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言文一致体が出現する前後の短篇小説のアンソロジー。二葉亭四迷の言文一致体がいかに偉大な発明だったかを、ここに収録されている雅俗折衷体の読みにくさを体験すると良く理解できる。二葉亭四迷の作品が収められていないが、短篇小説は無いのか。雅俗一致体の坪内逍遥の「細君」から、言文一致体の国木田独歩の「武蔵野」、広津柳浪「雨」まで様々な短篇小説を読んだが、言文一致体で無いと感情移入が出来ず楽しめないことを実感した。
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緑雨とかかなり苦手なんですが(って言うか、理解するためのリテラシーがこちらに全く身についていない)、時代的には規範化された小説文体が確立される前までの、多様な表現が楽しめました。
その上で、それぞれの作品において現代とリンクするところもたくさん見えるというのが興味深い。水の主題、母恋い、姉に萌える(笑)という設定を投入しながらファンタジック世界を形づくる鏡花の構成力、一葉の「わかれ道」の吉ちゃんのやさぐれた感じ、それと吉ちゃんとお京さんとの会話は映画のように活き活きしているし、柳浪の「雨」における貧しい若夫婦の会話も、泣かせる芝居のよう。このシリーズ、未読はあと一つ「昭和篇3」のみ!
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小説の黎明期である明治22年~35年に発表された短篇小説12篇を収録。
逍遥、鴎外、紅葉、一葉、美妙など有名な文豪達の作品を近い発表年で並べて読んで行くと、雅文体、雅俗折衷体、言文一致体と入り乱れ(特に明治20年代の作品達)、各作家達が「文章」の書き方についてそれぞれの方向に工夫している様がくみ取れて面白いです。
以下、収録作の中からお気に入りの感想など。
逍遥の「細君」はこれを最後に小説から戯曲の方へ移ってしまった作品。当時の女性の置かれたままならない立場を描く。
山田美妙「この子」は婚約者の素行調査を新郎自身が行うというシチュエーションが面白く、ちょっと探偵趣味的一篇で言文一致の文章ともあわさって今も読みやすい。
尾崎紅葉「拈華微笑」はヒネリの効いたユーモア小説といった体で、美人に微笑みかけられてのぼせ上がってく様の描き方などニヤニヤさせてくれますね。
幸田露伴「対髑髏」は怪奇譚じみた一篇。美人に迫られても頑として断る堅物露伴先生が面白かった。
どの作品も冒頭に1ページ使って作者紹介とざっくりあらすじ説明が入っているので、とっかかりやすくて良かったです。