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加藤茂孝『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』丸善出版、読了。ウイルス学者である著者が、人類を脅かしてきた8つの感染症(天然痘、ペスト、ポリオ、結核、麻疹、風疹、インフルエンザ、ウエストナイルウイルス)を取りあげ、人類との戦いの歴史としてまとめた一冊。図版も多く、その経緯を立体的に理解できる。
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感染症はなくならない。新たな病原菌が現れて、世界中に広がることが多くなった。
「ヒトは得体の知れないものに怯える」。
病原菌発見と撲滅の歴史である。
各章ごとに独立した内容であり、読みやすい。
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感染症は人類の歴史を左右してきた。天然痘、ペスト、ポリオ、結核、麻疹、風疹、インフルエンザ、ウエストナイルウイルスの8つの事例に、人類がどう闘ってきたのか、人類の歴史にどう影響を及ぼしたのかを解説。
最後に、マルチン・ルターの言葉「たとえ明日、世界の終わりが来ようとも、私は今日りんごの木を植えよう」を引用し、今すぐの成果は得られる可能性は低いが、次世代に向けて、感染症に今後も地道に取り組む大切さをとく。
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歴史や文化の背景と絡めて、8つの感染症を語った本。科学的知識のみならず、著者の人文学的知識の幅が広く、読み物としてとてもおもしろかった。感染症が人類の歴史にいかに影響を与えてきたかを実感させられる。
天然痘の種痘を日本にもたらし、普及させるために奔走した日本人の話や、厚生大臣の迅速な決断から、ポリオの生ワクチンをソ連から緊急輸入し1300万人の小児に投与して、日本がポリオ根絶の世界のパイオニアとなった話など、感染症を食い止めるために働いた日本人が多くいることには誇らしい気持ちになった。(反対に、日本が世界に後れをとっているものもあり、残念な気持ちにもなったけど。)
「日本の科学者で知っている人というアンケートで、ダントツ一位が野口英世であるのは、日本の科学教育・科学ジャーナリズムの貧困を表している。」という言葉には考えさせられた。苦難の人生や人並み外れた努力の結果などにばかり注目し、科学者を『偉人』として崇め奉るのではなく、科学界への影響と貢献の大きさを冷静に伝えていくべきだと思う。
ヒトの肺の奥の一部に鳥型レセプターを持つ細胞があったために、鳥インフルエンザのH5N1型が、鳥型のレセプターを持たないはずのヒトにいきなり感染できたという事実はおもしろい。なぜヒトが鳥型レセプターを持っているのかには、進化学的な背景がありそう。(ちなみにブタは、鳥型もヒト型も持っているらしい。興味深い)
感染症対策には、専門家(スペシャリスト)の養成と、省庁の壁を越えた連携が求められる!
信頼の持てる公的機関が正確な情報をアナウンスすることで、人々の「得体のしれないもの」に対する不安感・恐怖感を軽減することが大切だということ。
来たる感染症パンデミックを前に、各メディアの冷静な対応を、お願いします。
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著者の熱い思いが伝わってきてよかった。当時の人々にとって感染症の恐怖が現在と比べてどれほどのものだったかなんとなくわかった気がした。
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古来、ヒトは感染症に悩まされてきた。感染症は動物の体に巣くう、ウイルスや細菌などの小さな病原体が引き起こす病気であり、ヒトからヒトへ、時にはヒト以外の動物からヒトへと移動(感染)する。ヒトの体を住処としながら跳びはねるように広がっていくため、根絶することは困難である。
衛生状態のよくなった今日では、日本における病気によるヒトの死因のトップの座は癌に明け渡されているが、感染症によってヒトがばたばた死んでいたのはそう遠い昔のことではない。現在でも、世界的に見て、感染症による死は非常に多い。
本書では、こうした感染症とヒトの歴史の関わりを、いくつかの重大な疾患に注目して見ていく。取り上げる感染症は、
・天然痘
・ペスト
・ポリオ
・結核
・麻疹
・風疹
・インフルエンザ
・ウェストナイルウイルス
である。
いずれも、人類の歴史に与えた影響が大きい。
いくつか具体的に見ていく。
「天然痘」は、痘瘡(もがさ)とも呼ばれ、日本でも昔から猛威を振るってきた。死亡率も高く、生き残ってもあばたや失明など、後遺症も大きかった。
非常に恐れられた疾患だが、天然痘ウイルスは現在では根絶されたとされている。それを可能にした大きな特徴は、人畜共通感染症でないことである。ヒトでの感染が抑えられれば押さえ込める。そしてもう1つ大きな点は、感染すれば必ず(肉眼的に)診断できたことだ。これらに加え、優秀なワクチンが開発されたことで、天然痘はごくわずかな研究用の株以外は世界から消えた。但し、世界を覆う大きなプロジェクトが成功するためには、世界の平和は欠かせなかった。事実、紛争地帯ではワクチン供給の難しさや衛生状態の悪化などで、真の根絶まで、他の地域よりも数年の遅れを取った。
「ペスト」は中世ヨーロッパを揺るがせた一大感染症だった。そもそもはネズミの感染症だが、ノミを媒介に飛び火する形で、ヒトにも感染を広げた。歴史上の幾度かの大流行の影には人類の大移動があり、往々にしてこれらは戦争に付随したものだった。乗り物であるヒトが動けばノミもまたペスト菌も移動する。行った先のヒトが病原菌に対する免疫を持っていなければ感染は爆発的に広がりうる。「死の舞踏」に関する一連の美術作品や、ボッカチオの「デカメロン」といった文学作品は、ペストの影響下に生まれたものである。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」でもペストが物語の重要な鍵を握っている。有形無形に人類に与えた影響が大きかった疾患である。
「結核」は、サナトリウム文学を思い浮かべれば明らかであるように、日本ではかなり最近まで流行していたといってよい。私事で恐縮だが、自分の父も学生時代に結核で入院し、一年留年することになったと聞いている(さらに、まったくの余談だが、そのため、1学年下だった母と知り合ったようで、結核がなければ自分は生まれていなかったことになる)。昭和30年代頃まではそう珍しいことではなかったのだ。近代以降、結核で亡くなった著名人の表があるが、圧倒される。ストレプトマイシンの普及、そしてBCG接種によって、一時は過去の病気と���ったが、近年、再び流行の兆しを見せている。芸能人でも発症した人が出て注目された。背景には、耐性菌の出現や、「過去の疾患」と捉えられていたがための見逃しがある。感染症を完全に押さえ込む困難さを感じさせる事例である。
感染症に対する恐怖は、「目に見えない」ことが大きいと著者はいう。「見えざるもの、汝の名は感染症」というわけである。
本書は、人類と感染症との長きにわたる攻防を、科学的な側面に加え、文化に及ぼした影響からも俯瞰する、手頃な1冊である。
人類が感染症に屈しないためには、世界的なネットワークや科学的知識に加えて、世界の平和が欠かせない。
小さな病原体が「生き延びよう」とする力はすさまじい。見えない敵にパニックにならないよう、冷静に協力していくことが、今後も起こるに違いない大流行に対処する鍵となるだろう。
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パンデミックな時代に勇気をいただいた、加藤茂孝さんの「人類と感染症の歴史」
コロナウィルスと人類の戦いがまさに進行している現在、私は外出することなく、ネット、新聞、テレビをみながら心休まることがありません。そんな中コスモスTMCの加藤茂孝さんの著書「人類と感染症の歴史」をずっと読んでいました。
本書では、天然痘、ペスト、ポリオ、結核、麻疹、風疹、インフルエンザ、ウェストナイル熱といった感染症をとりあげ、人類がその黎明期からいかにウィルスに悩まされ、立ち向かってきたかを、歴史という時間と空間を旅しながら壮大なスケールでかつ緻密に解説した本です。
本書で魂に響く言葉がいくつも出てきます。
「人は得体の知れないものに怯える。」
ジェンナー、パスツール、野口英世、北里柴三郎、コッホといったウィルス、感染症研究のパイオニアたちは、得体の知れないものの正体を突き止めるために、身の危険を顧みずに得体の知れない恐怖に立ち向かいしました。
「井戸の水を飲む人は、井戸を掘った人への恩を忘れてはいけない。」
人類の黎明期、感染症研究というものがなく、医学が未熟だった頃、感染症にかかると人は簡単に死んでいました。しかし、パイオニアたちのこうした尽力のおかげで私たちは安全に生活できています。私たちは、その安全で快適な生活を当たり前のものと感じていますが、実は歴史の中にこういう人たちがいてくれたからだと。そのことを決して忘れてはいけない。コロナウィルスのパンデミックで世界の情勢が非常に不安定になっている中、この言葉は強く噛み締めないといけないと思います。
この本の魅力と価値は次の三点に集約できると思いました。
① 加藤さんの専門家としての経験と知見がコンパクトに集約されている。
国立感染症研究所や米国CDCに勤務された感染症研究の第一人者である加藤さんが語る、各ウィルスの正体が写真やイラスト、グラフを駆使して、豊富な事例とともに語れていること。専門用語が多く出てくるためインフルエンザの章では挫折しそうになりましたが、そんな中に時々絶妙なタイミングで、加藤さんの個人的なエピソードが現れうまく息抜きしながら読み進めることができました。
② 歴史読み物としても大変に面白い
平安時代の藤原氏一族を悩ませたりインカ帝国の崩壊を早めた天然痘、中世ヨーロッパ十字軍の遠征が広めたペスト、枕草子や源氏物語に現れる結核などなど、本書には実に様々な歴史の事例が出てきます。加藤さんの歴史の知識に驚嘆しながら、加藤さんがなぜここまで歴史に詳しいのか考えを巡らせてみると、感染症の研究者として人類との関わりを考える中で、史実や文学、絵画に現れる感染した人の振る舞いの描写、そして古い人骨標本から、どんなウィルスがどんなスピードでどこに広がっていき、人類史にどんな影響を与えたかまで加藤さんの研究が広がっていったと考えました。加藤さんは古典文学にも大変お詳しく大変勉強になりました。
③ 人類への愛が深い
感染症は戦争で広がった史実がたくさんあります。古来から十字軍によるペストの流行、第一次大戦によるインフルエンザ(スペイン風邪の流行)などほんの一部です。また感染症研究が最近のアフガニスタンでの戦争などで妨害され遅れてしまったこと。加藤さんは本書の中で以上に残念に感じておられます。一方で、感染症研究者、公衆衛生担当者による世界的なネットワークにより予防や制圧が進んでいること。WHOを中心に国を超えたネットワークで感染症を追い詰めようとしていること。こうしたことに加藤さんは惜しみない称賛を送っておられます。そこに加藤さんの人への深い愛を感じ胸を打たれます。
いろいろな読み方ができる本書ですが、3つに集約してみました。
コロナウィルスは不意打ちのようにいきなり現れました。初めは対岸の火事のように眺めており、また「インフルエンザよりも致死率が低いみたいだよ。」なんて言って油断していたら、あっという間にパンデミックとなり、世界経済を撹乱しています。
そんな時代に、ただ恐れ慄くのではなく、ウィルスの種類別、その正体、人類との関わりと制圧への尽力、これからの展望という軸を持って考えることが少しでもできたことは本当に良かったと思います。
実は本書は6年前に加藤さんが出版された直後に加藤さんとトーストマスターズの大会でお会いした際に、ご本人から直接購入いたしました。「早速読ませていただきます。」と勇ましく返事はしたものの、なんとなく難しそうと第一印象を持ってしまい、つい先日まで本棚の片隅で出番を待っていました。(加藤さん、ごめんなさい)
しかしいざ読み始めるとこんなにも面白く夢中になって読み進めることができました。決して平易ではない。しかし難解すぎない。ちょっと頑張れば読了できてしまう良質な読み物でした。
トーストマスターズではいつも優しくニコニコとユーモラスなスピーチをなさる加藤さんの別のお顔を拝むことができました。
「井戸の水を飲む人は、井戸を掘った人への恩を忘れてはいけない。」
感染症研究に人生を捧げておられる加藤さんへの感謝と尊敬の念を持って、拙い文章ですが私の感想をこちらに共有いたします。
ありがとうございました。
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それにしても痘苗(とうびょう)がかさぶたを通して人から人へ移されるというのは驚きである。文字通り人柱といってよい。私が子供の時分はまだ種痘を行っていた。当時は天然痘を疱瘡(ほうそう)と呼んでいた。左肩に2ヶ所やれらたのだが痒(かゆ)くて かさぶたを剥いた覚えがある。痕跡は今でもくっきりと残っている。
https://sessendo.blogspot.com/2020/07/blog-post_18.html
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"たとえスペインインフルエンザが今襲ってきたとしても、当時の1000分の1位の死亡者で抑えられるはずである"
予想を軽々と超えるCOVID-19すごいね…
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研究者仲間から風疹研究に関して「大変しつこい」とも言われた著者だけあって風疹の章は母子感染した人のエピソードがあったり、思いの強さが伺える。2009年H1N1インフルエンザの状況、ワクチンの種類と特性、など今勉強になることも多いが、官僚組織の人事異動についてごたごた書いているのはどこまで妥当な意見なのか。続巻も読む予定
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タイトルが示すように、人類と感染症の歴史を、古代から現代まで広く網羅的に扱っている。感染症そのものの歴史と病態というよりは、感染症によって影響を受けた歴史にフォーカスを当てている。
著者はウイルス学者であり、歴史家ではないが、トリビア的な情報を得たいと思ったら、次々と出る感染症の歴史本の中でも本書がベストであるように思う。
扱う感染症は、天然痘、ペスト、ポリオ、結核、麻疹、風疹、インフルエンザ、ウエストナイルウイルスと幅広い。それぞれの感染症対策から得られた教訓のようなことも述べられており、専門家の意見として興味深い。
個人的には、自分の不勉強を棚に上げるようではあるけれど、感染症そのものの情報がもう少しあると理解が深まるように思った。
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【琉球大学附属図書館OPACリンク】
https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB12104693
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感染症のことが、疾患別にその起源とどのように克服したか書いてある。専門知識が不足していて、理解できない記述もあった。ただ、先人達がいかに努力して感染症を乗り越えてきたか、そしてそれがつい最近ということを学んだ。多くのことが学べる本であると思います。