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帯文:"誠実、臆病、傲慢、吝嗇―食卓は人間の性格がもっともよくあらわれる場。特異な大食漢バルザックの小説を「食」から読みとく。" "時代と人間を「食」から読みとく"
目次:はじめに、第1章 バルザックの食卓、第2章 レストランの食卓、第3章 宴の食卓、第4章 家庭の食卓、第5章 吝嗇の食卓と食道楽の食卓、第6章 女たちと食卓、訳者あとがき
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1789年のフランス革命によって、料理人は主人とともに
国から逃げるか街に出てレストランを開店することになった。
バルザックは街の食事風景がこのように変化した直後の作家であり
作品に美食を取り入れることはメリットであると理解した
最初の作家である
著者はこの本で『人間喜劇』における「食」にスポットを当てている
バルザックの作中の大食の登場人物は食以外は不幸なことが多い
逆に金にこだわるあまり食=悪とみなす生活によって不幸なこともある
「食」によって登場人物の人生の印象を浮き上がらせている
2016年1、2月はバルザックを読む予定
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我ながらバルザックの作品を
ほぼ一編も読んだことがないに等しいのに
よくも読んだな
という本ですが
しかし 思った以上に面白く読めたので
バルザックの作品 人となりに
多少でも興味がある方には
おすすめできると思います
登場人物の個性が
料理によって書かれているのは
説得力がありますね
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バルザックの『人間喜劇』の登場人物は2000人以上といわれている。
バルザックは十九世紀に生きているありとあらゆる人々を描き出そうとしているわけだ。バルザックが生み出した人々はバルザックの小説のなかで、それぞれの生活を営んでおり、それは当時、フランスで生きていた人々のほとんどに当てはまる環境や境遇であったといえなくもない。
バルザックの小説はロマン・フィュトンで発表されていたが、市井の人は、食事をとりながら新聞を読み、そこに描かれている世界を楽しんだのだ。
バルザックは糖尿病であったといわれている。それはとにかく大食いであったという逸話からきているものだが、晩年の失明からも推察されるものである。
また、バルザックはコーヒーをガブ飲みしながら執筆をしたということも有名である。
暴飲暴食であるバルザックは、実は、執筆中は食事をほとんど摂らず、コーヒーを何杯も呷るように飲みながら長時間書き続けた。消化に伴う疲労が脳に影響しないように仕事をしている間には食を断ったらしい。
脱稿すると豪胆に食べ、ワインを飲んだ。
つまり、登場人物が食べている時はバルザックは食べず、彼が食べている時には、登場人物は誰も食べることがない。
これは思えば、とても面白い事実である。
バルザックは大食漢であっても繊細な美食家では決してない。登場人物にどのように食事や料理をさせるか、誰とワインを飲ませるか、どこのレストランにどのような身のこなしで送り込むか。書いていくと際限がないが、このようにバルザックは食を利用する。
著者は19世紀のパリの食生活には変化を鋭敏にとらえ、小説世界に取り入れていったバルザックに着目し、食の観点からバルザックの小説世界を検証していく。
食は人のもっとも基本的な柱となるものである。本書はバルザックの小説から19世紀の食卓を垣間見つつ、お馴染みの登場人物たちにも会える楽しい書物となっている。