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副題に「臓器提供では、強いられ急かされバラバラにされるのか」とあるように、臓器移植をそのようなイメージのみでとらえている割合が多いのが現状だろう。そのため、提供者や家族の善意がふみにじられてしまうとの印象がある。
もともと臓器移植に懐疑的であった著者が、その現状をみるにつけ、あまりにも真実とかけ離れた情報の流布に、ある種憤りをもって、啓蒙を試みている様が綴られている。
移植医療に関して、腎臓提供待機者等のデータから、心停止下移植から推進すべきとの明快な主張だ。
嫌な人に主張を押し付けない思考法も共感できる。
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臓器移植反対派から理解派へ転身した医師の話。メディアや医師自身にある誤解や偏見、そして臓器移植コーディネーターの問題もチクリとやりつつ、臓器移植の持つ課題を解説する本。
移植は医師業界においても理解がかなり低い、ということがよくわかった。一度も会ったことのない移植待機患者から職業上無言の期待を受けていることを理解しよう、とか、好き嫌いにかかわらず臓器移植のオプションを提示しよう(それができないならファストフード店の店員にも及ばない)とか。
今際の際に、そのオプションを説明できるのは、1回だけ。誤解があろうが、何度も説明することはできない。
本人や遺族側が、決して慣れていないことだから、回数をこなしているプロ側の責任は、やっぱり大きい。移植の賛否はあるにしても、そのあたりの提言はもっともだと思うし、そこに至っていないという事実に、医師という業界のプロ意識に疑問も持ったりする。
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定められた手順を踏み適正に行われたはずの臓器提供が不成功に終わる。貴重な腎臓が焼却されるに至ったことにやりようのない憤りと失望感を感じた著者。同時に世界最先端を行く日本の脳神経外科学の発展の中で臓器提供の分野だけが全くおざなりになっている現状に警鐘を鳴らす。誤解と偏見に満ちた臓器移植の謬想を正し、日本が抱える諸問題を脳神経外科医として中立の立場で紹介する。脳死判定基準の意味、臓器移植法とメディアの問題、自殺では臓器の提供はできないことなど、興味深い話柄を織り込みながら移植医療の今を紹介する。