投稿元:
レビューを見る
今春実施された第二回、棋士対将棋ソフト電王戦を振り返る本では「電王戦のすべて」に続く第二弾。春の対局から暫く時間を置いたところで棋士・ソフト開発者・解説陣にじっくりインタビューをしているので此れまでは触れられていなかった部分も多々あり楽しめる。特に阿部光瑠に敗れた習甦(しゅうそ)は棋譜の自己学習において羽生三冠の棋譜の重要度を他の棋士のそれの二倍にしていると云うのが無機質なソフトに少しばかり親近感を感ずるところだ。其れに対して阿部が「羽生さんに勝っている渡辺竜王の棋譜も重要ですよ」と指摘しているというのが笑えた。但し、残念なことにその阿部光瑠四段への改めてのインタビューだけが実は出来ていなかったことだ。本書から彼のインタビューが欠けるのは決定的な気がするが本当に時間が無かったのだろうか?インタビューを実施してからの出版でも良かった気がするのだが。あとここでも夢枕獏の第一局の観戦記ほどではないものの、かなりとんちんかんな内容のインタビューが掲載されていることかな。
投稿元:
レビューを見る
人間VSコンピュータが将棋を用いて対戦する。
それはそう単純なものではない。
インタビューを元に電王戦を振り返る本著はこの戦いがドラマであり人間VS人間の戦いである事を示している。
まずビックリしたのが多くのコンピュータ将棋の開発者が純粋な強さやプログラムの強化を望んでおり、人間に勝つという事は二次的な副産物でしかないと考えている事。
だからこそ意味がないからやる意味があるのだ。そこには故米長氏と現ドワンゴ会長川上氏の将棋への危機感がある。
古来から日本独自として楽しまれてきた将棋を保ち続けるにはワンステージ変えなければいけないというその場として電王戦は提供されている。
だからこそ私みたいな素人は将棋としてではなくドラマとしてこの戦いを見守りたい。
投稿元:
レビューを見る
あの死闘はまさに格闘技だった。葛藤の中で戦った棋士の談話だけでも面白いのだが、仕掛人ドワンゴ川上会長のインタビューが示唆に富む。21世紀のテーマは「アルゴリズムに押しつぶされる個人」という。棋士への強い感情移入は、そういう不安に由来するのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
コンピュータと人間の将棋バトル、もうコンピュータが人間を超えるのは時間の問題という一方で、将棋の持つ品格、棋士としての誇りはどうやってもコンピュータは身に着けられないんじゃないかと思うし、コンピュータに負けることで敵視するのではなく、コンピュータと共存し、活用しながら究極の一手を目指す、という流れが生まれてくるのだろう。
投稿元:
レビューを見る
コンピューター将棋vsプロ棋士の5対5にまつわる関係者(棋士、開発者、解説者、羽生、ドワンゴ社長)のインタビューにより様々な人間模様やこの勝負にかけたそれぞれの意気込みが伝わる。特に一年前に戦った故人の米長永世棋聖/会長の将棋界の立て直しと後世にかける意気込みには感動。
結果は人間側の一勝三敗一引き分けで終わり、先鋒の若手のみが勝ち、A級棋士も負けてしまった。この10年特に、ボナンザが全幅探索、機械学習を採用しそのソースコードを公開してからソフトのレベルが大幅に改善、700台のPCを連結したGPS将棋は解説者からも悪手がなかったと評されるほど。羽生さんはソフトと公式に対戦する場合は一年通常戦線の離脱による準備期間が欲しいとするくらいである。
投稿元:
レビューを見る
完全情報ゲームは本質的に暗算と変わらない、ということになってくるのか。生きてる間に、将棋がマッチ棒パズルと同じものに位置づけられるのか。
人は、ツキとか流れといった、ロジック的に排除されるものに超人的要素を見出さないといけなくなって来るのか。
投稿元:
レビューを見る
将棋を知らない人にも面白く読めた。人間にとってコンピュータの対自の仕方の様なことも考えさせられた。そして何より棋士の個性も5者5様で興味深かった。
投稿元:
レビューを見る
将棋にもソフト開発にも詳しくないけど興味深く読めました。
インタビュー=話し言葉だからか、棋士の方・ソフト開発の方それぞれの意気がダイレクトに伝わってきた気がします。
敵視とかなく、互いに敬意をはらっているのがよくわかって良かったです。
奇しくも読み終わったのが第三回電応戦の初戦の日。
前回唯一負けたソフト「習甦」が今回は勝ったみたいで「よかったね」と思う部分もある反面、残念に思う部分もあり…本書を読んでどちらにも肩入れしたくなってしまったのが悩ましいです。
投稿元:
レビューを見る
第二回電王戦に関わった28名のインタビューやコメントを集めた一冊。コンピュータ将棋の基本や歴史も簡単にまとめられてて、ここから読み始める人にもわかりやすい。
米長元会長の攻撃性を継いだのが塚田九段、立場と勝負に拘ったのが三浦八段、というのもよくわかった。将棋というゲームの究明と勝負ごとのどちらによりウェイトをかけるかの違いも、人それぞれであることも、よくわかる。
コンピュータ将棋の開発者を除くと、インタビュアー含めてやや年配の方の方が、コンピュータ将棋にロマンティックなイメージを持っていて、600台も繋ぐのは、とか、第4手に人の手が入ったのは、おかしい、とあるのも、考え方の違いが浮き彫りになっていておもしろい。プロ棋士から見ると、コンピュータの方が道に正直で身内に甘い、というのもおかしかった。外からではわからない声が聞けたのも収穫。
トップの開発者でもなく、厳しい勝負事に生きてるわけでもない自分は、共感よりは情報を仕入れたという感じではあるけど、唯一GPSの金子氏が、当日は勝ち負けよりも無事に大役を果たした安堵でいっぱいだった、というところには共感。失敗が許されない運用現場では、とにかくシステムを無事に運用しきることに精力を注ぐのはわかるなあ、と。
今回の一戦は負け越しになったけど、これで完敗ではなくて、まだこれからの可能性を感じている人達が多くて(伊藤氏はもうミッションコンプリートかな、と仰ってるけど)、次回も楽しみになる。
最後に。ここに書かれているコメントを読めば、みんな真摯に向かい合ってることが伝わるのに、それを、解せずに開発者を貶めるような発言があってもめてしまったのは残念な限り。
投稿元:
レビューを見る
第二回電王戦のドキュメント/インタビュー。棋士と開発者そしてニコニコ動画が何を考えていたかを様々なインタビューを組み合わせて浮かび上がらせている。コンピュータに敗れた棋界の将来について議論は尽きないが、渡辺竜王の「自分が負けることは想像出来るが、自分が全く勝てないコンピュータも想像出来ない」という台詞が印象的。
将棋を知らなくても面白い!かどうかは分からないけど、日本人にとって人間と人工知能の分水嶺になった出来事として読んでおいて損は無いんじゃないかと。
投稿元:
レビューを見る
将棋のルールを今に至るまで知らない人間が読んでも、十分に意味が通じる本でした。
電王戦というイベントにかかわった人のインタビュー集。
ニコ動はたまに利用するので、バナーとかで電王戦というタイトルは知ってました。
コンピューター対プロ棋士で行う将棋。
本の総括としては……レギュレーションの統一は大事だね、ということと、
プレイスタイルの異なる者同士の対戦は、摩擦を生むなぁということ。
よかれあしかれ。
棋士側も、勝ちを目指すか、過程を追うか、団体勝利を目指すか、個人技を追求するかで違うし。
コンピューター側はもう、開発者さんのキャラクター性でぜんぜん違ってて。(……プログラムの個性っていろいろなんですね……)
そしてここに興業者サイド、観戦者サイドの思惑が混じるというカオスっぷり。
インタビューという形式だったので、そういう「思惑の違い」みたいなものに目がいきました。
将棋は難しそうで(あと、やるとはまりそうで)手は出しませんが、将棋系の読みものを読むのは意外と楽しいんだなあ、と思うきっかけになりました。