投稿元:
レビューを見る
1938(昭和13)年から1946(昭和21)年、織田作之助前期の作品を収めた短編集。
やはり面白い。多くの作品ではちょっと知能遅れのような主人公たちを、ウェットでもドライでもなく描き出し、さながら夢の中のように宙ぶらりんの質感で辿ってゆく物語は、不思議と味わいがあって魅力的。
大阪弁を取り入れたという文章は、しばしば意外な表現も見られ面白いが、ときとして文法的に変な箇所もあると思った。
『夫婦善哉』は続編があるというのを知らなかったが、書いたまま未発表でしまってあったのを2007年に発見されたらしい。正編とともに面白かった。ギャンブル等でたちまち金をすってしまう夫に体罰を加える女房という、しかし殺伐としていない凸凹コンビを描いてユーモアがある。
良い作品集と思う。