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システム1直感的にわかるもの、システム2計算など頭を使わないとわからないもの。システム2は怠け者で、知的努力を嫌がる。
この二つのシステムを使い、人は意思決定をしていると。例文が米国的過ぎてピント来ない箇所も多かったが、面白かった。
以下、印象に残ったトコ。
平均的には最も活発な投資家が最も損をし、取引回数の少ない投資家ほど儲けが多い。
単純で統計的なルールの方が直感的な「臨床」判断よりも正しい
ヘッドフォンの検証だと言って縦に頭を振りながら主張を聞かせると、賛成しやすい。横に振らせると、反対しやすい。
プライミング効果
笑顔を作ればよい。本当に気分が良くなるから。
親切で優しい気持ちで人に接するとよい。親切で優しい気持ちになれるから
内容がほぼ変わらない報告書が出てきたとしたら、わかりずらい社名より分かりやすい社名の会社の物を信用する。
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結論部のリバタリアン・パターナリズムの議論は特に興味深かった。
多くの人が抱いているであろう「合理的な経済主体」という考え方がいかに現実とそぐわないか、本書を読めばよく理解できる。これは個々人の生活から政策決定レベルまで広く影響を及ぼすような、かなり驚くべき事実だと思う。
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第5部 「二つの自己」は下手な自己啓発書よりよっぽど幸福になるための方法が書かれている。
人間の体験に対する評価方法は「持続時間の無視」と「ピーク・エンドの法則」で決まる。
従って休暇を過ごすときはこのことを念頭に置いて計画を立てれば、思い返した時に素晴らしい休暇になるはずだ。
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下巻では、まず行動経済学として知られることになった人間の選択行動について論じられている。さらに、二つの自己として、経験する自己と記憶する自己の違い、苦痛や幸福の評価軸の違い、について論じられている。双方とも興味深いテーマである。
第四部は経済的合理人である「エコン」に対して、系統的に誤る「ヒューマン」を対峙させる。この議論が、行動経済学の名で知られる意志決定に関する理論である。プロスペクト理論という名前でも有名で、S字を描く価値関数のグラフで知られている。人の選択において「参照点」「感応度逓減性」「損失回避」の特性を考慮すべきとされている。いったん保有するとその価値以上に手放すことを忌避する傾向「保有効果」も有名だ。
たとえば、同じ金額であっても選択にあたっては、変化の絶対値よりも割合の方を重視するとか、得る方よりも失う方を重視するというものだ。これらは「システム1」の特質から導き出せる。期待値よりもリスクを嫌う、変化の大きさに反応する、ということが人が適者生存の過程で生き残るにおいて有利に働いたということだ。言われてみればそうだよなというものだが、慎重にデザインされた実験から導き出されたのは最近の研究からだ。この辺りの議論は、本書でも何度も取上げられているがセイラーとサンスティーンの『実践行動経済学』と合わせて読むとよいだろう。
めったに起りそうもないことに対して過大な重みづけをすることも知られているが、「システム1」で解釈可能とされる。質問の表現の仕方(「10%が死ぬ」か「90%が生き残る」か等)で選好が大きく変化することを示したフレーミング理論も行動経済学の大きな功績とされている。
これらの選好に関する結論だけでなく、その結果が導き出される実験についても解説が詳しい。本書が長くなっている原因でもあるのだが、非常に重要なポイントでもある。
第五部は、「経験する自己」と「記憶する自己」の話。
記憶に基づく評価はピーク時と終了時で決定され、その持続時間には影響されないというものである(持続時間の無視とピーク・エンドの法則)。つまり、記憶されるものは経験されたものと同じではないということである。記憶する自己自体は「システム2」の産物かもしれないが、その快楽の評価は「システム1」から来るものである。それは記憶というものが何のために進化の過程で獲得されたのかをも示している。
まとめると、これらのことを「システム1」と「システム2」という仮説モデルにて説明したのが、本書である。ある分野の活性化など脳神経学の知見にも一部言及されているが、今後より具体的な研究が進む分野となるだろう。コールドウェルの『価格の心理学』でも参照されているが、実際のビジネスや政策にも適用される分野で広がりが期待できる。
改めて、細かいところは飛ばしてもいいので、読むべき本。
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プロスペクト理論
損失回避性 利益を手に入れようという動機よりも、損失を回避しようとする動機のほうが強い
保有効果
経験効用ー決定効用
ピークエンドの法則
持続時間の無視
エコンとヒューマン
経験する自己と記憶する自己
焦点錯覚
あなたがあることを考えているとき、人生においてそのこと以上に重要なことは存在しない
脳は物語を扱うことには長けているが、時間をうまく処理するようにはできていない
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人の行動を左右する因子は多くあります。
アンカーリングとは、最初に見たことや聞いたことにその後も左右されてしまうこと。
ハロー効果とは、あることにより全てのことが引きづられてしまうこと。例えば学歴や良い業績などにより、その人がすべて素晴らしいと思えてしまうことです。
プライミング効果とは、慣れ親しんだものが好ましく思えることです。
エンディング効果とは、最後が良いか悪いかで全ての印象が変わってしまうこと。
人の金銭感覚は、現状維持して損失を回避する方向に向かいます。そのために損失に目を向けないように利益を強調することが大切です。
とにかく人は、自分に対して過剰な自信をもち、自分を過大評価しています。
だから偶然によって起こったこともすでにわかっていたように後知恵で錯覚理解することがあります。
また失敗を認めたくないために追加投資(サンクス費用)をして失敗することもよくあることです。
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行動経済学の創始者としてノーベル経済学賞を受賞した心理学者、ダニエル・カーネマンの、認知心理学(及び行動経済学)に関する入門書、の下巻。
上巻で認知心理学に関しての知識の土台を作った上で、下巻ではその基礎の上に、行動経済学についての話が展開されている。
主に、経済学におけるいわゆる「効用」について、経済学では人間はこれを合理的に計算した上であらゆる行動の判断を行っていると仮定されているが、普通の人間はそんな完全に合理的には考えられない様に出来ているんだから、その不完全な合理性の部分も、計算の根元としては必要なんじゃないの?というお話が主題、だと思う。
認知心理学の応用例としても楽しいとは思うけど、経済学の基礎を知っているとなお楽しい。
経済学に興味があれば、是が非でも読むべき本と言って良いんじゃないだろうか。
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下巻は、ノーベル賞を受賞したプロスペクト理論と、幸福感に関する実験。プロスペクト理論はさすが本人、どうやってその考えに至ったかがストーリーになっていて分かりやすい。幸福感について、実験結果は当たり前なのだが、考察が興味深い。本人が幸せに感じることが本当に幸せなのか?社会福祉は、本人が選択する幸せを与えるべきか、社会が決めた幸せを与えるべきか?
筆者の2つの幸福感の考え方はシンプルだが応用がききそうである。
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「テロは、利用可能性の連鎖を引き起こすのである。」
認識としての直感は、たとえば消防士がなんとなく危険だと思う場所を避けた次の瞬間に爆発した、というようなものである。これは奇跡的に分かったのではなく、今までの経験と新しい現場に向かう最中の思考実験によって認識されたものであるので、奇跡ではない。
分母の無視:確率で事象を現すように、何人中何人が、と表すことで低い確率のものをより深刻に考えさせることができる。
貧しければみじめ:貧しい人は裕福な人よりも生活に満足を感じていない(=幸福度が低い)、しかし、ある程度の裕福度に達すると、そこから先はより幸福になれるわけではない。換言すれば、幸福はある程度お金で買える。
死亡前死因分析は面白い!
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システム1とシステム2
エコンとヒューマン
経験する自己と体験する自己
人間ってのは間違えてしまうこともあるとのこと。それでうまく行ってる(資本主義の柱の一つの株の売買ってのはどちらの予想が間違えてないとなりたたない)らしい。
即断即決せずにゆっくり考えるとシステム2が働いて、システム1のうっかり間違えはなくせるとのことなので、じっくり考えましょう。
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「ファスト&スロー-あなたの意志はどのように決まるか?-」の読書会
日付:2013/12/16 作成者:とことこ(大塚 拓)
〇この本を一言で表すと?
人間のいい加減かつ複雑な意思決定方法を実例を交えてわかりやすく説明した本
〇全体の感想・その他
・ システム1(早い思考)とシステム2(遅い思考)に分けて考えるの画期的でわかりやすい。意志力や思考力が無限である・有限であるとの議論の矛盾点がこのファスト&スローで説明できるのではないか。
・ 人は現状から悪くなる点はなかなか受け入れられない。この原理が便利になったが豊かさが失われていく社会なのかと思った。
・ 画期的な理論であることに間違いないが、本書で辛辣に説明しているベルヌーイやビジョナリー・カンパニー、マルコム・グラットウェルほど売れる本にはならないと思われる。
→人はいい加減でも経験から納得できる因果関係の説明のほうが好まれるのではないか
〇よかった点
・ 説明の仕方や実例もとてもわかりやすい。各章の具体例がとても腑に落ちるし、面白い。
・ プロスペクト理論の欠陥(下84)(落胆や失望の勘定)を認識し、説明しているところが潔くてよい
→これも理論的に納得のできる解明がされるときが楽しみ
・ 直感とは認識以上でも以下でもない(下12)。記憶や経験の豊富さが大事でこれから積上げていきたい
・ 平均以上か以下かは簡単か難しいかで変わる(下46)。対人関係が苦手な人が多いことが納得
・ 誉めることと叱ることの士官からの反論について的当てでの説明はすごく納得させられた。(上259)→一方で少しひっかかる点もある。誉める叱るについて、参照点の考慮や個人の特性の考慮はされないのかなど。
〇突っ込みどころ・気になる点
・ 統計学者の権威を騙せたことを喜んで理論の正しさを説明(上219)しているが、その一人の統計学者が騙せなかったらどうするつもりだったのか?ちなみに生徒の騙された割合はそっくりと記述だけ
・ 作者のストーリーが多く、冗長になっている感がある。ただし、それが行動経済理論に訴えかけた説明なのかもしれない。
〇実践してみようと思うこと
・ 会議が始める前に先に参加者の意見をまとめておくこと。(上127)(自由討論だと最初の発言者の意見に寄った考えになるというのはすごく納得)
・ プロの投資評論家の意見は鵜呑みにしない。(上312)(プロに巻き上げられないように)
・ 過ぎたるは及ばざるがごとし。(上236)(並列比較と単品比較の例はわかりやすい)
・ 同じ意味でも損失より利益という言葉(下211)を多く使っていこうと思う
・ 説明する順番(上124)とピーク・エンドの法則(下218)は常に意識しようと思う。プレゼンでも
〇みんなで議論したいこと
・ 下126 四分割のパターン リスク追及とリスク回避のみんなの意見
・ 上258 誉めると叱る、それぞれの効用や効果について
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「エコン」と「ヒューマン」についてはあまり興味を抱かなかったが、「二つの自己」はストライクだった。経験と記憶がどのように相互関係にあるのか、その特徴がよくわかる。
巻末の論文の資料価値も高い。
〈スキル習得の基本条件〉
①十分に予見可能な規則性を備えた環境であること
②長期間にわたる訓練を通じてそうした規則性を学ぶ機会があること
→この二つがあれば直感はスキルとして習得可能である。まず規則性を見いだすこと、その上でその規則性を学ぶコンテンツを作成することが重要だ。
楽観バイアスは、認知バイアスの最も顕著なもの。人は自分の立てた目標は実際以上に達成可能だと思い込む。
行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれやすい。後悔も含めて。
「フレーミング効果」
問題の提示の仕方が考えや選好に不合理な影響を及ぼす現象
〈経験と記憶〉
記憶の特徴は、「ピークエンドの法則」と「持続時間の無視」。
経験と記憶を混同するのは認知的錯覚。
過去から学んだことは将来の記憶の質を最大限に高めるために使われ、必ずしも将来の経験の質を高めるとは限らない。
きっと記憶に残るだろうと感じられる経験は、そうでない経験より大きな重みと意味を獲得する。
「焦点錯覚」
そのとき注意が向けられていた生活の一要素が、総合評価に置いて不相応に大きな位置を占めることになる。
システム1に起因するエラー防ぐには、認知的な地雷原に入り込んでいる兆候を見落とさず、思考をスローダウンさせ、システム2の応援を求める。
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エコン(合理的経済人)とヒューマン。
80%の確率で100万円•20%は0円と、確実に46万円もらえるのとどっちがいい?という時、エコンは期待値が高い前者を選び、ヒューマンは後者を選ぶ。
前提が違うのは、経済学と心理学という分野の違いだと思うけど、学生の時はエコンに固執していたなあ。ヒューマンという考え方でもう一度あの題材を取り扱ってみたい。
また、公正性に対して参照点があるというのも興味深い。10ドルのスコップが売っていて、大雪の日に需要が上がるから15ドルにした。エコンは正しいと考えるが、ヒューマンは不公正と考える。
さらに、10ドルで雇っていたバイトの給料を、失業者がたくさん出た際に7ドルに下げるのは不公正と考えるが、そのバイトではなく新規バイトを7ドルで雇うのは公正とする。参照点を何にするかは大切。
企業も、社員の給料を下げたい場合は、今いる人は据え置きで、次に入社してくる人や中途採用者の給料を下げた状態で雇うのが反発は少ない。
利得と損失では、損失への効用は利得の2倍。
テロは利用可能の連鎖を引き起こす。統計的に無視できる確率であったとしても。
ヒューマンは、合理的な判断をしていると考えていても、実は損失回避性が働き、適切な判断が出来ていないことがある。
個々の判断よりも総和で考えるほうが、期待値は高くなる。
サンクコストはサンクコスト。現状で最善の選択をすることが必要。赤で終わりたくないとか、気質効果まんまだよね。
大事なのは並列評価だ。単独評価では回答が変わってくる。
宝くじが300円で、期待値は145円だから、「1550円損する宝くじを買うかどうか」という質問にも置き換えられる。ぷぷっ。
燃費と環境問題もそう。リッター18kmを25kmにする努力よりも、リッター5kmの車を10kmの車に交換するような施策の方が効果があるかも。まあ、どれくらい使われているかという前提次第だけど。
訳がうまいのもあって、スラスラ読めるし、読むと賢くなった気にさせる良書でした。
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システム1(直感)の錯覚をシステム2(熟考)にいかに是正させるか。ということで直感が犯す間違いがこれでもかと出てくるが、中には、その間違いは人としていいんじゃないかと思うようなものもある。また、直感の間違いっぷりがいかにも数字に弱いアメリカ人らしく、アジア系なら結論は変わらないにせよ、もう少し比率が変わってくると思われる。
折に触れて思い出すと、仕事にもプライベートにも様々な場面で応用が効きそうな手がかりがてんこ盛りであり、興味深い本であることは間違い無い。
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下巻では2つの人種と2つの自己が語られる。2つの人種とは、理論の世界に住む、経済学に登場する合理的な存在のエコンと現実の世界に住む、行動経済学に登場する合理的ではない存在のヒューマン。2つの自己とは、現実を生きる「経験する自己」と記録をとり選択をする「記憶する自己」。
直感や計画の錯誤、楽観主義によって、大抵予測は外れる。この話は上巻の、システム1,2の続きだ。
そこから、従来の経済学よりも現実に則したプロスペクト理論が説明される。効用は参照点からの変化に影響され、さらに損失は利得より強く感じられる。保有効果や損失回避、単独評価と並列評価が不一致する選好の逆転などにより、人間はエコンのように合理的にはなれない。
また人間には記憶する自己を過大評価し、エンディングの記憶が幸福度の評価になりやすい。このように人の心理に従って正しく幸福の計測値を図ることは、政策などにも関わってくる。