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本書では、悟りに向かう修行者の心がどのように汚れを落としていくのか。
心の汚れを落とすと、私たちにはこの世界がどのように認識されるようになるのか。
それが順を追って明確に説かれています。
最後に、「私が中心にあって世界を認識している」という「私と世界」の関係が覆されます。
何の偏見もねつ造も加えない世界はめまぐるしく生まれては消え、生まれては消え、すごい速さで変化しつつ消えつつ流れていて、その様子を目の当たりにする修行者の心の変化が手に汗握る展開として描かれています。
はじめは現象の消えることに気づきません。
あまりに速い生滅は連続性のあるものとして認識されます。
集中力が上がってくると、現象の消滅が見えるようになります。
その現象の消える様子に衝撃を受け、ことごとく消えてゆく様子に恐怖を覚え、そしてそれを冷静に観察して「なんだこんなもの、しがみつくようなものじゃない」とあきらめて捨てる。
現象に対して欲と怒りで反応するのがいかに愚かでばかばかしいことだったかと目が覚める。
そして、「欲と怒りの自動応答」を宿命づけられている全ての生きとし生けるものに対して、深いあわれみが自動的に湧いてくるのだそうです。
人間は変わるし、変われるのだなあ、何せすべては変化しながら生まれて消えてを繰り返しているのだから。と、勇気を与えられる本でした。