投稿元:
レビューを見る
巻頭の短い作品『雪と光の記憶』(『小説新潮』・2011年1月号)を除き、月刊「ジェイ・ノベル」に断続的に掲載された作品15編をまとめ、再構成されたエッセイ集。
自分自身の心のどこかに残っている亡き人々の記憶を、薄皮をはぐようにそっとそっと取り出して、日の光に当てて胸の痛みを再確認するかのような内容。
きっと思い出すたびに痛みがそして苦しみがあったのだろうと思わせる内容ばかり。赤裸々に自分自身の愚かな行動や身も蓋も無い失恋の思い出を振り返っている。
物書きという職業をしている者だけが知る「事実と虚構」のはざまの黒い闇の部分まで丁寧に書き出しているようだ。
投稿元:
レビューを見る
・・・生きている人を愛するように、亡くなった人を愛し、亡くなった人のことを書きたい。死んでしまった人のことを「今」によみがえらせたい。
死者と過去を、生者と現在のように、見つめたい。なぜなら、わたしとあなたの時間は、過去に向かって流れているのだから。過去に向かってしか、進んでいけないのだから。過去が、わたしたちの現在であり、未来なのだから・・・
生者の驕りを廃して、過去に愛した今は会えない者への真実を追い求め、亡くなること、亡き人への想いを歌い上げる賛歌です。
職場の後輩だった女の子、はじめての仕事をくれた編集者、何通もの手紙をやりとりして別れた人、若くして逝った詩人、亡き祖母、大好きな仕事のパートナー……亡くしてしまった音信不通の今はもう会うことのできない人々への思いを、記憶だけをたよりに綴る私小説的ともいえる短編集。
「雪と炎の記憶」、「赤いりんごと肩に置かれた手」、「死に魅入られた詩人」、「菜の花畑に立っている人」、「まるで活字のような文字」、「死は美しい」、「私につながる戦争の記憶」、「四羽めの小鳥たち」、「約束は生きている」、「一九八八年の別れ」、「心におりてきた闇」、「私の家の鍵」、「誕生日」、「たまご八個の玉子焼き」、「ふたつの時計」、「空席」の16編。
投稿元:
レビューを見る
亡くなった人や、連絡がつかなくなった人。年を重ねる毎に、そんな人が増えてくるのは悲しい事なのかな。そうではなくて、その人達に出会うことができたという喜ばしいことなのかな。
そんな事を感じました。
投稿元:
レビューを見る
友達というほど近しくはないけれど、人生の様々な場面で出会い、その後会うことのない人たちを想う短編集。
どの短編からも死の香りが漂うけれど、暗く悲しい物語ではない。
一期一会、出会いに感謝する私小説。
投稿元:
レビューを見る
図書館で話題の本となっていたので借りたのですが・・・
「図書館で借りるな」「買って読んで」
そうですよね^_^; 作家さんからしたら「読んだ」より「買ったよ」のが嬉しいかも
出来る事なら買って読みたいけど 家賃払ったら給料が殆ど残らないので
申し訳ないけど図書館ラブです
出世払いって事で許してください(非正規雇用に出世などないけど)
もう亡くなったり、会えなくなったり
そんな「あなた」とつながる短編私小説
誰にでも「あなたにつながる記憶」ってあるよね
亡くなった人が沢山出てくるけど 共感出来る事も多く穏やかな気持ちになれる一冊でした
時間は過去から現在 未来へと流れていってる・・・と思うけど 未来から現在 過去へと流れる そんな世界も存在するかも
作中に出てくる「僕への小さな旅」が気になる
投稿元:
レビューを見る
2013年11月17日読了。
理由は何であれ、今となっては連絡を取ることが叶わなくなってしまった人達との
思い出を綴りながら、その人達の存在、自分の存在を確認していく短篇集という印象です。
静かな本ですね。
本に関して「借りるより買ってくれ」と言った内容の
記述がありました。もちろん作家さんとしてはそれが
正直な気持ちだろうと思います。
それで食べてるわけですから。
ですが正直、「買うほどでもないなぁ」と言うのが
この本の感想です。
投稿元:
レビューを見る
最初は、かなり読むのが辛くて、暗い気分になってしまいました
でも、読み進めるにつれて変わってきました
そうか、未来は過去を見る事と同じなんだって思えて
実際に未来って存在しないのかなって
未来は常に今からか過去になって行くもので
なら、過去も未来も同じなんだと
その事と生と死は同じ事だと
そう思えた作品です