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とかく悪者にされがちな旧日本陸軍。全員が悪人だったわけはなく,良識的な人物も存在したはず。そんな部分にスポットを当てているのが素晴らしい。
海軍が陸軍の善悪二元論から一歩踏み出したい人に。
ただし,全てを鵜呑みにしないこと,歴史評価は多面的なものである。
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スキッピングで読了。購入延期、そしてそれは無期限?。
そもそも石原莞爾・武藤章を良識派とした著者の人選に?である。
しかしそれよりも石井秋穂の項。その内容である。
彼は昭和14年~16年11月迄軍務課所属。
ところが叙述から伺えるのは東条内閣への政策検討骨子の立案くらいで、いかなる識見で政策反映に努力したか不明だ。もし他にファクトがなければ、ただの(有能な)吏僚というだけ。あるのに書いていないなら、著者の取材不足か良識派にそぐわない内容のいずれかであることが想起される。
こんな中途半端な叙述と推測される書を味読する時間的余裕はない。
以上、再度手に取った時のために個人的備忘録。
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「まえがき」にある次のような言葉が、本書の基本的スタンスを表している。
「人は生きる時代を選べない。大半の人は、自らが生まれた時代の理念と倫理といった規範に合わせて生きる。平時にも尊敬できる人がいる反面、軽侮の念でしか見れない人がいるように、あの戦時下にも尊敬できる人もいれば、そうでない人がいる。歴史の功罪をむろん土台にして考えなければならないにせよ、あの時代に生きた尊敬できる人の軌跡、そしてその資質は相応の視点で検証しなければならない」
この本で良識派軍人として、章を設けて述べられているのは次の10人。 石原莞爾/武藤章/今村均/渡辺錠太郎/下村定/河辺虎四郎/宮崎繁三郎/辰巳栄一/石井秋穂/堀栄三。
手に取って、あれ?と思ったのは、武藤章の名が良識派として挙げられていること。蘆溝橋での日中の衝突が日中戦争へ拡大してゆくのを抑えようとした石原莞爾に言ったとされる、「満州事変のときの閣下と同じことをしているのです」という台詞は有名である。しかしながら、事変後の武藤の自省や、理知的な考えかた、後に対米戦争を避けようと努力したことなどから判断して、良識派と考えてよいというのが著者の見方である。「人は生きる時代を選べない」だけではなく、そこで与えられる役割からも、逃げられないのかも知れない。
その時代の知性が、良識が、何を考え何を為そうとしたのか。我々もまた、選ぶことの出来ない時代を生きている以上、歴史を振り返る際に常に持っていなければならない問題意識である。
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日本全体が捉えようのない狂気に踊ったアジア太平洋戦争の渦中において、軍人として、官僚として、あるいは人間としての良識をキチッと守った「良識派」の人々に迫った一冊。本書の中で幾度か出てくる「戦争を見つめ戦争に詳しくなることは、反戦平和主義とまったく矛盾するものではない」との著者の見解には、全面的に同意するしかない。また同時に、自称保守派やネトウヨによる、ごく一部の良識ある事例を取り出し、あたかも日本軍全体がクリーンな組織であったかのように喧伝する悪質な工作に騙されないためにも、こうした書に触れておくのは大事だと思う。