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自分や、身の回りの人が誰もがいつかは年老いて死んでいくのだ、ってことは当たり前のことだと思ってはいるけれど。
それでも普段の生活の中でそれは一種のファンタジに近い。
そしてそんな「老い」と「死」が現実のものとして迫ってきたらどうしたらいいのだろう。
漠然とした不安とあくまでも他人事としての現実感のなさがこの小説を読むことでリアルに眼の前に差し出される。
老人は生まれた時から老人なのではなく、それぞれに人生も青春もあったのだ。悲しみも喜びも、そこにあったのだ。
いつか行く道として、忘れてはいけない大切なものが、この小説のなかにあった。
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久しぶりにじんと心にのこる一冊だった。筆致は拙さを感じさせる部分もあるが、誰もが輝きを持って精一杯生きている、その軌跡を忘れてはならないということを思い出させてくれた。自然と優しい気持ちになれるのは、誰かを心から一途に愛する喜びを感じられたからだろうか。何度も読み返したいと思った。
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若い介護士がお盆に戦前の日本にタイムスリップするストーリーなのですが、泣けます。戦前の美しい銀座の風景も素敵だし、物語もすごく良かったです。介護の仕事って楽しいのかなと疑問に思っていましたが、なるほどこれはやりがいのあるお仕事だなぁと感じました。
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おもしろかった!読みやすかった。
すきな時代の昭和初期と現代の介護ホームをシンクロ
させたお話ってはじめのうちは「介護の方はなくても…」
と思ったが、主人公徹がタイムスリップしてからは
俄然面白くなった。なるほど。過去から現代ってつながって
いるんだもんなぁ。ラスト、現在の徹と千菊が対面する場面、
徹が若いままで千菊だけ年齢をとってるっていうのをどちらも
なんとも思ってないって…妙だった。(まぁそうするしかなさそう)
とっても読みやすいので若いひとにおすすめ。
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とても切なくて心にしみる作品。
人の気持ちの清らかさ、情、尊厳、いろいろなことを考えさせられた。
ビスケットの入った青い缶、エメラルドの指輪、赤い薔薇。
人の気持ちを考えられる人になりたいと思った。
昭和初期の銀座。歩いてみたいなあ。
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タイトルと表装がお話とよく合っている
というのが第一感想です。
お話も丁寧で、それぞれの人物描写が、ああ、いるなあとか、あるなあというのが感じられて、伝わりやすかったです。
介護士で、毎日の繰り返しに、やりがいを見失いつつある主人公が、ある日、目を開けたら昭和初期の日本にまぎれこんでいたというタイムスリップもの。
行き場のない主人公を助けたのは、うんざりしながらやっていた介護の技術。そして周囲のおせっかいと言えるぐらい優しい置屋と芸者さんたち。
最終的には人と人なんだなぁーと思わせられました。
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ホームで介護される老人の過去と介護施設で働く若者の今、いわゆる老境小説な展開になるんだろうなぁと思って読んでいたら…
おもいっきりベタにタイムスリップして、思いっきりベタにタイムパラドックスを超越して、おもいっきりベタに未来を頑張れと終わるなんて…
なのに、なんていい小説なんだろう。技巧に長けた小説をウンウンうなりながら読むのは楽しいのだけど、たまにこういう直球な(悪く言えば稚拙な)小説を読むと「技巧とか味付けとかトリックとかそんなものは化学調味料みたいなもんなのかな」と思ってしまう。
この小説を読めば、我々日本人の高齢者福祉に対する考え方が、やっぱりどこかおかしよなってことを再認識できる。そして、読後出会うすべての高齢者が一人一人個性のある人なんだと、あったりまえのことをもう少しは認識できるようになるぞ。
…でもな、俺は人におむつ変えてもらってまで生きるのは、やっぱイヤかな。
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ネタバレになるので詳しく書けません。よくある○○モノではあるのですが、とても優しい心温まる佳作です。この著者の今後が楽しみです。
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介護士青年の今と介護老人の過去がシンクロする!?
介護士青年の成長。
誰でもくる老い。
考えさせられる。
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2014/1 途中まではメトロに乗ってとか仁みたいじゃん、と感じていたけど途中から感情移入も始まってグイグイ引き込まれた。奥深く、情深く、小説としてとてもいい本です。
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昭和13年と現代の60年を経た複眼構造。介護士の徹が昭和13年頃にタイムスリップし、そこで出会ったのが章代(芸者の千菊)。美しい章代の素晴らしい性格がこの小説の大きな魅力。そして置屋のスミ子・善六夫妻、千菊の先輩お藤、後輩の小春、お藤の連合い・稲村などが生き生きと描かれている。介護士の仕事をする中での苦しみ、そして喜びが素直に書かれた爽やかな本。現実離れし、矛盾はあるのだが、爽やかさゆえに受け容れられる。宮部みゆきの「蒲生邸事件」のようにほのぼのとした気持ちになった。
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帯文:”若い介護士が遭遇した、お盆の夜の奇跡。”
目次:第1章 まっすぐな道、第2章 美しい洋館、第3章 引く人、第4章 桜屋、第5章 お盆の夜、第6章 見知らぬ銀座、第7章 お藤と武雄、第8章 お船行き、第9章 鰻巻き玉子、第10章 懐かしい瞳、エピローグ
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介護施設で働く竜崎徹は、働く目的や意欲を見失っていた。お盆になると、老人たちが今は亡き人たちと会話をするので、その日の夜勤も苦痛だった。そのお盆の夜、徹は昭和初期にタイムスリップし、お世話をしている老人たちの若かりし頃を知ることになる。痴呆症になったり、何もしゃべらなかったりする老人たちにも、様々な人生があったことを改めて実感する。
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いゃ〜、感動しました。
読後感が凄いです。心にズシンと響き、癒される。
構想も読みやすさも素晴らしい。
介護施設と言えばイジメがあったり、殺人のニュースがあったり、
大変で暗いイメージがあるが、この小説には介護現場を明るくする力がある。
印象に残った文章
⒈自分の身の始末は自分でつける。
⒉あの人、稲村さんに会ったことないのにね。
⒊徹はお盆が前ほど嫌いではなくなった。
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竜崎徹(りゅうざき てつ)は、特別養護老人ホームで働く、介護福祉士。
施設の中でも一番介護度の高い老人たちが入所している6階の担当。
ほとんど意思の疎通ができない人たちだ。
徹は介護職5年目にして、毎日のルーティンの中で「このままでいいのか?」という疑問と倦怠感を感じている。
特に、誤嚥を防ぐために、利用者さんのお茶にとろみ剤を溶かしている時…「こんなドロドロしたお茶、おいしくないよね」と思う。
お盆祭りの夜に、大好きだったばあちゃんの縫ってくれた白かすりの浴衣を着て、もうすぐ亡くなりそうな利用者さんの持ち物の中から古びたお手玉を手にした時、ふっと気が遠くなって…
「老人」という言葉でひとくくりにされている人たち。
最初から老人だったわけではない。
過去からの長い道が続いている。
訪ねる人もなく、寂しくホームで亡くなる人、身寄りもなく生活保護を受けている人…
そんな人たちにも、生き生きと働いた過去があり、愛する人と過ごした時間があり、戦争や病で大切な人を失った悲しみがあった。
どんな老後を迎えることになるのかはどんな人生を選んだかで変わる。
「自分の始末は自分でつけるしかない」と、置き屋の女将。
徹は、親しくなった人たちの寂しい老後を変えられないものかと思う。
ファンタジーではあるけれど、徹が再び天職と向き合うためには必要なファンタジーだった。
現代と、戦前の昭和が重なる、レトロな銀座、東京が美しい。