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津島祐子「ヤマネコ・ドーム」読了。
作者は太宰治の娘であり、1歳の時に父を亡くして母子家庭に育つ。そのためか登場するのは母と子のみで父親の存在は抹殺されているかのよう。
時間も場所も、語り手さえもめまぐるしく変わり、最初は捉えどころがないが、そのうち徐々に形を成してくる。読者を試すような進み方だが、謎に魅かれて読者はぐいぐいついていかされる。そんな不思議な小説。
=====(内容)=====
アメリカ兵と日本人女性との間に生まれたミッチとカズは、ママに引き取られて暮らすことに。また、ママのいとこの子であるヨン子とも幼馴染みであった。ある日、オレンジ色のスカートをはいたミキちゃんという子が池で溺死する事件が起こる。彼らは成長し、それぞれの人生を歩み始めるが、数年に一度、オレンジ色の衣服を身につけた若い女性が殺害される事件が起こり、彼らは過去の記憶に苛まれるのだった……。
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美しくも難解…スミマセン、カッコつけました、実は何もわからなかったのです。
最近で言えば「abさんご」に匹敵する読みにくさ、でもあっちは単に文体だけのことであったのだがこちらと言えば語り手も時系列もころころ変わり全く気の抜けない著者からの挑戦状の如き作風。中盤にてやっと馴染んで来たかの想いも後半に突入した途端にその甘い知ったかぶりも完膚なまでに打ちのめされる。
戦争、原爆、チェルノブイリ、9.11.そして3.11…言わんとするメッセージは理解出来るのだがそれをどう咀嚼すれば良いのかがわからない。きっと読み手の力不足なんだろう。
結局わかったことは著者が太宰の娘だということだけであった…完敗
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私はまず、人称の使い方が面白いなと思った。
一人の意識なんだけどちょっと集団意識っぽい感じというか。
全部妄想なのかもしれないけど、声が消えない。自分以外の声が聞こえる、というのが、新鮮だなと。
震災以降、自分ひとりという単位が、困難になっているんじゃないかと思った。
ヤマネコドームでいうと、ミキちゃんの事件なんだけども、エポックメイキングな事件を同時に味わった人々の中に生まれる(はずの)共通のイメージだとか、言葉の、範疇というのでしょうか。
それがみんなの中にあるから、それを一旦経由しなきゃいけないような気がする。
経由しなかったとしても、人々はそれぞれに経由して感じ取るというのか。
ミキちゃんの事件みたいに、あらゆる可能性や、何もできなかった自分や、ぼんやりした罪悪感や、出口のないすすり泣きが、世界の一部に組み込まれたんだなと私は思いました。
自分ひとりだけの自意識の中に、みんなが知っている「あのこと」が入っている。この困難。
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2014.12.戦後アメリカ兵との子供の孤児のカズとミッチはホームで育ち,ママに引き取られた.そのママの従姉の子供のヨン子といつも一緒に遊んでいた.ある日三人が遊んでいると近所に住むター坊がホームで育てられているミキちゃんそばにいて,ミキちゃんは池に落ち溺れて死んでしまう.その時,ミキちゃんはオレンジ色のスカートをはいていた.それから,ター坊は家に引きこもる.数年に一度,オレンジ色にまつわる女性の殺人事件が起こるようになり,カズ,ミッチ,ヨン子は集まり話し合うようになった.最初はミステリーかと思ったけど…
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参照:
http://hokugen.hateblo.jp/entry/2014/06/27/170754
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私には全くダメだった。
カズとミッチとヨン子、子供の時から、大人になって、変わっていく時代、そして3人(とヨン子のお母さん)の心に刺さった棘のことが、3人の目線で、コロコロと入れ代わり口語で話されてるのだけど、なかなかもんやりとした部分もあって。
何て言うのか、纏ってる空気が重くて暗い。
ずっと心にとらわれてたことの結果はわかったけれど、それでも理解できない本だった。
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読後、残ったのはしんしんと滲み入る寂しさ、悲しさ。
何やらどうにもならない運命のようなもの。
その分、人の優しさが滲みた。
みんな愛おしい。
文体が独特。
長い長い夢のお話のよう。