紙の本
圧巻の法廷劇
2017/05/16 21:16
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投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻ではぱっとしない捜査が続きますが、下巻でアレックスが夫を殺害した動機がついに明らかになります。裁判が始まってから一気におもしろくなった。特に最終章の法廷シーンには圧倒される。大英帝国の習慣や常識が、ラスボーンの弁護をより難しいものにしている。そんな中でもラスボーンは熱弁をふるい悪を白日の下に引っ張り出す。余分なエピローグがなく、評決がくだされ正義が勝利を収めた場面で幕を閉じるのは心地のいい余韻を残します。
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高名で誰からも尊敬される将軍が殺され、その妻が犯行を認める。
夫の浮気が動機だと思われたが、妻は頑なに沈黙を守り続ける。
被告人を救うため、弁護士ラスボーン、モンク、ヘスターが奔走する。
おかえりなさい、アン・ペリー。
そしてやっぱり面白かったよ。
真相はそれほど難しくはないのだけれど、如何にしてモンクとへスターがそこに辿り着くか。そしてそれをラスボーンがどう調理するか。
その道のりが面白くて夢中で読んでしまった。
特に圧巻は下巻100Pをすぎたあたりからの法廷シーン。
陪審員はじめ、誰もが有罪で絞首刑が妥当だと思っている被告を救うためにラスボーンが行う弁術は、迫力。
19世紀半ばのロンドンを舞台にしたほろ苦い勧善懲悪なストーリーだけど、被告の立場になったら自分はどんな手段をとれるだろうか?と考えてしまう。
相変わらず空気の描写にも富んでいて、そのためにキャラクタがみな生き生きしているのも好きだ。
次作、はよはよ!
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注目の歴史ミステリ、迫真の後半。
看護婦ヘスターは、クリミア戦争から帰国後、個人で働いていた。
雇い主のティップレディ少佐に励まされ、事件の経過を報告し続ける。
この少佐が感じのいい人なんですよ。
ヘスターは友人イーディスに頼まれて、事件後に険悪な空気の漂う堅苦しい家庭にも足を踏み入れる。
高圧的な祖母、居心地の悪そうな姉娘、表情を変えないその夫、不安定らしい孫娘と思春期の息子。
浮気相手と噂された派手な女性とその一家。
皆、何かを隠している‥?
イーディスの義姉アレクサンドラの弁護は、有名な弁護士ラスボーンに依頼した。
ラスボーンとモンクとは、前2作でも事件解明に協力した間柄なのだ。
アレクサンドラは自供しただけで沈黙を守り、真の動機を明かさない。
事情によっては、死刑を免れることはありうる。
残された子や家族のためにもと、ヘスターも努力を続けるのだが。
私立探偵のモンクは記憶を失った元警官。
しきりに記憶から浮かび上がる美しい女性は誰なのか?という問題も抱えていた。
突き止めるために、気のいい元部下エヴァンの協力を得て、過去の事件の現場を訪れるが‥
記憶を失う前のほうが厳格で人付き合いの悪い性格だったらしいモンク。
ヘスターともやり合うのですが、どこか魅かれ始めている?
いざ公判になるとラスボーンの見せ場。
希望のなさそうな裁判の描写がしだいに盛り上がり、息もつかせぬ迫力。
陪審員や判事の偏りも、現代とは違うんですね。
子供は夫のもの、という妻には親権のない時代の実情が突きつけられます。
読み応えがありました。
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記憶喪失の私立探偵が主人公のシリーズものだった。過去を思い出そうとするストーリーが並行して描かれ、余計な時間をとられたという感は強い。また全体にゆっくり進むので、ある程度の忍耐は必要かも。だがその価値はある。
動機が判明する前とそれ以降で、ストーリーの雰囲気は異なる。後者にあたる法廷シーンは読み応えあり。通常のリーガル・ミステリの場合、弁護士と検察の攻防を描くことが多いが、本作品では、被告と証人にスポットが当たる。これほどまでに被告の想いを痛感する作品も珍しい。深くて重い法廷シーンはまさに傑作。
ヴィクトリア朝の雰囲気もよく出ているが、全体的に冗長でもある。キャラクターは魅力的だが、いかにもな人物造形がやや浅く見えなくもない。
よくよく考えてみれば、この時代にこの動機はアリなのかな。その後の展開を考慮するに、荒唐無稽な匂いもするのだが、冒険と言えば冒険かな。圧倒的な説得力があるから結局チャラになってるのかしら。
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上巻の退屈さとはうって変わって、下巻は一気呵成で読了。
最大の山場である法廷でのやりとりがタップリ描かれる。
この本のテーマは価値観の違い、モラル、階級社会、ということになりそうだ。
出番は少ないがこれらのテーマを体現した、老家庭教師の凛としたたたずまいが印象に残る。
ミステリが好き、歴史小説も好き。でも歴史ミステリは苦手ということを再確認。
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久しぶりにアン・ペリーを堪能しました。上巻はかなり緩慢でちょっとだれてきたんですが、後半の裁判の様子はハラハラドキドキの連続でした。事件の背景にある真実は何か?アレクサンドラはなぜ真実を告げないのか。関係者誰もが口を閉ざしてしまっているのを、どうやって真実を立証していくのかが、とてもドラマチックでした。
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ヴィクトリア朝時代を舞台にした刑事(元)モンクシリーズ。
名将軍が、晩餐会の夜刺殺される。そして、その妻が犯人として逮捕される。
将軍の妹と、看護婦のヘスターが知り合いだったことから、事件は弁護士ラスボーンとモンクのもとにもたらされる。
なぜ妻が殺害に至ったかが論点になるのだけど、そこに至るまでがすでに長い。上流社会の持って回したやりとりが延々と続く。が、そこにその時代の光と影がじわっと浮かび上がってくるのだから、上手いとしか言いようがないのである。
やっぱ、アン・ベリーは空気というか、空間とか熱量とかを描くのが上手い。
と、相変わらず記憶喪失状態のモンクなんだけど。
記憶がない故に、思わぬところで客観的になってみたり、曖昧になったりと、不安定なのだ。それを表に出したりはしないんだけど、不安定さを自覚しながらぎりぎり踏ん張ってるのが時代とシンクロしているように思えた。
結末へ向かってのどんでん返しの連続は、まさに息をのむって感じでした。
面白かった。
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下巻は前2作になかった法廷劇がほとんどを占める。
物的証拠がないから頼みの綱は関係者たちの良心と彼らの証言だけ。
おまけに世論も陪審員も夫殺しの妻への非難と憎悪に満ちている。
そんな圧倒的不利の中で、ラスボーンがじわじわと着実に証言者たちから真相を引き出し、最後に勝利を収めるシーンで幕を閉じる。
結末自体はモンクシリーズ3作の中で最も爽やかだが、事件の根幹にある忌まわしい性癖には心底胸くそ悪くなった。
映画『スリーパーズ』を観た人なら途中から事件の発端が何なのか察しがつくのではないかと思う。
だが忌まわしさはさて置き、ストーリー、特に舞台が法廷に移ってからの展開は一気に読ませる勢いがあり、上巻でぐずぐず読み進めていた時間の半分で読み終えた。
事件の解決と平行してモンクの過去の密やかな恋愛事情も明らかになったが、明らかになった途端に終わってしまったw
モンクのへスターに対する気持ちが、喧嘩のできる戦友から少し前進したようだが、それでもラスボーンのほうが一歩先を行ってるので、モンクはまだまだ頑張る必要がある(笑)
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19世紀半ばのイギリスを舞台に記憶喪失の元警部モンクとクリミア戦争で従軍看護婦として働いた経験をもつヘスターが主役。ある将軍が妻によって無惨に殺害される。妻は既に罪を認めて監獄に。妻の自白により嫉妬が殺害理由とされていたが、ヘスターが貴族の友人達の会話を重ねるうちにおぞましい事実が浮かび上がる。
殺害理由は結構早めになんとなくわかるけど、厳格なしきたりに縛られたビクトリア朝時代にそれをあぶり出していく過程や法廷でのバトルで読ませる!
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なんというドラマチック!怒涛の展開に一気読みしました。
19世紀イギリス。高名な将軍が死に、その妻が殺人を自白した。
妻の人柄から、その自白を信じられないその義妹から相談された看護婦へスターは友人の弁護士と元刑事の探偵とで、調査を進めていく。
全体の6割は、殺人の動機を探り、残りの4割は法廷でのシーン。導入はへスター、調査パートのメインは探偵モンク、法廷パートでは弁護士ラスボーンがメイン。
はっきりした証拠もほとんど見つからずもやもやしたまま、裁判が始まりますが、そこからがスゴイです。その時代ならではの状況も含めてこれ以上無い結末が待っていました。
これはほんとに面白かったです。
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下巻の方が読み応えあるのは、やっぱり法廷シーン故なんだろうな。シリーズものとは知らなくて、いきなりこの本から読んだから主役3人の絡みとかモンクの記憶喪失とかそういうのが分からなかったというかいっそどうでもいいというか(…)なところもあるんだけど。陪審団が下した結論に、これだから法だけに依らない陪審員制度って必要なのかも、と思う。
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女王やナイチンゲールが尊敬される時代にあっても、一般(貴族も含めて)女性には堪え忍ぶことが求められていた19世紀のイギリス。
時代背景も含めて、とても面白く読みました。街や社会の空気が事細かに描写され、当時の情景が目に浮かぶよう。
ただ、途中、モンクの『過去への旅路』エピソードが要所要所で挟まれるので、ちょっともどかしい。それは後回しで、と何度思ったことか…。
裁判開始当初は劣勢だったモンク達陣営が、形成を逆転していく様は胸がすくよう。とは言え、事件背景は胸が悪くなるようなシロモノです。が、教会ではよくある話かも。
それにしても、時代が違えど日本では考えられない裁判。そこでその証人を召喚できるとは…。