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北海道、日高の雪深い山の中で、山岳カメラマンを屠った羆。森林保護管の樋口と山崎は、カメラマンを襲った羆を追い、山狩りで無事羆を仕留めたが…
ミステリかと思って読み始めたのだけれど全く違っていて、けどこれは嬉しい読み外れ。緊張感と疾走感、著者の専門知識を生かしていて物語にリアルさと厚みを持たせつつ、そして山への畏敬の念に溢れる物語。山は人間に自然の恩恵を与える場である一方、山は本来人間が暮らす場所ではない、自然の神々の領域であるという、山に暮らす者にしかわからないような山の一面が伝わってきます。面白かった!
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デビュー作『焔火』のある意味でセンセーショナルと言うばかりの舞台設定、時代設定を試み、東北の山岳地帯に神話的世界を構築してみせた、吉村龍一の第二弾。いい意味で裏切られた感じはするが、現代社会を舞台にした山岳小説である。
もちろんこの作家特有の異色さは全面に出ているけれども、むしろ巨大羆との死闘というシンプルな物語こそが、透徹した文体を武器に持つ吉村龍一という作家にはとてもフィットした感があって、前作ほど異形の者たちが多数出現することもなく、よってデビュー作の空気中に漂っていた毒気の類は、むしろ凛とするばかりの冬山の自然の透明さの中で、濾過され浄化され、神の領域に一歩近づいた気配さえ醸し出される。
一方でとても人間の領域に近づいた部分もある。主人公である若き森林保護官の成長の物語でもあるのは、上司・山崎という個性的で完成された印象のあるベテラン職員との師弟関係に見られるところが大きい。特につかず離れずの距離感や、上司の現代的な娘へのほのかな恋心など、現代の普通の男性にありがちな共鳴性など、前作よりもずっと日常の側に、作品が近づいてきたイメージを、軟化と捉えるか成熟と捉えるかは、読者のそれぞれの判断、あるいは次作の出来栄えを待ちたい。
されそうした日常の側に住む主人公青年が、冷徹で酷薄極まりない冬の日高山脈と、そこに登場して強烈な積極的関わをを示してきた人喰い羆によって、日常の側から、かつて見たことも経験したこともない苛烈な死闘のさなかに放り込まれ、ミキサーにかけられ攪拌されたかのような状態を経験することになる。
前作に引き続きとても物語性が込められたスケール感の巨きい小説であり、それらを描き切る簡潔明瞭な文体は、この大自然の荘厳と究極の死闘を描くに相応しい。地元猟友会の趣味的鉄砲撃ちたちや、権力にものを言わせる違法狩猟者、カルトの皮を被って自然を踏みにじる詐欺師等々、大自然の神々を怒らせるような存在が、小説中に次々と登場するが、白き巨大羆の光る爪とそのもたらす暴力の凄まじさは、大自然の主を対照的に象徴し、卑小な人間界や罪深く貧しき精神を嘲笑い、憤ってゆくかに見える。
人間界を代表する純粋なものに肉体性を感じさせ、飽くなき努力を重ね作り上げてきた体力や、経験に基づいた知略を見せる山崎という師の姿は、前作『焔火』の破戒僧・青雲海とだぶるところがあり、その理想的な人間性に近づくために試練をくぐり抜けねばならないのが、主人公・孝也である。
圧倒的な力で勝る羆と、非力な人間たちの知略が、冬の山岳を舞台に、文字通り火花を散らす。息遣いが聞こえてきそうなほどの迫力文体で綴るこの冒険譚の世界に是非、足を踏み入れて頂きたい。
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北海道の日高山脈における森林保護官とヒグマとの闘いです。「デンデラ」(佐藤友哉、新潮社)や映画「リメインズ 美しき勇者たち Yellow Fangs」のように村で人食い熊を迎え撃つのも恐怖ですが、山で熊に追いかけられるのも怖いものでした。
デンデラやリメインズは飢餓のため人里まで熊が降りてくるという設定ですが、本書は人間のエゴにより熊を怒らせてしまっています。ストーリー的にはもう少し捻って欲しかったのですが、サバイバルの細かい描写は元自衛官ならではの視点だと思いました。
本の中に入り込むこちができて一気に面白く読むことができました。映画化されれば観てみたいです。
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日高山脈を舞台に、森林保護官と人喰い羆との熱い戦いを描いた一作。
夾雑物を廃し、人間と熊に絞ったストーリーがぐいぐい読ませる。老年なベテランと新人という二人の森林保護官の師弟関係も読ませる。
樋口昭雄の羆ものの傑作『約束の地』に匹敵する傑作だ。
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熊物である。
熊と人間が対峙するドラマは定番のエンタメで、外れも無いように思う。
この「光る牙」は今まで読んだ中で、最もエンタメ度が強い。
後半は熊駆除というより「ジョーズ」的展開の戦闘といってよいか。
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北海道・日高の森林保護官と羆との闘いが描かれたこの小説。
すごい迫力でした。
大自然の厳しさや、羆の強靭さと執念がとてつもなく恐ろしく迫ってきます。
後半のたたみかけるような文章は緊張しながら読みました。
パニック映画を観たような軽い疲労感と読み終えた安堵感。
人間を拒むかのような日高山脈の神秘性と羆の存在が余韻を残します。
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舞台は雪深い日高山脈。
森林保護管の山崎と樋口は奥深い森で山を守る。
そこに一人のカメラマンが行方不明になったと連絡が入った。
犯人は冬眠できずに彷徨う羆。それもとてつもなく巨大な。
役者は揃った。
もうあとは怒涛の展開。
息つく暇もなく次々と困難が二人の前に立ち塞がる。
アクション映画さながらのシーンに圧倒されっぱなし。
時にはランクルで道なき道を走り、時には命綱一つで絶壁を下る。
そこに襲いかかる獰猛な巨躯。響き渡る銃声。
果たして彼らの運命やいかに。
とこんな感じで、ドキドキハラハラ一気に読み終えた。
まさにエンタメ小説。
最後の羆と対峙する場面は、ダイハードさながらでそこまでやるか!?と笑ってしまう位。
文章に深みはないけれどとにかく勢いと迫力がある。
熊谷達也の「邂逅の森」には及ばないとは思うが、十分楽しめた。
映像化されたら面白いだろうなとは思うけれど、羆が無理か。
CGだったらいけるかな・・・。
ちょっと見てみたい。
ただし凄惨な描写も多いので苦手な人はご注意を。
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おもしろかった。一気読み。
でも忙しい時期に読んだのがまずかった。
盛り上がってきたところで、中断されたことが、何回か。
集中して読むことができれば、もっと楽しめたかも。
そのあたりも考慮して☆4つ。
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自然と対峙する人間。自然界の神ともいえる熊と森林警備隊との戦いを通して、自然の厳しさ、自然の怒りが感じられる。
広島にも野生のクマがいる。畏怖の念を改めて抱いた。
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不法な狩猟などに警鐘を鳴らすという面では良かったと思います。
しかし、小説としては自然の猛威?迫力?みたいなものが感じられませんですし、人間ドラマも重厚さに欠けている印象で残念です。
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冬山に入ったカメラマンが下山しないとの連絡が入った。熊に襲われたと思える遺体を発見。猟友会のメンバーと冬の山中に入る二人の森林保護管。
同じようなテーマの本を以前読んだ。北林一光氏の「ファントム・ピークス」
緊迫感は同じように感じたが、「光る牙」は文章が荒いように感じられた。
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クマものが気になる私なので、読んでみました。
執拗に迫る羆は迫力あったけど、他の描写が気になって。
垣根涼介さんの本を読んだ時も思ったけど、車が好きなんだな、あと銃と。
車と銃の描写がとにかく羆みたいに執拗で、少々飛ばし読みしてしまいました。
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凄い!ドキドキ!面白かった!!規格外の巨大人喰い羆に挑む、元自衛官のベテラン・山崎と、会社員から転職した新人・孝也、2人の森林保護官。日高山で、人間による身勝手な暴挙により傷つけられた羆の復讐と森林保護官の追跡が繰り広げられる。2人のタフさにただただ驚かされる。山崎の背中を追いかけ、やがては肩を並べようとする孝也のひたむきさが良い。仕事への憧れ、自分の無力さ、後悔、恐怖、心細さ、そんな中での「あきらめたくないんだ、俺は」の一言が、頼りなくもあり、心強くもあった。こんなに濃密なストーリーが、わずが200数ページで表現されるとは!
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読み始めは臨場感ある描写に、あっという間に世界観に入り込んでいった。クーラーの効いた部屋で読んでいても、まるで雪山に入り込んだような感覚で読み進めるのが楽しかった。
ただページを進めるうちに、段々と興醒めしていくのを感じた。
まず車や銃に対する描写の多さ。そこにページ数を割く必要はあったのだろうか。
次に中二病っぽい台詞や表現。章を進めるうちに作者がヒートアップしたのかその過激さが増して、本筋以外のところが気になって集中出来ず…。あとは実在する事件被害者に対する配慮の無さ。
テーマが好きなだけに残念。デビュー2作目ということで☆3。