらいしかなかったが、ネットとケータイの出現でいくらでも暇つぶしができるようになった。本を読むより、Twitterでしょーもないつぶやきを見たり、バカみたいに画面をこすってドロップを消す方が何倍も面白いという人が圧倒的に多いのだ。一億総白痴化政策の成果である。ICTの進化により、ようやくそういう人にふさわしい娯楽が極めて手軽に提供され始めたのが真相ではないかと思う。
という訳で、この先も出版業界が以前の輝きを取り戻すことはないだろう。ブクログメンバーのような人口の5%程度の知識人を相手にした極めてニッチなマーケットに、良質なコンテンツを提供することで細々とやっていく、というイメージ。残念だけどね。
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卒論のために購入した一冊。私が参考にしたかったテーマは、日本では何故電子書籍は売れないのか。本書では、電子書籍のヒットに成功したアメリカと比較して分析した点で、非常に分かりやすく、理解も深まった。また著者は、電子メディアからもたらされる出版不況の現状を述べた後、本書の終わりにかけて、出版業界だけでなく、様々な業界にまで負の影響が及ぼされていると警鐘を鳴らしている。ごく当たり前に大多数の国民が利用しているスマートフォンの存在が、日本の産業を脅かしていると考えると、極めて恐ろしく感じる。
2015.12.18