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特に興味深かったことは以下の2点。
・ウィルスは生物の進化に深く関わっている。例えばウイルス由来の遺伝子は、胎盤の形成に関わっている。
・最近になって発見された巨大なウイルスは、光学顕微鏡でも確認でき、生物的な道具立てが整っている。そして、これらは、例えば、真核生物、真正細菌、古細菌につぐ第四のドメインを形成するという仮説もある。
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本書の中でも触れられていることだが、ウイルスは全く目に見えないだけにイメージするのが難しく、それ故にいまひとつ理解しづらいと思う。本書は入門ってだけあって、適切な分かりやすい図表が適宜挿入されており、理解し易いように順序だって説明がなされているため、とてもとっつきやすい内容になっていると思う。意外にサラッと読めてしまうのも好感度高いす。
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「病原体」としてのウイルスの生活環や増殖の仕組を見た後、近年発見された巨大ウイルスを踏まえて、単なる「病原体」にとどまらないウイルスの役割や起源などの仮説を提示する。ウイルスの種類や仕組み、近年の知見などが軽い筆致で平易に記述された良書。
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ウイルスに関する一般的な知識に加えて、巨大ウイルス発見という新しい話題、そしてウイルスの起源と生物進化に関するやや突っ込んだ話まで、一般向けに平易に書かれた本である。
「ウイルスって何?」という疑問が生じたら、まず読んでみるとよいだろう。
ウイルス(virus)の語源はラテン語の「毒」である。細菌よりも小さく病原性を持つものとして見つかってきた。DNAまたはRNAをゲノムとして持ち、宿主細胞内でのみ増える存在である。
ウイルスは、自力では複製できないことから、現在、一般的には生物でなく物質と見なす研究者の方が大勢を占めているようだ。但し、この辺りは「生物とは何か」という議論の裏返しでもあり、今後、定説が変わる可能性もある。
ウイルスが注目されてきたのはなぜかと言えば、もちろん病気を引き起こすからなのだが、ウイルスの存在は、病原体というだけには留まらないのではないかというのが本書の1つのテーマである。
ウイルスの分類、生活環、病原性のメカニズム、生物進化において果たした役割、巨大ウイルス発見がもたらしたもの、という流れで進んでいく。
何らかの結論を導き出すには、まだ決定的な証拠を欠く段階であるように感じるのだが、ウイルスの起源や生物の細胞核の発展というテーマはなかなかスリリングで可能性を秘めていると思う。
著者は努めて平易に書きつつ、一方で参考文献に学術論文も入れるなど、詳しく知りたい人への心配りもあり、親切な本だと思う。
が、くだけた口調が親しみやすいと思うか鼻につくと思うか、反応が分かれそうな感じが、個人的にはした。
*個人的におもしろいなと思ったのは、
・ノロウイルスと血液型:ノロウイルスは細胞表面の糖鎖に結合することで宿主に入り込む。この糖鎖は赤血球・十二指腸・小腸で共通するものであるらしい。赤血球の糖鎖といえば、つまり血液型を決めているもの。そのため、ある型のノロウイルスにはO型のヒトが感染しやすい、なんてことが実際にあるようだ。どの型のヒトが感染しやすいかは、ノロウイルスの種類によっていろいろのようだ。
・インフルエンザの亜型(H○N○といったもの)は、A型インフルエンザについてのみ。BやCでは多少の変異はあれ、亜型を形作るほどではない。
・巨大ウイルス、ミミウイルスには、コバンザメのようにくっついてくるヴァイロファージなるファージがいる。正確には感染ではないようだが、ミミウイルスと一緒に宿主に感染し、最後にはミミウイルスを破壊してしまう。
ミミウイルスにしれみれば、宿主をやっつけて、してやったりと思ったら、自分がしてやられていた、みたいな。
**病原性を持つ厄介者というだけではないという視点は、細菌を扱った『細菌が世界を支配する』を思い出させる。
**ウイルスと進化というテーマについては、『破壊する創造者』も参考になるかもしれない。
**中国発のH7N9インフルエンザウイルス。大流行に転じるかどうかの鍵を握るのは、ヒト間感染がどのくらい広がっていくかだろう。cf.『パンデミック新時代』
異種間感染から��種間(ヒト・ヒト)感染に変わっていく経緯については、『インフルエンザ・パンデミック』(河岡義裕ほか・ブルーバックス)が参考になる(本書でも参考文献に挙げられている)。但し、本書より骨があるので、少々気合いを入れて読んだ方がよいかもしれない。2009年、H5N1の大流行が危ぶまれていた当時の本であるため、具体例はそちらの亜型に関してだが、大まかなイメージは掴めると思う。乱暴に総括してしまえば、ウイルスがヒト上気道で増殖できるように変異し、その結果、症状も重くなり、咳やくしゃみによる伝播も簡単になるのが1つのキーポイントであるようだ(もちろん、他の要因も絡んでくるのでそれほど単純な話ではない)。
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ウィルスというと病原体という印象が強いが、ウィルス自身は環境に適応して存在・存続し続けようとしているだけであり、生物との共生関係にあったり、生物の進化に影響を及ぼしたと考えられるウィルスは、生物史や生物の存在にとって重要な役割を担っている、というのが著者の主張の骨子だと思う。
そういう主張も新鮮ではあるが、ウィルスの構造や増殖の仕組みについての解説が面白かった。つまり、一般向けの本として、ウィルス自体についての基礎知識を与えてくれるという意味で、読んでよかった。特に、ウィルスが細胞に侵入する仕組みや、ウィルスに限らず遺伝子を発現させてタンパク室を作る仕組みは、コンパクトかつ詳しくまとまっていたと思う。
もう少し生物や生化学について知りたくなった。
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わかりやすい.
また,評価の定まっていないウイルスの進化についての最新の仮説についての紹介も面白い.
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ウイルスは、細胞に侵入しているときが本来の姿かもしれない、と書いてあり、「なるほど!」
ウイルスに対する認識が一変しました。
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○人びとを苦しめ、時には死に追いやってしまうウイルス。ところが、その憎むべきウイルスの新しい姿が見直されつつあります。たとえば、ウイルスが、人間の進化の過程、哺乳類(哺乳類の有胎盤類)の胎盤形成に重要な影響を与えたということが最近になって明らかになってきたというのです。生物とウイルスの共生的な関係にも注目。
○生物に近いものの生物ではないとされるウイルスについてこう語るのは奇妙なことですが、ウイルスの世界がとても生き生きしているようにみえます。ウイルスが細胞の表面に吸着し、侵入し、自らのコピーを生産する過程をみると、宿主である生物の機能をいかにうまく利用しているかということに驚きます。
○とくに、不勉強なぼくには素朴な疑問が山積します。ウイルスはどうして細胞の表面に吸着できるのか。どうしてそんなへんてこな侵入方法があるのか(たとえば、バクテリオファージは吸着してから細胞内に自らのDNAを注入するといいますが、このイラストがまた面白いです。ぶちゅ, p. 53)。なにより、生物の細胞を巧みに「利用」するウイルスの話を読めば、ウイルスがどうしてこのような機能を持つに至ったのかということが気になるのは僕だけではないはずです。
○その答えは、結局のところ仮説でしかなくて解明されておらず、さらには巨大ウイルスという異物(比喩的にいえば、身長が12階建てのオフィスビル並みの人が発見されたというようなもの, p. 168)の存在が明らかになり、ウイルスの謎は深まるばかり。
○おすすめしたいのは中学生や高校生です。私たちの目に見えないほど小さな世界で、こんな複雑な世界が存在していると知ったら、こんなに楽しいことはないと思います。冗談も混ざっていて面白くもありながら、ウイルスに関する研究の最前線を紹介している欲張りな本だと思います。
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ウイルスの基本的な構造・生活環、ウイルスによって病気が起こる仕組みから、ウイルスの起源と生物進化との関わりについての最先端の研究の知見まで、薄いわりに内容のぎゅっとつまった本。DNAとRNAの違いやセントラルドグマなど、基本的な話から始めてくれるので、初心者にもおすすめ。
「ウイルスは生物ではない!」なんて思っていたが、いよいよそんなことも言ってられなくなってきた。ホットで興味深い話題がたくさん!もっと詳しく知りたい。
・ノロウイルスの感染と血液型には関連がある?
・タバコモザイクウイルスの内部の細長い空間を使ってナノマシンをつくる試み
・私たちヒトゲノムのおよそ半分に、ウイルス由来の塩基配列がある!
・有胎盤類の胎盤形成に関わる遺伝子が、かつてレトロウイルスだったときのエンベロープ形成に関わる遺伝子に由来していた。(内在性レトロウイルス配列)
・最小の生物といわれるマイコプラズマを凌駕する大きさ、遺伝子の多さ、複雑さを持つ巨大ウイルス(ミミウイルス)の発見は、生物とウイルスの境界をより曖昧にさせた。
・ミミウイルスにくっついて一緒にアメーバに感染するウイルス、ヴァイロファージ
・真核生物の核形成は、DNAウイルス由来である?
・自身の2つの核のうちひとつを、まるでウイルスのように、ほかの紅藻の細胞に注入して寄生する紅藻がいる!
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巨大ウイルスの発見で、ウイルス研究は新段階を迎えた。ウイルスとはどんな形をし、どんな種類があり、どんな働きをしているのか。
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核酸(DNAあるいはRNA)を持つが細胞膜は持たない。自己複製能を持つが、単独では生きていけない。ウイルスは「限りなく生物に近い物質」と見なされているそうだ。しかしウイルスが生物か否かは定義上の問題であって、本質的な問題ではないと思う。生命の起源が自己複製能を持った有機物だったとすると、それはまだ現代の定義で生物と呼べるものではなかったであろう。結局、生物は無生物から進化してきたのだ。そして生物進化のかなり初期の段階で支流となったウイルスは、その寄生性から生物進化に大きな影響を与えながら、受けながら、今に至るのだろう。
プロローグ 発見された巨大ウイルス
第一章 生物に限りなく近い物質
第二章 ウイルスの生活環
第三章 ウイルスはどう病気を起こすのか
第四章 ウイルスは生物進化に関わったのか
第五章 ウイルスの起源
第六章 巨大ウイルスの波紋
第七章 ウイルスによる核形成仮説
エピローグ 結局、ウイルスとは何なのか
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ウイルスについて何も知らなかったのでいろんな新発見があっておもしろかった。そもそもウイルスって分類すると生物じゃないのね。そんなことも知らなかった。私たち真核生物の細胞の中にある細胞核って、もしかしたら太古に感染したウイルスかも?っとかいう説にもドキドキする。恐ろしいことに、この本読んでたらウイルスに感染して風邪をひいてしまった。まるで呪いのビデオのような感染コードがどこかに隠されています。ウイルス恐るべし。
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新型コロナのパンデミックで世界中がエライことになっている中で、改めてウイルスについて知りたいと思って。
天然痘や麻疹は一度かかったら二度はかからないとされているのに、インフルエンザはなぜ毎年ワクチンを打たないといけないのか。
ウイルスはそもそも何を食べて?生きて?いるのだろう? ウイルスが生物なのかどうかはともあれ、なんかしている(から病気になる)以上は活動のためのエネルギーをどこからか得ているはずだが、いったいどこから?
ちなみに最初の疑問については、本書の中にそのものズバリが提起してあって、回答もちゃんと書いてある。やっぱりそういうことだったのか。
たとえ話等でわかったように思わせる、のではなくて、初心者向けとはいえ本気の解説本で、専門用語が頻出する。生化学や分子生物学の基礎知識がないと読み進めるのは厳しい。だが、頑張ればいろいろと発見もある。バクテリアにくっつくバクテリオファージを、殺菌剤代わりに加工食品に添加することがあるなんて知らなかった。
当面の課題である対ウイルス防御、つまり免疫反応やワクチンについては本書の守備範囲外だったので、別の本を探してみよう。
症状が出なかった人も含めて、新型コロナに感染して回復した人は免疫を獲得したってことだよね? つまりまだ存在しないワクチンを受けた状態になっているとぼくは思っているのだが、正しいだろうか? 抗体/免疫ができていることはどうやって調べるのだろう? 免疫を持ったひとが一定数増えたときに、社会的免疫として働くようになって、パンデミックは収束に向かうということなんじゃないだろうか?
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まずこのご時世ウイルスが人工に膾炙しているわりに、自分がほとんどウイルスについて知らなかったのでこの本を手に取った。内容は、生物学を全く知らない人には読みづらいかもしれないが非常に面白いものだった。
ウイルスの構造、生活環、多様性や生物との違いなどしっかり学ぶと似て非なるものが多々あり非常に興味深く感じた。個人的に学びとなったのは、哺乳類の胎盤はもともとウイルス由来の遺伝子によって作られるものであること、ウイルスの起源の仮説、多細胞生物の本当の姿の考察、また食品添加物にウイルスが利用されていることなどである。ウイルスを悪者のようには思えなくなりそうだ。
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本書を読めば,私たちが持っている〈ウイルスに対する構え方〉が変化するだろう。〈感染症の原因〉〈諸悪の根源〉のようなウイルスのイメージは,ウイルスの一面しか知らないことから引き出されていることを教えてくれた。
そもそも,私たちのまわりにはじつに多くのウイルスが存在しているらしい。本書の紹介によると「天然の水の中に,1mLあたりおよそ2億5000万個のウイルスがいる場合がある(海水中には約500万個から1500万個)」という。これは大変だ。がしかし,著者は,視点を変えるとこの数はたいしたことがないとも言っている。たとえば,人間の血液中にある赤血球の数は,1mLあたり40億個も含まれているらしい。「これに比べれば,海水中のウイルスの量など微々たるものだ」となる。
ウイルスの型わけなども分かりやすく説明してくれている。なるほど,ウイルスの世界にもこんな分類ができるんだなとかしこくなった気がする。今話題のコロナウイルスは,RNAウイルス→1本鎖RNA→コロナ(脊椎動物が宿主)→コロナ→(SARS,新型コロナ)となる。インフルエンザは,RNAウイルス→1本鎖RNA→オルスミクソ(脊椎動物が宿主)→インフルエンザ→インフルエンザ。
鳥インフルエンザとかトンコレラなどといって騒いでいる時期もあったけど,そもそもウイルスは,もともと細菌・植物・昆虫・脊椎動物など,いろんな宿主に感染しているんだと知っていれば,「それがなぜ人間に…」と考えることもできる。そうすれば,これまでいなかった場所にクマが出てくる現象とつながってくるような気してくる。そもそも,人間の生活を省みる必要はないのか…と。
新型コロナのように,ときにパンデミックを引き起こすウイルスたちは,人間の細胞の中に入り,細胞が持っているコピー機能を使って自らのコピーを作り瞬く間に増殖する。こうなってくると,ウイルスは「やっつける相手」としか感じられないし,そのときはそれでいいのだとは思う。
しかし,こういう流行をきっかけに,いったいウイルスとは何なのか。なぜ,生物が持っているDNAやRNAを持っているのか。そもそも,生物の細胞の中のDNAやRNAとどこが違うのか…いろいろと気になってくるのも仕方ない。そして,その振る舞いを見るにつけ,生命の基本の部分にウイルスがいるのではないかとも思えてくる。
この辺りに興味がある人は,是非,本書を手に取って読んで欲しい。
ところどころ,ユーモアのある表現もあって,難解な内容を説明しているわりにはとっつきやすいと思う。