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河合隼雄がエラノス国際会議という国際舞台で行なった5回の講義内容を日本語に訳しなおした1冊。原文が英語であるため、外国人にも伝わるように相当書き下してあると思われ、他の著作に比べてとっつきやすいように思う。日本の昔話は善悪でなく何が美であるかを描いているという指摘は頷いてしまう。今の自分、社会に足りないのはこの感覚かもしれないな。
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1983-1988年のエラノス会議で文学を用いて日本人の精神構造を分析した講義をまとめて、はじめは1995年に英文で刊行された。その後の著者の多くの著作の原型となっている。翻訳は子息で同じ臨床心理学者の河合俊雄。
熊本大学:日本文学分野 教員
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日本文化史において夢が何を象徴していたかを解き明かし、そこから日本人の心理の深層に迫っていく。受動的な性格のアイデンティティが一貫しているという指摘は面白い。古事記の分析はツクヨミ、ホスセリなどの第3の存在に焦点をあて、実はこの空白に見える神が中心にいる「中空の構造」が日本神話の特徴!というユニークな考え。宇治拾遺物語や浦島太郎などの昔話が西洋の「困難な課題を克服して美しい女性と結婚する」という英雄譚がほとんどなく、主眼が何が善ではなく、何が美であるかにあるということなど、また禁断の箱を開けると日本では宝物、西洋では恐ろしく、おぞましい物が出てくる。開けるのは日本では男、西洋では女・・・。興味深い解き明しの数々である。
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完成美と完全美の相違がわかりにくいのですが、庭を掃除するという例から漠然と理解できました。
言われなければ気付かなかった「中空構造」
ホントに海彦、山彦にもうひとりの兄弟がいたなんて思いもいたらなかったなぁ。
アマテラスとスサノヲの間にも・・・・・。
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p174 河合親子の関係が表現されている文章はめずらしい。以下抜粋です。
当時筆者に語ったのによると、チューリッヒに留学していたときは、どうも西洋の心理学は納得がいかない、違うのではないかと感じて、自分の意見を述べようとしてきたけれども、日本に戻っ長くなり、もう海外で自分の考えを表明するような機会はなくなってしまったと思っていたと。 しかしエラノス会議で講義するようにという、思ってもみなかった招待を受け、もう一度自分の考えが海外で通用するのかどうかやってみたいと思うとのことであった。
1983年の8月に、エラノス会議で河合隼雄が初講義をしたのが55歳のときである。既に日 本で十分な成果を挙げてきて、専門内外から認められていた河合隼雄にとって、エラノス会議はも う一度新たな挑戦をしようという機会になっていったのである。その年のテーマは "Material and imaginal bodies" (物質的、想像的身体)というもので、ちょうど明恵上人とその夢記に取り組み始めていた河合隼雄にとっては、おあつらえむきであった。1983年の前期に京都大学の大学院で行った明恵上人についての特別講義は、まだあまり形になっておらず、大学院生として講していた筆者としてはどうなることかと思ったけれども、急ピッチで仕上げた原稿を持って、エラノスに乗り込んでいったのである。