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本書は、各個別法について、①法の目的、②法の全体像、③重要論点、④重要判例を記載するものである。
①、②、③は個別法についての概括的な説明だが、あまりにもコンパクトにまとまりすぎていて(記載の多い法でも数ページ)、個別法を体系的に理解するには全く適さない。このような用途であるならば、例えば『地方自治法概説』(宇賀,有斐閣)や『社会保障法』(有斐閣アルマ)など、コンパクトかつ定評のある基本書を読むほうが良い。逆に、名前しか知らない法律についてざっと知りたい(例えば、「都市計画法」と「都市再開発法」が何が違うのかざっくりと知りたい)程度ならば、wikipedia等を見れば足りるであろう。
④は、個別法解釈についての重要判例の他、処分性や原告適格など、いわゆる司法試験の行政法に出題されそうな重要判例が記載されている。しかし、こちらも非常に分量が少ない。行政法総論の判例ならば、『行政法判例百選』(有斐閣)や、『行政法2 現代行政救済論』(大橋,有斐閣)などの方が、判例にまつわる個別法の仕組みについての説明や、他の個別法や判例との整合性などを丁寧に説明してくれている。
以上より、本書は、個別法の正確な理解や、個別法の仕組み解釈など、本書がターゲットとする法学部生や法科大学院生のニーズに対応する出来とはなっていない。