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小田伸午教授(関西大学人間健康学部)による、ヒトの動き、特にスポーツにおける身体操作や運動生理、生体力学についての解説書『アスリートの科学』。
「科学」とあるけども、客観性と主観性、そしてそこにある矛盾も包含した解説で、興味深く納得のいくものだった。
第2章『運動時のエネルギー供給のしくみ』では、八田秀雄先生(東京大学教養学部統合自然科学科教授)の「すべての運動は有酸素運動である」説を深く紹介して、有酸素運動/無酸素運動という2項分類に対する疑問を呈しておられる。乳酸=疲労の原因という旧来の考え方に固執してはいけないなと反省。
「動き」に関しても、科学(客観視、外部観察)から生み出される解釈の誤謬に気がつくべきだと感じた。
また、観察対象(アスリート)に対するる研究者からの視点(感覚)も「見るひとの感覚が変わると、みえてくるものも違います」とのこと。これも納得。
アスリートの身体能力/運動能力の理解のみならず、リハビリテーション分野にも当てはまる事柄が満載で、楽しめて読めた。
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【内容(amazonより)】
世界の一流アスリートの動きは、頭のなかにある錯覚を削ぎ落とし、感覚を研ぎ澄ますことから生まれる。ボールを蹴るとき、支持脚ではなく、蹴り足に体重をかける「二軸動作」キックをはじめ、アスリートたちが見せる、驚きのパフォーマンスの事例を挙げながら、科学と感覚の両面から、身体運動の不思議に迫る。正しいからだの基礎知識と、合理的な「からだの動かし方」を、スポーツ・バイオメカニクスの知見から解き明かす。
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【目次】
第1章 筋力発揮の科学
第2章 運動時のエネルギー供給のしくみ
第3章 脳と運動の科学的基礎
第4章 ヒトの身体の動き
第5章 走運動の科学
第6章 各種スポーツにみる2軸動作
第7章 2軸動作を目指した学生とのやりとり
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