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桜は、美しさとはかなさとそして、狂気をはらんでいる。桜に魅せられた人の心もまたきっとそうだと思う。
桜にまつわる7つの物語。
一人でいるのが寂しくて悲しくて誰かにそばにいて欲しくて。でもそんな自分を認めたくなくて。
そういうどうしようもない夜にきっと人の心は桜の狂気に染まるのだろう。
残酷なほどの美しい文章に心がざわめく。いつか桜の根元に埋めて欲しい、などと思ったりもする。
桜は、美しいけど、怖い
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どれも桜に纏わる、7つの話の短編集。
そして、どれも、お互いに直接関係する事はないのだけれど、共通する場所が登場する為、同じ街だと思われます。
どの話も、とても美しい。
言葉や文章もだし、それぞれ何かを抱え込み、桜に重ねあわされるような登場人物たちや、彼らのストーリーも。
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「ジョイ・ノベル」に掲載された8編の短編を単行本化した作品。
各編とも桜がモチーフになっていて、各編の中扉の題字の位置を重ねると、首飾りのように繋がっていることを暗示しているのでは、と思わせる。
丘の上に美術館があって、桜がたくさんある同じ町が舞台のようだ。
もう一つの共通点は、主人公が若い女性であること。
見かけ上の男の主人公はいても、想起される女性が、本当の主人公だったりする。
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桜は魔性の樹。人の心をこんなにも掻き乱す。しかも、性格が歪んでいると尚更に。不思議な描写で、一時、桜の樹の下に佇んでいました。そんな雰囲気の小説です。
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桜のみせる、幻想と現実のあわい
桜にまつわる7つの短編集である。
春の夜の夢の如く、現実感の薄い幻想的な雰囲気が、どの作品にも表れている。
息苦しさを感じている登場人物らは、非日常へふらふらと迷い込み、そこで何らかの答えを見つけ、現実で生きていく。
ここまで強烈な体験ではなくとも、誰しも非日常に迷い込むことはあるように思う。
そこでは現実のもつ肩書きやレッテルはなく、ただ今その場にいる一人の人間として扱われる。
そういった空間や関係性を欲している時には、このような偶然も起こるのかもしれない。
宵闇にうかぶ、桜の妖しさ
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桜をモチーフに描いた、どのお話にも独特の幻想味が淡くにじんだ短編集です。桜というものに日本人が抱く感慨は種々さまざまで、単純に咲いた花をうつくしいとめでる感覚から、幹の根元には死体が眠っているという都市伝説的なものまでバラエティ豊かです。それほどに日本人の心に根付き、想像力をかきてたる桜というものをキーに、人々の絆や想いが描かれています。
「春の狐憑き」ではほっこりする不思議な老人との交流に心が和み(このお話がいちばん好きかな)、「白い破片」「エリクシール」「背中」ではほのかな官能味に酔い、「初花」「花荒れ」には純粋な人と人の縁をせつなさ交じりに描き、「樺の秘色」では不可思議な現象から亡くした人の想いをたぐりよせる。それぞれの物語で桜がまったく違う姿で現れてそして物語にかけがえのないエッセンスとなっていることに、桜というものの特別さと、そしてそれを描ききった作者の巧さに感心を覚えます。
日本人にしか描けない日本人のための、物語。そう感じました。
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読む。
桜って、王道にも邪道にもなる。見方や扱い方で印象がガラッと変わるので、なかなか飽きのこない良い題材。そしてそこに共通するのは美しさ。もちろん、人によっては醜く映ることもある。それでも、別の誰かを魅了する。そんな桜の物語を桜の季節に読む。うん、幸せだ。
目次。
バスの中、目次だけで過ごしてしまった。なんだろうこの妄想が膨らむ感じ。やっぱり名付けって大事。組み合わせも大切。奇をてらう必要なんて全くない。そして基本は日本語で。そこから外してカタカナを。ああ、言葉は楽しいなあ。
12頁目
《美術館そのものも私はとても好きだった。美術館には生活というものがなかったから。》
生活感のある場所は居心地が良い。そうでない静謐な空間は、ただ美しい。人の手が入り、人のいない場所。そんな矛盾の先に、人を惹きつける何かがある。
18頁目
《しかし、苦情を言ってくる人々が欲しいのは現状の説明でも正論でもなく、謝罪と共感なのだ。》
苦情や愚痴を吐く人間は、ある意味扱いやすい。何も考えずに受け答えができるので、意識を殺せばあとは徒労に耐えるのみ。そう、あなたはぞんざいに扱われているのです。
51頁目
《結局、他人のことなんてわからないのだ。》
理解しないしされない。そう割り切ってしまえば、人付き合いはとても楽しい。本当も嘘もない交ぜにして、そこに意味なんかなくて、あるがままを受け入れていくだけでいいなら、他人と一緒にいるのも悪くないと思えたんだ。
72頁目
《あたしはママが何を怖がっているか知っている。でも、気付かないふりをする。》
気付かないふりを優しさだと思っているうちは、何も進展しない。見ないふりは逃避や先送りでしかないからだ。それでも僕はやめられない。すべてをわかった上で、知らないふりを続ける。
132頁目
《つらい記憶も、ささくれた気持ちも、美味しいものは一瞬癒してくれる。》
気持ちを食事でコントロールできるようになって、ずいぶんと楽になった。お酒も含めれば、負の感情のほとんどを自分一人で解消できてしまう。それに、食べ物は裏切らない。残念なことに。
170頁目
《この人たちが変に尖ってなくて寛容で堂々としているのは、自分がやりたいことについてまわる世間の目をちゃんと引き受けているからなのだ。》
周りの目がどうでもいいのではなくて、他人と自分との間に明確な線引きをしているだけ。だから、自分の行動に臆さない。
読了。
桜の散りばめられた短編集。物語に入り込むことはなかったが、はっと息を呑む言葉や場面に目を留めることが何度かあった。それこそ、何気なく視線をやった先に美しい桜を見つけたときのように。その出会いは一瞬でも、鮮烈な記憶として刻まれることになる。
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どうしたんだろう。言葉に力が無くなった気がする。どこかで聞いたことのあるような話の展開、とか。いや、聞いたことなどなかったかもしれないけれど、そんな雰囲気のある、という意味で。彼女にしか書けないもの、彼女の言葉は確かにあったはずなのに。
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「桜」にまつわる短編集。
見方がかわるとこんなにも悲しかったり、きれいだったり・・・
どろ~りとしたところが無くよかった。
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繊細で、少し不思議で、時々哀しくて、でも最後には優しい終わり方をする物語たち。個人的に好きな作風でした。
どの話にも「桜」が出てくるのですが、やっぱり桜は特別な感じがしますね。
見る者の心情を反映する花。そして、喜びにも哀しみにも合う花なんだなと、しみじみ思いました。
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『白い破片』『初花』『エリクシール』『花荒れ』がすきかな。
桜が出てくる短編連作。引き込まれるちょっと気持ち悪い人が多くて、すっきりしないちょっと後味が強いような話ばかり。
桜への捉え方もキャラクターでいろいろだけど、『花荒れ』に出てくる「ずるい」って印象が一番共感できる。
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桜にまつわる短編集。
桜への想いは人それぞれ。抱えている想いも人それぞれ。読みながらやりきれない思いや切なさが込み上げてくるけど、みんな人とのつながりを経て、少し素直になって踏み出していく。
儚くもふわり柔らかな読後感。
個人的に「春の狐憑き」「エリクシール」「樺の緋色」が好き。
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苦しいほどの人間模様、心理描写……。桜が登場する短編集だけど、面白いのは、桜を手放しで好いてはいなかったり、桜に苦い思い出のある人々が出てくるところ。日本人って桜を好きなわりに、こわがってもいるんだな……。
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桜と男女の7つの物語。
詳しくは書かれてないけど、もしかしたらすべて同じ街での出来事かもしれない。
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丘の上の美術館に勤める主人公は、不思議な老紳士に出会う。彼は、管狐について語る。母の愛が重い女子小学生や、花見の夜に出会った女性との思い出を語る青年、資料室に収められているという夜桜が彫られた人の皮をどうしても見たいという女性など。
桜にまつわる短編集。センチメンタルで不思議で印象的な話ばかり。「初花」と「樺の秘色」が好き。